イベントレポート

Japan IT Week 春 2014

LINEスタンプによる広告が「圧倒的にリーチする」理由〜LINE講演

「Web&モバイル マーケティング EXPO 春」基調講演レポート

 5月14日から16日まで、東京ビッグサイトにて「2014 Japan IT Week 春」の1イベントとして「Web&モバイル マーケティング EXPO 春」が開催されている。15日はLINE株式会社の田端氏が「LINEが変えるマーケティングの未来」と題した基調講演を行い、広告メディアとしてのLINEの有効性をアピールした。

LINEのデイリーアクティブユーザー率は6割

LINE株式会社 上級執行役員 法人ビジネス担当 田端 信太郎氏

 LINEで法人ビジネスを担当している田端氏は、壇上に上がるやいなや、「(企業の)ほとんどのマーケティングメッセージは無視されている」と宣言。企業がさまざまな手法、コンテンツを用いてPR活動を行ってはいるものの、「自己満足になっているものが多いんじゃないだろうか」とマーケティング活動の仕方に疑問を投げかけた。

 そういったマーケティング活動の改善をLINEがサポートできるのではないかと切り出した同氏は、まずLINEの現状を解説した。LINEのユーザー数は4月1日に世界合計で4億を突破したばかりだが、現在はすでに4億2000万人に到達。夏には5億人を突破すると見込まれ、年内に6億超も視野に入ってきた。しかし、「Google、Facebookのユーザーに比べてまだまだ少ない」とし、スマートフォンの普及数を考慮に入れれば「まだ1合目、2合目(の段階)ではないか」と語った。

 今や大多数が日本以外のユーザーだ。日本のユーザーは5000万ほどで、全体の12%程度。アジア・ASEAN地域を中心に、米国などでもユーザー拡大が進んでおり、1日当たりのテキストメッセージの送受信数(トーク)は100億件、スタンプの送信件数は18億回に達している。一方、通話機能の利用回数は1日当たり1200万回で、やはりトークやスタンプがLINEの中心機能となっていることがわかる。

 膨大なコミュニケーションがLINEというプラットフォーム上で行われている中で、LINEの最大のアドバンテージは、アクティブユーザーの高さにあると田端氏。モバイル業界ではMAU(Monthly Active User)が標準的な指標として用いられることが多いが、LINEではDAU(Daily Active User)を重視しており、LINEはこの数値が59.4%、つまり6割近いユーザーが毎日LINEを使っているという。

 たとえば、日本国内の5000万ユーザーのうち3000万人が日常的に使っている計算になり、「マスメディア級のリーチがあるといっても過言ではない」と話す。他社によるリサーチ結果を引用し、1人当たりのLINEの利用時間が長いことも特徴だとして、日本人のネット利用におけるLINEの占有率はかなり高くなってきていると述べた。

 ユーザー数が多いことから、ユーザー層については男女比がほぼ半々。年齢層はスマートフォン利用ユーザーの内訳とほぼ同じ分布状況で、今や祖父母と孫がLINEでやりとりすることも多いのだという。ユーザーの居住地域も日本全国にまんべんなく広がり、全国の人口分布比率に近い割合を示しているとした。

「無限の自由」があるユーザーに、無料だから広告見て、は通じない

 少なくとも日本においてはスマートフォン上の基本的なインフラのような形で活用されているわけだが、その理由の1つにMNP(携帯電話番号持ち運び)制度があると田端氏は指摘する。MNPで電話番号は変わらないようになったが、メールアドレスはまだそうはなっていない。

 しかし、LINEであれば端末が別のキャリアに変わってもユーザーIDは変わらないため、友人らに“メールアドレス変更を知らせるメール”を送る手間は不要だ。このため、スマートフォンにおいては、LINEが従来のキャリアメールに近い役割を担っていると同氏は見ている。

 マーケティングのプラットフォームとして企業に採用されるには、そのような「インフラとして普及しているかどうか」が重要だと強調する。たとえば電車の中吊り広告は、都市では通勤・通学などに使われる社会インフラとして定着しているからこそ、マーケティング媒体として有効に機能する。LINEも、コミュニケーションにおけるインフラとして浸透しつつあることから、「マーケティングインフラとしてインパクトがある」だろうとした。

 同氏によると、LINEを広告メディアとして利用した場合、一番のメリットは「無視されにくいこと」だと話す。新商品の宣伝、キャンペーンの実施、ブランディングのPRなど、企業からのメッセージはあらゆる場所で目にしたり、耳にしたりする。しかし、大量のメッセージを受け取っているはずにもかかわらず、頭に残っているものは少ない。

