課題は正確なニーズの把握とコンテンツの掘り起こし、中国検索事情


Baiduのチーフプロダクトデザイナー孫雲豊氏

 中国のBaidu(百度)は18日、中国・北京でBaiduの顧客や技術者などを対象としたイベント「Baidu Worid 2009」を開催した。

 午後に行われた分科会セッションでは、「検索技術の趨勢」「EC事業」「検索マーケティング」「モバイルインターネット」「投資」の5つのテーマについて、市場の現状や今後の業界トレンド、午前中の基調講演でBaidu会長兼CEOのRobin Li氏が発表した「Box Computing」構想の応用などについて、発表やディスカッションが行われた。

 「検索技術の趨勢」をテーマにした分科会では、Baiduのチーフプロダクトデザイナー孫雲豊氏が、検索エンジンが直面している課題と、それを解決するためのBaiduの試みについて講演した。

 孫氏は、「10年間で中国のインターネットユーザーは38倍、中国のサイトの数は20倍に増えた。過去5年間でも検索エンジンのトラフィックは20倍に増えている」と急成長する中国のインターネットの現状を紹介。こうした急成長に伴って、検索エンジンにも多くの課題が生じているとした。

 検索エンジンの主な課題としては、検索ニーズが多様化していることや、ユーザーのニーズを満たす方法が複雑化していることを紹介した。以前は、サイトやサービスの名前をキーワードとして入力して、サイトのURLを知りたいという検索ニーズが全体の30%を占めていたが、現在ではこの割合は15%に半減していると説明。Webの検索結果はユーザーニーズの一部でしかなくなっており、検索結果にはより具体的で、即時性のあるものが求められるようになっているとした。

 また、ユーザーの検索行動はさらに「自然体」になってきており、これが検索エンジンにとっては難しい課題になっていると説明。ユーザーが頭に浮かんだ単語や文章をそのまま入力するようになってきており、極めて短いキーワードや、逆に長い自然文がクエリーに占める割合が高まっているという。Baiduのデータでは、8文字以上あるクエリーが全体の50%以上、検索回数ベースでも30%以上を占めており、クエリーの文字数は年々長くなっていると語った。

 さらに課題としては、「価値のあるリソース」の取得が難しくなっている点を指摘。かつてのWebサイトはシンプルな構造だったが、ブログなどの登場によりサイトの構造が複雑化しているとした。さらに、多くの書籍のようにネットでは公開されていない情報や、「人の頭には存在しているがデジタル化されていない情報」など、ネット上にある情報はまだ全体のほんの一部だとして、こうした表面に出てきていない情報「Hidden Web」をどのようにして掘り起こすかが大きな課題だとした。

 孫氏は、これらの課題に対するBaiduのアプローチは、正確なユーザーニーズを理解するための技術と、強力な自然言語処理技術にあると説明。さらに、コンテンツ側からサイトマップを提供してもらうなどリソースの取り込み方の工夫や、Q&Aサービスのようなソーシャルネットワーキングの活用によりユーザーが必要としているコンテンツを増やすといった取り組みが、さらに重要度を増しているとした。

 また、「検索結果に何百ものURLを提示するより、1枚の画像を表示することがユーザーにとって必要な場合もある」として、検索結果をより充実した形にすることも必要だと指摘。検索ボックスを入口にしてユーザーに様々なサービスを提供しようという、Baiduが発表した「Box Computing」の概念が今後さらに重要になってくると語った。

 このほかのセッションでは、検索における中国語特有の課題や、今後普及が期待されるモバイルサービスについてのディスカッションなどが行われた。特に、中国でも3G携帯電話のサービスが開始されたことで、モバイルにおけるリッチコンテンツの普及や、地方部でのユーザー拡大に期待しているという意見が多く挙がっていた。


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(三柳 英樹)

2009/8/19 13:08