iNTERNET magazine Reboot

緊急連載! 仮想通貨の申告で破産しないための仮想通貨・確定申告ガイド Chapter4

仮想通貨「ガチホ」以外は申告が必要? 課税対象となる取り引きとは

2018年3月は、税務当局による仮想通貨の税務上の取り扱い決定後、初めての確定申告シーズンとなる。株式会社インプレスR&Dでは、日本初の仮想通貨税務対策ガイド『今年の申告で将来が決まる! 仮想通貨の税務対策』(鹿剛著)を緊急出版する。この連載では、同書の内容を全5回にわたり、申告期間中に集中掲載。来年以降に向けた情報収集にも役立てていただきたい。(NextPublishing編集長・山城 敬)

『今年の申告で将来が決まる! 仮想通貨の税務対策』目次/当連載コーナーでの掲載予定
Chapter1仮想通貨の税務 その理解と対策の必要性【2月27日掲載】
仮想通貨にはなぜ税務対策が必要なのか
国税庁の仮想通貨に関する見解 “8月タックスアンサー”と”情報4号”
仮想通貨とは?
所得の区分と課税
今年確定申告することが重要!―これからの投資のために―
Chapter2Q&A Part.1 個人で仮想通貨を持つ場合【3月1日掲載】
Q1:個人と法人ではどちらで仮想通貨の取り引きを行うのが良いですか?
Q2:どのような属性の投資家が仮想通貨を行った方が良いのでしょうか。
Q3:自己の名義の他、子供の名義でも取引所のアカウントを開設し、取り引きを行うことは意味があるでしょうか?
Q4:今年から、シンガポールに住むことになりました。この場合、今までの取り引きについての納税はどうなるでしょうか?また、これからの取り引きについてはどうなりますか?
Chapter3Q&A Part.2 法人で仮想通貨を持つ場合【3月8日掲載】
Q5:法人で所有する注意点を教えてください
Q6:個人から法人へ切り替える際の注意点を教えてください
Q7:個人から法人へ切り替える際のメリット・デメリットを教えてください
Q8:海外で法人を設立し、仮想通貨を購入した場合の取り扱いはどのようになりますか?
Q9:仮想通貨の利益は事業所得になりますか?
Chapter4Q&A Part.3 課税対象となる取り引きとは【3月6日掲載】※この記事
Q10:利益確定をしていなければ、申告の必要はないのでしょうか?
Q11:仮装想通貨の売却とは、どのような行為をいうのでしょうか? 仮想通貨の売却、仮想通貨での商品の購入、仮想通貨と仮想通貨の交換の場合はこれに該当するのでしょうか?
Q12:仮想通貨を追加で購入しましたが、取得価額はどのように計算すればよいですか?
Q13:仮想通貨が分裂(分岐)した場合はどうするべきですか?
Q14:仮想通貨に関する所得の所得区分を教えて下さい
Chapter5仮想通貨取り引きの申告には、税理士の協力を! タックスプランニングの重要性を認識しよう【3月13日掲載】
仮想通貨の確定申告には税理士が絶対に必要
税理士の中でも選別が必要です(しかし税理士もクライアントを選別します)

Chapter4:Q&A Part.3 課税対象となる取り引きとは

ここでは、情報第4号に掲げられている各ケースに解説を加えていく形で、課税対象となる仮想通貨取り引きに関する税務について説明します。

Q10:利益確定していなければ申告の必要はないのでしょうか?

A10:単純に保持し続けている「ガチホ」状態以外は申告が必要

 以前より、また8月タックスアンサーが出た後も、利益確定の意味をめぐってはさまざまな議論がありました。そして情報第4号により、ようやくその意味が概ね確定しました。

 すなわち、取得した仮想通貨を法定通貨に交換する、物品やサービスの購入に使用する、他の仮想通貨と交換する、などを行うことなく仮想通貨の取得後に単純に保持し続けているような状態(いわゆる、「ガチホ」といわれる状態)以外は、損益を確定する行為と解釈されます。その場合、当該仮想通貨の取得時の日本円での価格と損益確定にあたる行為の時点での価格が損益となります。

 利益確定をした結果、(1)主たる給与以外の給与の収入金額(これがある場合)ならびに(2)仮想通貨の取り引き結果を含め給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超えるに至った場合には、確定申告が必要になります。

大部分の給与所得者の方は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますから、確定申告の必要はありません
しかし、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人は、原則として確定申告をしなければなりません。
1.給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2.1か所から給与の支払いを受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
3.2か所以上から給与の支払いを受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人

タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人[平成29年4月1日現在法令等]

Q11:仮装想通貨の売却とは、どのような行為をいうのでしょうか? 仮想通貨の売却、仮想通貨での商品の購入、仮想通貨と仮想通貨の交換の場合はこれに該当するのでしょうか?

