イベントレポート
第7回 教育ITソリューションEXPO
キット組み立てから制御まで、視覚・直感的に理解するプログラミング教育
2016年5月23日 17:01
5月18~20日に開催された教育関係者向けのイベント「第7回 教育ITソリューションEXPO」では、「みらいの学びゾーン 学びNEXT」を新設。ボードコンピューター、ロボット、学習用アプリを用いたプログラミング教育コンテンツ、電子工作キットなどを展示していた。
ダイヤブロックの組み立てから始まるプログラミング教育プロジェクト「ソビーゴ」
株式会社ワイズインテグレーションと株式会社ナチュラルスタイルは、子供向けプログラミング教育プロジェクト「ソビーゴ」を今夏より提供する予定。5歳以上を対象としたブロックプログラミング教材「ソビーゴ BP1」、8歳以上を対象にしたロボットプログラミング教材「ソビーゴ RP1」の2種類をラインナップする。
ソビーゴ BP1は、記号やイラストがデザインされたブロックを用いて視覚的にプログラムを組めるソフトウェアと、ダイヤブロックがセットになった教材。ソフトウェア内のブロックパーツは、実際のダイヤブロックと同じ形にデザインされているため、リアルなブロックで仕組みを理解してからPC/タブレットでプログラミングを体系的に学べる特徴がある。
ソビーゴ RP1は、BASIC言語でプログラミングができる超小型PC「IchigoJam」を使って、ダンボール製の組み立て式ロボット「ソビーゴ」を制御する教材。ロボットは走らせたり、回転させることが可能で、動かしながらプログラミングを学べるようになっている。ロボット制御を一通り体験したあとは、IchigoJamを再利用してオリジナルの電子工作やゲーム作りに挑戦することも可能だ。
ナチュラルスタイルでは、IchigoJamを使ったプログラミング教室を以前から実施しているが、さらに多くの子供にプログラミングに触れるきっかけを提供することを目的としてソビーゴを開発したという。「“学んで覚える”よりも、まずは教材に触れて、プログラミングの楽しさを体験するコンセプトになっている」と担当者は話す。今後、7月より学校や学習塾に教材として販売を開始する予定だ。
ギアやモーターの動力の仕組みから理解。Arduinoを駆使するロボット教室
ヒューマンアカデミー株式会社のブースでは、同社が実施する「ヒューマンアカデミーロボット教室」で使用するロボットが展示されていた。
「ロボット教室(90分×月2)」は、5、6歳を対象としたプライマリーコース、主に小学生を対象としたベーシック、ミドル、アドバンスコースを用意。ブロックを組み立てることにより培う立体感覚や空間把握能力、ギアやモーターなどの動力の仕組みを理解することで、プログラミングの基礎や理系・数学科目への好奇心を養うことが目的となっている。
さらに、アドバンスコース修了者または中学生を対象とした「ロボティクスプロフェッサーコース(120分×月2回)」では、マイコンボード「Arduino」を利用してロボットの製作を行う。年に1回、自作したロボットを競わせる大会も実施している。
担当者によると、「プログラマーの育成より、“コードを読み解く力”を身に付けることを重視しており、例えばインターネット上にあるライブラリを活用しながらオリジナル作品を作れるようなきっかけを提供するもの」としている。
磁石で繋げるだけのシンプルな電子工作「littlebits」
「littlebits」は、磁石で接続できる単機能の電子回路基板で構成されており、はんだ付けや配線が不要な電子工作キット。50種類以上のモジュールがあり、パワー(青)、インプット(ピンク)、ワイヤー(オレンジ)、アウトプット(緑)の4色のモジュールを組み合わせることで、ロボットや電子楽器などを作り出すことができる。
各モジュールがセットになった「BASE KIT」「PREMIUM KIT」「DELUEXE KIT」のほか、コルグとコラボしたアナログシンセサイザーの「SYNTH KIT」、米国航空宇宙局(NASA)とコラボした火星探査機の「SPACE KIT」が用意されている。
2011年にlittlebits社より米国で販売を開始し、2013年にコルグが日本の輸入代理店として取り扱い始めた。日本未来科学館や大学などでもワークショップを実施した事例もある。
3社協業でそれぞれのターゲットへ提供するプログラミング教育
株式会社学研エデュケーショナルと株式会社アーテックはロボットプログラミング講座「もののしくみ教室」を今年4月に開講。本講座の趣旨は、自動ドア、信号機、踏切といった身近なものの仕組みを構造、プログラムの双方から研究する内容となっている。
教材は、ブロック、Arduino互換機「Studuino」、プログラミング環境ソフト、モーター/LED/センサー/ブザーなどの各種パーツ、テキストを用意。90分×月2回計3年間のコースが設けられている。1年目の「Developer」コースでは基本プログラミング、2年目の「Master」コースは分岐命令を使った自律型ロボット、3年目の「Innovator」コースは変数を利用したプログラミング、8サーボの二足歩行ロボットの製作を行っていく。
そのほか、ブースにはアーテックと協業したソニー・グローバルエデュケーションの工作キット「KOOV」が展示されていた。アーテックは学校、学研は学習塾をターゲットとした製品だが、ソニーは一般コンシューマー向け製品として開発。今夏より提供を開始する予定だ。学研、アーテックが使用するソフトウェアは教育用プログラミング環境「Scratch」ベースのものを使用しているが、ソニーはScratchに似せた独自のものを使用しているという。
新学習指導要領により、2012年から中学校でも「プログラムによる計測・制御」が必修になったことを受け、古くから教育事業を手がける企業も、プログラミング教育の領域へ参入する流れができている。
各担当者に聞いてみると、自社サービスはまだ試行錯誤の段階ではあるものの、“知的好奇心”を育てることが当初からの目的になっているという。「プログラマー育成が目的ではなく、趣味の1つとして選択肢を与え、基礎を学ぶことで、どのタイミングでも独自にプログラミングに取り掛かれる技術を身に付けることが重要だ」と各社とも同様の意見を述べていたのが印象的だった。