 なぜここまで無視されるのだろうか。同氏は総務省による調査データを引き合いに、世の中に流通する情報量は年々増えているものの、消費者が受け止めている消費情報量はほとんど一定で変化がないことを示した。また、テレビ視聴においてはHDDレコーダーの普及が進み、番組のジャンルに関係なく録画して好きな時間帯に見るスタイルが多くなってきていることも紹介した。

 好きな時に好きなテレビ番組を見られるうえ、さらにスマートフォンという多彩なコンテンツを楽しめるデバイスが選択肢として増えたことで、ユーザーは「無限の自由」を手に入れたと同氏は表現。「無料のメディア、無料のサービスだから、がまんして広告を見てくださいという論理が、もはや全く通じなくなっている」と断言する。

 ある調査によれば、バナー広告のクリック率は2000年には1%ほどあったが、2011年は0.19%へと大幅に落ち込んでいるという。また、メルマガの開封率も今や10%前後と低迷し、9割が開封すらされていない。これは、上手に広告に誘導するという点で「消費者をコントロールすることがかなり難しくなっている」ことを意味している。広告やマーケティングというものがコミュニケーション全体のごく一部に過ぎないことを認識しなければならない、と同氏は注意を促した。

友達が送るからこそ、スタンプ化された広告が無視されにくい

 その一方で、広告メディアとしてのLINEはどのような仕組みになっているのか。LINEにはご存じの通りイラスト画像をやりとりできるスタンプ機能があり、多くの企業が自社のキャラクターなどをモチーフにしたスタンプを配布して、ユーザーが自由に利用できるようにしている。ユーザーが感情を込めてメッセージを届けたい時に使えるこのスタンプ自体が、企業にとっては自社のブランドやイメージ、商品を伝えるための広告の役割を果たしている。

 テレビCMや動画コンテンツの広告、メディア媒体に掲載されているバナー広告などは、企業から消費者に向けて発信する。しかし、LINEスタンプは企業が送るのではなく、友人同士で感情を込めて送る形になる。ストレートに広告として受け取る感覚が薄いうえに、「広告を無視するのは友達を無視すること」にもつながるため、必然的に無視されにくくなるのではないかと同氏は分析している。

 企業がLINE公式アカウントとしてスタンプを提供する場合、最も安価なメニューで2000万円から。LINE上での広告活動に2000万円以上かけることが妥当かどうかは企業規模にもよるだろうが、ユーザーがスタンプを入手するにはその企業のアカウントと“友達”になる必要があるという仕掛けもあり、平均的に200万ユーザー以上、場合によっては400万ユーザー以上が“友達”になることもあるという。

 もし1セットのスタンプで300万ユーザーを獲得できれば、1ユーザー当たりのコストは約7円。ファンを1人増やすのに7円と考えれば、おそらく1人あたり100円単位になるであろうTwitterのようなSNSと比べると、圧倒的にコストが低い、と田端氏は言う。

 広告メディアとしてのLINEの他の特徴として、10〜20代のユーザーが多いことや、仕組み上スパムが発生する可能性が低いことも挙げた。マクドナルドやローソン、マツモトキヨシといった大手チェーンがクーポン配布のキャンペーンにLINEを活用することで、7割近いメッセージ開封率や実店舗への大規模送客を実現できたことも紹介し、LINEによって「これまでになかった使い方、角度からO2Oを推進できる」ことも訴えた。

LINEがさまざまなボーダーラインを消すトリガーに

 田端氏は、2月に開始した「LINEビジネスコネクト」を利用した具体的なサービスが今後続々登場することも発表した。LINEビジネスコネクトは、ユーザー属性に応じて異なるメッセージを送ったりできる仕組みだが、宅配ピザの注文、レンタルビデオの返却通知、タクシーの配車、オンラインバンキングとの連携、公共料金の請求金額通知など、6月から7月にかけさまざまなサービスがスタートする予定。ショップのシフト管理や在庫管理のような業務支援にも活用できるとし、メッセージングアプリの枠を超えた幅広い応用が可能になるLINEの新たな魅力をアピールした。

 中小企業向けには、リニューアルし機能強化を図った「LINE@」の提供を5月中に開始予定。店のホームページをLINE内に開設したり、顧客と直接つながれる問い合わせ機能などを利用でき、初期費用、月額費用ともに0円から使えるプランも用意しているとのこと。

 最後に、テレビ・新聞を中心としたマス広告を表す“Above the line”と、店頭販促、DM、クーポンなどを表す“Below the line”の2種類の“ライン”が、以前から広告業界にあったと話した田端氏。「メディアに対して線が引かれ、こっちが一流、こっちが二流みたいなイメージがあった」という。しかし、「スマートフォンの時代を迎えて、そういったボーダーラインに本当に意味があるのか」と疑問を呈しつつ、「LINEを通じてそういったいろんなボーダーラインを消していき、再定義していく、そういうトリガーになれれば」と意気込みを語った。

(日沼 諭史)