イベントレポート

CEATEC JAPAN 2016

if-then型の条件設定で各種BLEデバイス連携アプリを開発、NTTドコモが「Linking」の活用例

 「CEATEC JAPAN 2016」のNTTグループのブースでは、「シティ」「流通・小売」「製造」「ヘルスケア」「農業」「ホーム」といった各領域におけるIoT関連技術を紹介している。Bluetooth接続のセンサーデバイスを活用するための取り組みとして、NTT西日本がスポーツの試合中の選手の生体データをBLE通信のローミングによって収集するゲートウェイを展示しているほか、NTTドコモが「Linking」のデモを行っている。

 着るだけで心拍数や加速度などを計測できる東レ製のウェア「hitoe」からのデータをBLEでスマートフォンへ伝送するためのトランスミッターをNTTドコモが提供しているが、NTT西日本の展示は、これをスポーツの試合で複数の選手からリアルタイムに収集する用途を想定したもの。フットサルやバスケットボールで対戦するよしもと芸人の心拍数や走行距離、ハッスル指数を試合動画とともに表示するコンテンツもすでに制作・配信されている。

 NTT西日本によると、hitoeトランミッターなどのBLEデバイスは、スマートフォンと1対1で接続して使用するようのが通常。これに対して、今回の展示技術ではコートに設置したアクセスポイントに1対多で接続する方式。プレーする個々の選手がスマートフォンを装着しなくとも、BLEセンサーデバイスからの計測データをネットワーク経由で収集できるようになる。ただし、BLEの距離の制約から1台の基地局ではコート全域をカバーできないことから、コートの両端にアクセスポイントを設置し、コート内を移動する選手のhitoeトランミッターの接続管理・制御を行うことでローミングを実現しているという。

「hitoe」と「hitoeトランミッター」
「hitoe」の内側
動画はよしもと芸人によるバスケットボールの対戦コンテンツ。手前にあるのがゲートウェイ

 Linkingは、スマートフォンアプリとBLEデバイスの連携させるためのプラットフォームで、APIを無償公開している。アプリ開発者は、汎用のLinkingアプリを介して、あるいはLinkingのライブラリをアプリに組み込むことで、BLEデバイスと接続するアプリを手軽に開発できるようになる。ブースでは、押しボタンやジャイロセンサーなどのLinking対応各種デバイスを展示するとともに、実際にデバイスを操作するなどしてアプリとの連携を体験してもらうデモを行っている。

 また、各種センサーのデータ収集と機器の制御を行うIoTプラットフォームとして東芝が提供している「SmartEDAクラウドサービス」による新サービス「ifLinkクラウド」も参考展示し、Linkingデバイスとの連携デモを行っている。ifLinkクラウドは、if-then型の条件設定ツール「ifLinkエディタ」を使って、Linkingデバイスとの連携条件・ルールを設定できる機能。if部分には、Linking対応デバイスのボタン押下やセンサーデータからの入力など、then部分には、Linking対応デバイスの振動や光の点滅、音声合成、他のクラウドサービスへの通知などを指定できるため、プログラミング不要でLinkingデバイス連携アプリを開発できるとしている。複数端末へのルール設定・配信などを行う管理機能も備える。

Linkingを活用したアプリと、Braveridge製のLinking対応デバイス。丸型のものが押しボタンの「Pochiru」、雫型が「Shizuku」(発光する「Shizuku LED」、温度・湿度・気圧センサーの「Shizuku THA」、加速度・ジャイロセンサー「Shizuku 6x」の3種類がある)、スクエア型のものは発光するタイプの「Tomoru」
「ifLink」のルール設定画面

 NTTグループのブースではこのほか、低消費電力で広範囲をカバーする「LPWA(Low Power Wide Area)」ネットワークのフィールド実験について、NTT西日本が紹介している。LPWAは、1つの基地局で数kmをカバーするとともに、バッテリー交換なしで数年駆動するのが特徴で、IoTに最適だという。NTT西日本では、IoT向け通信規格の1つである「LoRaWAN」方式のLPWAネットワークを使用。ブースでは、フィールド実験で使用しているKerlink社製の基地局と子機のほか、同製品で接続して遠隔操作する水田の水位調整装置などを展示している。

 NTT西日本によると、海外ではLPWAネットワークの通信サービスが1子機あたり月額数十円で提供できるといった報告もあるとし、実際に日本の環境でどれぐらいの距離で運用できるのか、バッテリー寿命が3G/LTEと比較してどれだけ向上するのかといったデータもあわせて収集し、検証を行っていくとしている。今後、LPWAネットワークサービスが通信会社から提供されるようになれば、さまざまな領域の事業者がローコストでIoTのための通信インフラとして活用できることになる。

 なお、NTTブースでは、水田管理のIoTとしてすでにサービス化されている「PaddyWatch」も展示していた。こちらはNTTドコモの既存のモバイルネットワークを介して、水田に設置したセンサーから水位・水温・温度・湿度データを収集するシステムだ。市販の乾電池で1シーズン稼働するという。

 NTT東日本では、HEMSサービス「フレッツ・ミルエネ」で新機能として提供予定の「シナリオによる自動制御」のデモを行っている。従来もスマートフォンからエアコンのオン/オフなどコントロールが可能だったが、新機能では、条件を設定して自動的に制御できるようになるという。例えば、タブレットから温度や照度のしきい値を設定することで、気温が高くなったらエアコンが入る、日が暮れたらカーテンを閉まる……といった動作を、家の模型で再現している。来年2月の提供開始を予定しているという。