A11:すべての場合が「利益確定」となるので注意が必要

まず、情報第4号に記載されているケースを紹介します。

1.仮想通貨の売却

問1  保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した際の所得の計算方法を教えてください。

(例)3月9日2,000,000円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。5月20日に0.2ビットコイン(支払手数料を含む。)を110,000円で売却した。

答1  保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおり、10,000円です。
110,000円-(2,000,000円÷4BTC)×0.2BTC=10,000円
【売却価額】-【1ビットコイン当たりの取得価額】×【支払いビットコイン】=【所得金額】

2.仮想通貨での商品の購入

問2  仮想通貨での商品の購入問商品を購入する際に、保有する仮想通貨で決済した場合の所得の計算の方法を教えてください。

(例)3月9日2,000,000円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。9月28日に155,000円の商品購入に0.3ビットコイン(支払手数料を含む。)を支払った。

答2  保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおり、5,000円です。
155,000円-(2,000,000,000円÷4BTC)×0.3BTC=5,000円
【商品価額】-【1ビットコイン当たりの取得価額】×【支払いビットコイン】=【所得金額】
※上記の商品価額とは、日本円で支払う場合の支払額の総額(消費税込み)をいいます。

3.仮想通貨と仮想通貨の交換

問3  保有する仮想通貨を使用して他の仮想通貨を購入する場合(仮想通貨と仮想通貨の交換を行った場合)の所得の計算方法を教えてください。

(例)3月9日2,000,000円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。11月2日に他の仮想通貨購入(決済時点における他の仮想通貨の時価600,000円)の決済に1ビットコイン(支払手数料を含む。)を使用した。

答3  保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が、所得金額となります。

上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおり、100,000円です。
600,000円-(2,000,000円÷4BTC)×1BTC=100,000円
【他の仮想通貨の時価(購入価額)】-【1ビットコイン当たりの取得価額】×【支払いビットコイン】=【所得金額】

※上記の購入価額とは、他の仮想通貨を購入する際に支払う仮想通貨の総額を日本円に換算した金額をいいます[*1]

 問1から問3まで、いずれのケースでも3月9日に取得したビットコインを使用しており、その取得価額は、500,000円(=2,000,000円÷4BTC)です。

 問1では、0.2BTCを110,000円で売却、問2では、9月28日に155,000円の商品購入のために0.3ビットコインを使用し、問3では、11月2日に他の仮想通貨(時価600,000円)購入の決済に1ビットコイン(支払手数料を含む。)を使用しています。

 ここで、共通して言えるのは、法定通貨(日本円)に換えること、商品に換えること、他の仮想通貨に換えること、いかなる場合でも、他のもの(法定通貨、仮想通貨、物品、サービスなど)に換えることは、利益確定として課税されるということです。

 ビックカメラ、ヤマダ電機、にくがとう(ビットコインが使える焼き肉店として有名です)などで、ビットコインを使用した場合には、きちんと領収書をもらい、保管してください。

[*1]……【仮想通貨の取引に関する利益は譲渡所得?】「仮想通貨の取引に関する利益は『譲渡所得』なのではないか?」という異議を唱えている税理士の方がいます。高橋創(たかはしはじめ)税理士です(「ASCII.jp」2018年2月9日付記事)。筆者も、個人的には、譲渡所得という解釈が正しいのではないかと思います。譲渡所得は雑所得と違い、損失が出たときは原則として他の所得と通算することができる点が異なります。「利益が出ているときは譲渡所得であれ雑所得であれ結果は変わらないので、あまり目くじらを立てるところではないかもしれませんけど」とされていることにも同意見ですが、法律の解釈としてはスッキリしないなと思っています。

Q12:仮想通貨を追加で購入しましたが、取得価額はどのように計算すればよいですか?

