イベントレポート

第3回ウェアラブルEXPO

回路形成できるセメダインの導電性接着剤、ヤマハの編み込み式センサーなど未来を感じさせるウェアラブル技術

 東京ビッグサイト(東京都江東区)にて1月20日まで「第3回ウェアラブルEXPO」が開催されている。メガネタイプのウェアラブル端末(別記事『“視力4.0”実現、見えるものも見えないものも拡張するメガネスーパーのウェアラブル端末「b.g.」』参照)に加え、導電性の接着剤や糸を衣服に編み込んだ“着る”タイプのウェアラブル製品も展示されている。

セメダインの導電性接着剤が実現するヒーター内蔵のパーカー

 セメダイン株式会社のブースでは、導電性接着剤「セメダインSX-ECAシリーズ」を用いたヒーター内蔵のパーカー「HEART PARKER」を展示。SX-ECAは低温硬化形のため、熱に弱いTPU(熱可塑性ポリウレタン)に対しても直接回路形成が可能だという。2016年に発表したLEDチップを施した衣服「着るセメダイン」から実装面で実用的に進化しており、テキスタイル以外にも適用できるようになった。

参考出展されたヒーター内蔵のパーカー「HEART PARKER」
樹脂シートにも回路形成。曲げ、ねじれに対しても高い導電性を持っており、このような立体成型も実現できる
前回の「第2回ウェアラブルEXPO」で参考出展された「着るセメダイン」。衣服にLEDチップを施したものだが、今回は「より実用性の高いものとしてHEART PARKERが提案された」という

 HEART PARKERは、ファッションデザイナーOlga氏とコラボした製品だが、一般販売される予定はないという。しかし、今後も各素材への回路形成方法や接続方法のノウハウを蓄積させるため、医療、スポーツ、家電などのIoTが進展する可能性のある分野との協力・開発などを目指すそうだ。

導電性の糸が均一的に発熱、スマホからも温度調節可能な布製ヒーター「HOTOPIA」

 株式会社三機コンシスでは、洗濯可能なウェアラブル布製ヒーター「HOTOPIA」を展示。導電性の糸をニット状に編み込んでいるため、均一的に熱を送ることができ、伸縮性・通気性も兼ね備えているのが特徴。信州大学繊維学部と共同研究したもので、同社ではインナーやグローブ、サポーターなどにHOTOPIAを装備した商品を展開している。

 各商品にはバッテリーを接続するための専用端子が設けられており、Bluetooth機能を備える純正バッテリーを接続すると、Android/iOSアプリ経由で電源オン/オフやバッテリー残量確認が行える。市販のモバイルバッテリーを接続したり、直接、温度調節可能なボタンを備える専用ケーブルなどもラインアップする。

糸で編み込んでいるため、布全体にムラなく熱が伝わっている
HOTOPIAを備えるベスト(税別2万円~)やグローブ、サポーターなどの製品を展開
各商品には純正バッテリーやケーブルを接続するための専用端子が設けられている
Bluetooth機能を備える純正バッテリー(税別6000円)
モバイルバッテリーを接続したり、温度調節が可能なケーブル(税別2000円~)もラインアップ

リアルタイムで人の動きを計測、ゴムのように伸び縮みするヤマハの変位センサー

 ヤマハ株式会社では伸び縮みに応じて抵抗が変化する変位センサーを編み込んだグローブや上半身用ウェアを参考出展している。センサーをテキスタイルなどに編み込むことで、指先や身体の動きの計測データをリアルタイムでモニターすることができる。例えば、ピアノ奏者の指使いを計測したり、VRシステムと組み合わせることで「握る」「掴む」といった動作の入力にも活用できそうだ。

 センサーグローブを使ったデモでは、指先の動く方向・押しの強さを検知して再生中の音楽の音量・音質に変化を与えるなど、DJプレイのような操作を実現していた。

変位センサーを編み込んだグローブ
指の動きに応じて、音楽にリアルタイムで効果を加えるデモを行っていた
上半身用ウェア。ヘルスケアの分野にも活用できそうだ