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緊急連載! 仮想通貨の申告で破産しないための仮想通貨・確定申告ガイド Chapter5

仮想通貨の確定申告には税理士が絶対に必要

2018年3月は、税務当局による仮想通貨の税務上の取り扱い決定後、初めての確定申告シーズンとなる。株式会社インプレスR&Dでは、日本初の仮想通貨税務対策ガイド『今年の申告で将来が決まる! 仮想通貨の税務対策』(鹿剛著)を緊急出版する。この連載では、同書の内容を全5回にわたり、申告期間中に集中掲載。来年以降に向けた情報収集にも役立てていただきたい。(NextPublishing編集長・山城 敬)

『今年の申告で将来が決まる! 仮想通貨の税務対策』目次/当連載コーナーでの掲載予定
Chapter1仮想通貨の税務 その理解と対策の必要性【2月27日掲載】
仮想通貨にはなぜ税務対策が必要なのか
国税庁の仮想通貨に関する見解 “8月タックスアンサー”と”情報4号”
仮想通貨とは?
所得の区分と課税
今年確定申告することが重要!―これからの投資のために―
Chapter2Q&A Part.1 個人で仮想通貨を持つ場合【3月1日掲載】
Q1:個人と法人ではどちらで仮想通貨の取り引きを行うのが良いですか?
Q2:どのような属性の投資家が仮想通貨を行った方が良いのでしょうか。
Q3:自己の名義の他、子供の名義でも取引所のアカウントを開設し、取り引きを行うことは意味があるでしょうか?
Q4:今年から、シンガポールに住むことになりました。この場合、今までの取り引きについての納税はどうなるでしょうか?また、これからの取り引きについてはどうなりますか?
Chapter3Q&A Part.2 法人で仮想通貨を持つ場合【3月8日掲載】
Q5:法人で所有する注意点を教えてください
Q6:個人から法人へ切り替える際の注意点を教えてください
Q7:個人から法人へ切り替える際のメリット・デメリットを教えてください
Q8:海外で法人を設立し、仮想通貨を購入した場合の取り扱いはどのようになりますか?
Q9:仮想通貨の利益は事業所得になりますか?
Chapter4Q&A Part.3 課税対象となる取り引きとは【3月6日掲載】
Q10:利益確定をしていなければ、申告の必要はないのでしょうか?
Q11:仮装想通貨の売却とは、どのような行為をいうのでしょうか? 仮想通貨の売却、仮想通貨での商品の購入、仮想通貨と仮想通貨の交換の場合はこれに該当するのでしょうか?
Q12:仮想通貨を追加で購入しましたが、取得価額はどのように計算すればよいですか?
Q13:仮想通貨が分裂(分岐)した場合はどうするべきですか?
Q14:仮想通貨に関する所得の所得区分を教えて下さい
Chapter5仮想通貨取り引きの申告には、税理士の協力を! タックスプランニングの重要性を認識しよう【3月13日掲載】※この記事
仮想通貨の確定申告には税理士が絶対に必要
税理士の中でも選別が必要です(しかし税理士もクライアントを選別します)

Chapter5:仮想通貨取り引きの申告には、税理士の協力を!
タックスプランニングの重要性を認識しよう

仮想通貨では、将来の課税所得についての計画を立てる「タックスプランニング」を税理士のアドバイスを得てあらかじめ行っておくべきです。やみくもに取り引きを行うと、ともすれば納税のために仮想通貨を売却することが必要になります。この売却によりさらに翌年の納税額が膨らみます。最悪の場合は納税できず、破産に至ることもあります。

仮想通貨の確定申告には税理士が絶対に必要

個人でも確定申告を行うことはもちろん可能ですが、非常にシンプルな取り引きをされている場合を除き、税理士に依頼する必要があります。

 仮想通貨にかかわる確定申告については、いくつかのアプリやエクセルシートも提供されています。代表的なものを紹介しますが、どのアプリ、エクセルなどという言及は避けますが「良くできているな」と思うものもありました。

仮想通貨の確定申告ツールの例

 しかし、次のような問題がすべて解決されない限り、仮想通貨関係の確定申告は、税理士に依頼すべきだと思います。

1.計算のプロセスを充分に検証できない(計算式などがブラックボックス化されている

2.Webにアップロードし、手元に十分な帳票が残らない

3.常にアップデートされていく保証がない(継続性が維持できるかという問題)

4.(理論的には)仮想通貨で入金がなされた場合の単価を持ちうるはずがない。(例えば、自らのウォレットに保管していたビットコインにも移動平均法または総平均法で計算された価格が与えられてしまう。それをbitflyerに送り、モナコインを購入したとすると、この場合の利益額は、入時時期、入金額、購入時期、購入数量が全くおなじでも、個々人により損益が異なります。このあたりの損益の確定はどういうロジックで可能なのかは不可解です。)

 これらのアプリ、エクセル、Webサービスは、当面のところ主に期中に自分の損益がどのくらい出ているのかの目安を得るために使用する程度に利用するのが良いように思われます。