A12:移動平均法と総平均法で損益計算が異なり、一度選ぶと変えられないので注意

 今までのケースでは仮想通貨を1回のみ取得して、売却し、使用し、または他の仮想通貨に交換するというケースでしたが、実際には複数回、それも場合によっては数百回以上も売買しているかたもいるはずです。その場合の取り扱いについて、情報第4号に記載されているケースを通して見てみましょう。

4.仮想通貨の取得価格

問4  仮想通貨を追加で購入しましたが、取得価額はどのように計算すればよいですか。

(1年間の仮想通貨の取り引き例)
●3月9日
2,000,000円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。
●5月20日
0.2ビットコイン(支払手数料を含む。)を110,000円で売却した。
●9月28日
155,000円の商品購入に0.3ビットコイン(支払手数料を含む。)を支払った。
●11月2日
他の仮想通貨購入(決済時点における他の仮想通貨の時価600,000円)の決済に1ビットコイン(支払手数料を含む。)を支払った。
●11月30日
1,600,000円(支払手数料を含む。)で2ビットコインを購入した。

答4  同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の当該仮想通貨の取得価額の算定方法としては、移動平均法を用いるのが相当です(ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えありません。)。

①移動平均法を用いた場合の1ビットコイン当たりの取得価額
上記(例)の場合の1ビットコイン当たりの取得価額は、次の計算式のとおり3月9日時点で500,000円、11月30日時点で633,334円です。

○3月9日に取得した分の1ビットコイン当たりの取得価額
2,000,000円÷4BTC=500,000円/BTC
~3月10日から11月30日までの間に1.5BTCを売却又は使用~
○11月30日の購入直前において保有しているビットコインの簿価
500,000円×(4BTC-1.5BTC)=1,250,000円
【この時点での1ビットコイン当たりの取得価額】×【この時点で保有しているビットコイン】
~11月30日に2BTCを購入~
○11月30日の購入直後における1ビットコイン当たりの取得価額
(1,250,000円+1,600,000円)÷(2.5BTC+2BTC)=633,334円
【この時点での保有しているビットコインの簿価の総額】÷【この時点で保有しているビットコイン】
※取得価額の計算上発生する1円未満の端数は、切り上げして差し支えありません。

②総平均法を用いた場合の1ビットコイン当たりの取得価額
上記(例)の場合の1ビットコイン当たりの取得価額は、次の計算式のとおり600,000円です。

(2,000,000円+1,600,000円)÷(4BTC+2BTC)=600,000円/BTC
【1年間に取得したビットコインの取得価額の総額】÷【1年間に取得したビットコイン】

 移動平均法と総平均法の計算方法については理解できたでしょうか。では、実際に移動平均法と総平均法で、次の取り引き行為の損益がどのように変わってくるのかを見てみます。総平均法の場合、12月31日が終了するまで各取り引き行為の損益が確定できないため、11月30日以降はビットコインを購入しなかったと仮定します。

移動平均法と総平均法の比較

1ビットコイン当たりの取得価額
移動平均法を用いた場合:11月29日時点まで500,000円、11月30日時点で633,334円
総平均法を用いた場合:600,000円

○5月20日
〈0.2ビットコイン(支払手数料を含む。)を110,000円で売却した。〉
移動平均法:10,000円(問1のとおり)
総平均法:-10,000円(110,000円-(600,000円×0.2)=-10,000円)

○9月28日
〈155,000円の商品購入に0.3ビットコイン(支払手数料を含む。)を支払った。〉
移動平均法:5,000円(問1のとおり)
総平均法:-25,000円(155,000円-(600,000円×0.3)=-25,000円)

○11月2日
〈他の仮想通貨購入(決済時点における他の仮想通貨の時価600,000円)の決済に1ビットコイン(支払手数料を含む。)を支払った。〉
移動平均法:100,000円(問1のとおり)
総平均法:0円(600,000円-600,000円=0円)

○12月2日
〈他の仮想通貨購入(決済時点における他の仮想通貨の時価620,000円)の決済に1ビットコイン(支払手数料を含む。)を支払った。〉
移動平均法:-13,334円(620,000円-633,334円=-13,334円)
総平均法:20,000円(620,000円-600,000円=20,000円)

 このように、移動平均法と総平均法を用いる場合では損益が異なります。一般に、価格が上昇する基調にある場合は総平均法を用いた方が納税額が低くなる傾向がありますが、あくまで一般論であり取り引き形態により異なる結果となります。まず取り引き履歴を整理して税額を計算し、どちらの方式が自分の取り引きに合致しているかを決めることが必要です。なお一旦方式を決めたあとは変更できず、次年以降も同じ方法で計算する必要があります。

Q13:仮想通貨が分裂(分岐)した場合はどうするべきですか?

