YouTube活用の動画広告、トヨタやロッテに見る成功事例


 東京国際フォーラムで同時開催されたイベント「Business Blog & SNS World 2009」「Next Advertising & Marketing 2009」「3Dインターネット・ビジネスフォーラム」で17日、グーグルの牧野友衛氏(YouTube営業部 YouTube営業部長)が講演した。「YouTubeでの動画によるインタラクティブコミュニケーション」と題し、YouTubeの動画を用いたマーケティングでは、単に動画を流すだけでなく、YouTubeに集まるユーザーの好みを把握したり、YouTubeの特徴的な機能などを活用することが成功につながると説明した。

テレビCMをそのままアップロードしても、あまり見られない?

グーグルの牧野友衛氏(YouTube営業部 YouTube営業部長)

 牧野氏によると、企業が広告目的の動画をYouTubeにアップロードする場合、「テレビCM用の素材ををそのまま公開したところで利用者にウケないのではないか」と言われているが、必ずしもそうではないという。企業がアップロードした動画で人気のあるもののうち、約3割はテレビCMをアップロードしたものだったという。

 一方で、YouTube向けの専用動画を制作してアップロードする企業もあるとして、NTTドコモやソフトバンク、トヨタ自動車を紹介した。YouTubeで流行っている動画を参考に、YouTubeで見られそうな動画を制作しているケースもあるという。

 さらに最近では、流行っている動画と似た動画を制作する事例も出ている。YouTubeで人気のあるクリエイターと連携して、企業の広告動画を制作してもらうというものだ。東芝では、折り紙アニメーション作家のnoriomaru氏による「トウシバメカ VS ドロンボーメカ」や、3Dアニメーション作家の石川ホールディングス氏による「草食系にも肉食系にもdynabook」という動画を投入。すでに多くのファンが付いているクリエイターのため、そういったファンの方々にも動画を見てもらえるという。

「動画レスポンス」機能で、広告主がユーザーと交流

トヨタ「iQ」の公式チャンネル「TOYOTA iQ Amazing_Theater」

 YouTube用に制作した動画そのものに加えて、「動画レスポンス」というYouTubeの機能をうまく活用した事例として紹介したのは、トヨタの超小型車「iQ」のプロモーションだ。「動画レスポンス」とは、公開されている動画に対して、テキストではなく、動画によってレスポンスを返すという機能だ。

 トヨタの「easy parking」と題された動画は、とある駐車場でミニバンが出て行った後の1台分のスペースに、2台のiQがやってきて並んで駐車することで、車体のコンパクトさをアピールするもの。しかも、両隣に別の車が止まっている幅3メートルあまりのスペースに、本来は縦に進入すべきところ、後輪をドリフトさせながらスピンするようにして横向きに入庫する。アクロバティックな動画が話題となり、公開されると「どうやって撮影したのか?」といったコメントが付いた。

 さらには、「出る時はどうするのか?」といった疑問のコメントも寄せられ、それに対するトヨタからのレスポンスとして提示されたのが、出庫するシーンの動画だ。動画プレーヤーの下に表示される「これは、次の動画への動画レスポンスです」のリンクから見られるようになっている。牧野氏は、「1つの動画で完結するのではなく、複数の動画をひも付け、ユーザーの疑問に動画で返すことで多く見られるようになった事例」と指摘した。

YouTubeユーザーは何が好きか、実際に使ってみて把握を

 ロッテのガム「Fit's」のプロモーションとして展開されたダンスコンテストは、まず音楽とダンスを紹介する動画を公開し、これを見た一般の人が自分で踊った動画をアップロードしてもらうというものだ。牧野氏によれば、日本では、自分で動画を作成してアップロードすることはそれほど活発ではなかったが、このダンスコンテストでは1700本以上が集まったという。また、再生回数の面でも、世界も最も多く見られたスポンサーの動画チャンネルだという。

 この事例は、YouTube単独ではなく、「全体のキャンペーンで盛り上がった」のが特徴。企業は動画をアップロードすればそれで見られるようになると考えがちだが、ロッテでは、マス広告や他のインターネット広告も含めたキャンペーンを展開し、その中でYouTubeを「動画を集める場」と位置付け、誘導した。ブログやSNSなどで動画を簡単に共有できることも、話題性を広げるのを後押しした。

 牧野氏は最後に、YouTubeを活用したマーケティングで重要なこととして、集まるユーザー層は媒体によって異なる点を広告主は意識する必要性があると説明した。「YouTubeのユーザーが何を見て、何を楽しいと思い、どのように使っているのか、実際にYouTubeを使ってみれば理解していただけるのではないか」。また、単に動画を見るだけでなく、コメントしたり評価するユーザーが多いというコミュニティの要素も強調。トヨタの事例のように、「ユーザーが何か言っていることに対して動画で回答するように、ユーザーのコミュニティの立場で取り組むと、成功するケース多いのではないか」とした。


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(永沢 茂)

2009/7/17 17:45