 ただし、中には税理士への相談とリンクされているものもあります。税理士への相談とともに、そのようなアプリ、エクセル、Webサービスを使うことは、確定申告の際でも大いにありうると思います。というのは先に掲げた問題も税理士自身が把握していると推測されるからです。

 より簡便な方法としては、本書を税理士に手渡して頂ければ問題はすべて把握して頂けると思います。

税理士の中でも選別が必要です(しかし税理士もクライアントを選別します)

確定申告には税理士が絶対に必要ですが、どのような税理士に依頼するかも考慮する必要があります。

 ベストな選択は、自身でも仮想通貨取り引きを行い、熟知されている税理士(以下「エキスパート税理士」といいます)を選択することです。取り引きの方法、性格、通貨の種類、その特徴など、ある程度以上の皮膚感覚を持っていないと、依頼する側も、依頼される税理士も情報共有に膨大な時間を要することになるからです。とはいえ、そのような税理士を探すことは容易ではないと思います。

 筆者の友人で、仮想通貨のことは何でもこなせるレベルの方がいます。当然取り引き記録などもすべて揃えられますし、説明も理路整然とできます。ただし、税理士に依頼して確定申告を行うのは今回がはじめてですので、顧問税理士などはいません。近隣で10件ほどの税理士事務所に損益計算と確定申告を依頼できるかと問い合わせたところ、全滅でした。最終的には、対応してくれる税理士事務所を見つけたとの連絡を受けましたが、申告自体かなり複雑な上に需要も高いことから「一見(いちげん)さんお断り」との対応が多かった模様です。

 では、どのようにして対応をしてくれる適切な税理士を探すのが良いのでしょうか?以下では、筆者の考える方法を記しておきます。

従来から税理士に確定申告を依頼していた場合

 税理士(便宜上、顧問契約の有無を問わず、以下「顧問税理士」といいます)に従来から確定申告を依頼していた場合には、それほど困難を伴わないと思います。確定申告までのプロセスは次の通りです。

1.顧問税理士に相談。

2.顧問税理士による対応が難しい場合、仮想通貨に関する損益計算に対応している、他の税理士を使ってもらう(他の税理士を紹介してもらうのもありえますが、その場合、従来からの事項の引き継ぎ等まで考慮せざるを得なくなります。多少金額は増えても、連携してもらい、その結果から仮想通貨の損益計算について、今後のために顧問税理士に習得してもらうのが良いと思います)。

3.他の税理士からの損益計算と他の事業等の損益をもとに、顧問税理士が申告書を作成し、提出。

税理士に確定申告を行うのが初めての場合

 仮想通貨取り引きのエキスパート税理士に依頼できればベストですが、かなり困難です。その場合次のような方法をとるしかないと思われます。

方法1

1.筆者の友人がとった方法と同様、税理士事務所に次々と連絡(近隣の事務所、Googleなどでの検索結果、広告に表示された事務所を問わないものとします)

2.対応可能性がある旨の回答をもらった税理士事務所を訪問し、相談。ここがポイントになりますが、その際、自分の取り引き記録などの資料がすべて揃っていること、すべてではないにしてもほとんど揃っていることが前提となります(ただし、それすら間に合わない場合はとにかく訪問してください)。依頼を受ける税理士の立場としては不正な申告につながるような依頼は受けたくないのは当然です。訪問したい際に、色々と質問を行うことも重要です。本当に依頼して大丈夫なのか否か、少なくとも仮想通貨の税務を理解しているか否かの確認のため、本書をもとに質問してください。

3.他に申告すべき所得があれば、その旨も告げて下さい。例えば、ネットショップなどの運営をしていればその損益計算なども必要になるので、受けられるか否か、受けられる場合にも価格が異なります。この段階で、概算となると思いますが、スケジュールと価格を確認します。

4.上記の1から3の結果にもとづき確定申告の依頼先を選定します。

方法2

1.先に紹介したアプリやWebサービス中には、税理士への依頼をパッケージで提供しているものもあります。「G-tax」などがそれにあたります。この場合には、仮想通貨について詳しい税理士か否かは面談以前に相当程度明らかでしょう。自分の取り引き形態との適合性(開設している取引所とアプリやWebサービスがカバーしている範囲との合致程度など)をチェックします。

2.適合性の高いアプリやサービスに登録し、税理士のサポートも同時に申し込みます。

 方法1、方法2のどちらでも良いので、仮想通貨に関する確定申告を行うことのできる税理士をまずは探してください。

 なお、2018年に行う確定申告が「仮想通貨確定申告元年」ですので、今後その運用がかわる、立法的な手当てがなされるなどの事態も生じえます。税理士に確定申告の他、会計や税務にかかわる事項を依頼していた場合、こういった情報も迅速に入手することができ、自身の取り引き方法・取り引き形態にも反映できます。仮想通貨の取り引きには、絶対に税理士のアドバイスと協力が必要だと考えます。

タックスプランニング

 8月タックスアンサーが出され、情報第4号が出された時点で、仮想通貨投資を行っていた多くの方が、驚き、落胆し、慌てたのではないかと思います。仮想通貨の税務については、株式やFXなどのような立法的な手当てが未だなされていないため、これからも同様のことがあるかも知れません。

 筆者の場合にはどうだったかというと、確かに少し落胆はしましたが、慌てることはありませんでした。

 落胆の理由は、「仮想通貨と仮想通貨間の交換」が損益の実現にあたるという解釈のため、当該類型に該当する取り引きを積極的に行うことはできないという落胆です。逆に慌てることがなかったのは、あらかじめ「どういう取り引きを行うか」について計画をしていたからです。

 仮想通貨の取り引きを始めるに際し、実は、本書の監修をお願いした税理士の浜部理恵先生に相談しました。その時点では8月タックスアンサーも情報第4号も出されていない状態でしたので、浜部先生から過去のFXの例なども考慮しつつ、次のようなアドバイスを頂いていたからです。

浜部先生のアドバイス

1.仮想通貨を購入するのは良いですが、「法定通貨に換える」のは、可能なかぎり、控えてください。法定通貨に換えることが必要な場合には、納税額を考慮のうえ、当該期中の適切な時期に行うのが良いでしょう。立法化がなされるとしても、FXの例をみるようにかなりの期間を要します。

2.「仮想通貨で仮想通貨を購入する」のも、含み益の現実化と解釈される可能性が高いです。通達、立法等で明らかになるまで、これも課税対象になるという前提で取り引きをされるのが良いでしょう。

立案した取り引き方針

 以上を前提に、どのような取り引きを行うかを考え、次のような方針をたてました。

1.価格変動を起因とした、法定通貨への交換は一度のみ行う(きちんと交換され、出金ができるかを確認するため)。

2.「仮想通貨で仮想通貨を購入する」のは、原則として、ICO(Initial Coin Offering)[*1]に参加する場合と、取引所内で長期保有を目的として購入する優良なアルトコインに限定する(最近は、いわゆる草コインも少しは買っていますが)。

3.ビットコイン、イーサリアム、リップルなどの通貨は損切りもしない(安値で買い戻す際に仮想通貨を用いるとそれも課税の対象となるため)。その他のアルトコインについては、躊躇なく損切りも行い、ビットコインやイーサリアムに戻す。

 全ての取り引きを方針通りにできているわけではないのですが、概ね方針通りに取り引きを行うことで、法制度が変更される、新たな通達等がでるなどの場合も慌てずに対応できます。

 将来の課税所得の発生についての計画を立てる 「タックスプランニング」 は、税理士のアドバイスを得てあらかじめ行っておくべきです。特に仮想通貨の取り引きについては必要不可欠です。深く考えずやみくもに取り引きを行うと、仮想通貨そのものによる納税が認められていない以上、納税のために仮想通貨を売却することが必要になります。この売却により、今度は翌年の納税額が膨らみます。その結果、最悪の場合は翌年に納税ができず、破産に至ることもあります。

 タックスプランニングはたいへん重要なのです。

[*1]……【ICO】ICOとは、Initial Coin Offeringの略称で、新規仮想通貨公開を意味します。もともとは、IPO(Initial Public Offering。新規株式公開株)などと同様、取引所での新規仮想通貨取引開始を称することを示し、それ以前の取り引きをクラウドセール、プレセール、トークンセールなどと区別して使われていましたが、現在はこれらと同じ意味でつかわれる用語となっています。仮想通貨が取引所で取り引きを行われる以前に投資を募る方法として用いられ、オンライン上で多くの人から資金を募るクラウドファンディングなどに似た仕組みとなっています。

書誌情報

タイトル:今年の申告で将来が決まる! 仮想通貨の税務対策~2018年3月確定申告対応版~
著者:鹿 剛
小売希望価格:電子書籍版1000円(税別)/印刷書籍版1500円(税別)
電子書籍版フォーマット:EPUB3/Kindle Format8
印刷書籍版仕様:A5判/カラー/本文94ページ
ISBN:978-4-844398189
発行:株式会社インプレスR&D
概要:本書はビットコインなどの仮想通貨を確定申告でどう取り扱うか、税務当局の最新の見解をもとに専門の税理士が監修した日本初のガイドブックです。取得価額の決め方や法人と個人のメリット/デメリットなどについて、タックスアンサーの例示を筆者が丁寧に解説。今年の申告内容で将来の課税内容が大きく変わる可能性がある2018年3月(2017年分)の確定申告にあわせて緊急出版いたします。また、「INTERNET Watch」上でスタートする当連載コーナーとも連動。ウェブと書籍の双方で情報を活用できます。

鹿 剛

鹿剛事務所代表。東芝、Sun Microsystems(現Oracle)を経て、ソニー入社。アジア、欧州での法務統括職を経て、2001年よりSony Card Europeのマネージングダイレクター。その間、複数国にまたがるオペレーションを法務的な視点、国際税務的な視点から分析し、各国オペレーションの構築に従事。2011年より株式会社ケアネットの取締役、上席執行役員等を歴任。現在、上場済み仮想通貨アーキテクチャの拡充に携わるほか、取引所、マイニングファームの設立、新規ICO準備などに従事。デジタル通貨アカデミーを運営。そのほか上場支援・海外進出などのコンサルティングを行っている。