A13:ハードフォークでの取得価額は0円になる

 2017年8月1日に仮想通貨の分裂(分岐)(以下、ハードフォークといいます)によりビットコインキャッシュが誕生しました。そのように誕生した仮想通貨については、売却または使用した時点において所得が生じることとなります。

 株式分割においては、有価証券の分割により取得した場合の扱いは、「零(ゼロ)」です。(所得税法施行令109条第4号)。

(有価証券の取得価額)第百九条 第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定による有価証券の評価額の計算の基礎となる有価証券の取得価額は、別段の定めがあるものを除き、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

四 発行法人に対し新たな払込み又は給付を要しないで取得した当該発行法人の株式(出資及び投資口(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項に規定する投資口をいう。次条第一項において同じ。)を含む。以下この目において同じ。)又は新株予約権のうち、当該発行法人の株主等として与えられる場合(当該発行法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)の当該株式又は新株予約権 零

所得税法施工令より

〈情報第4号に記載のケース〉

問5  仮想通貨の分裂(分岐)に伴い、新たに誕生した仮想通貨を取得しましたが、この取得により、確定申告の対象となる所得は生じますか。

答5  所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価を基にして所得金額を計算します。
 しかしながら、ご質問の仮想通貨の分裂(分岐)に伴い取得した新たな仮想通貨については、分裂(分岐)時点において取り引き相場が存しておらず、同時点においては価値を有していなかったと考えられます。
 したがって、その取得時点では所得が生じず、その新たな仮想通貨を売却又は使用した時点において所得が生じることとなります。
 なお、その場合の取得価額は0円となります。

 取引所から付与される場合、また環境が整い、ウォレットから取り出せるようになった後に自ら取り出す場合などがありますが、どちらもハードフォークが生じた時点で付与されていたと考えるべきでしょう。そうでないと、偶然の事情により、課税の基礎となる額が零だったり、高額になったり、まったく異なる奇妙な結果となります。今回の情報第4号はそういうことを明確にしたと理解すべきであろうと思います。

 では、ハードフォークとは異なるのですが、類似した形態であるエアドロップの場合には、どうでしょうか?

 エアドロップとは、仮想通貨開発者やその運営を担う財団等が当該仮想通貨(トークン)の認知度を上げるため、またはその開発の参考やベースとした他の仮想通貨への敬意や感謝を示すなどの目的で、当該仮想通貨(トークン)を無料で配ることをいいます。

 ByteballやStellerなどをエアドロップにより受け取った場合には、受け取った時点において、その時点の価格で取得したものとして所得税の課税対象になることで良いでしょう。「良い」というのは、ByteballやStellerなどの場合には、自らエアドロップを受けるための登録などの手続きを行ったうえで受領するからです。この場合には、受領者にエアドロップを受ける意思が認められる(民法第549条)からです。エアドロップの法的な構成は原則として贈与、付与主体は財団(そうでない場合にも財団などが設定したプログラムによるもの)などゆえ、法人からの贈与[*2]と位置付けるべきでしょう[*3]

 所得税法59条において、法人からの贈与により取得した資産については、その時の時価により取得したものとして扱われ、課税対象となります(法人からの贈与は贈与税ではなく所得税が課税されます)。従って、時価が取得価額となり、更に、売却、使用、他の仮想通貨に交換した際には、売却金額との差額が損益として認識され、課税されることになります(この構造は後述する「仮想通貨のマイニングと同じような構造になる」と記憶していただくのが良いと思います)。

 所得区分としては、エアドロップによる仮想通貨の取得時においては、一時所得または雑所得(事業所得)のいずれかに分類されます。一時所得については、法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。) が含まれます。以上から、継続的に受けるものではないものは、雑所得(事業所得)になります。

 つまり、Stellerなどのエアドロップは一時所得、NEOのGasなどの継続的になされるエアドロップは雑所得(事業所得)になるものと思われます。Byteballの場合は、どうでしょうか? 10回ほど実施されていますので、NEOのGas同様、雑所得(事業所得)とするのが良いでしょう。

[*2]……【贈与】民法第549条(贈与):贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

[*3]……(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)第五九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。/一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

Q14:仮想通貨に関する所得の所得区分を教えて下さい

A14:マイニングによる所得と合わせて説明します

 ここでは、どのような基準で事業所得になり、雑取得になるのかが主な論点となりますが、この点は、「仮想通貨のマイニング」の説明と併せて取り扱いたいと思います。

〈情報第4号に記載のケース〉

問6  仮想通貨に関する所得の所得区分問タックスアンサーによると、ビットコインを使用することにより生じる損益(日本円又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、原則として、雑所得に区分されるとされていますが、雑所得以外に区分される場合には、どのような場合がありますか。

答6  ビットコインをはじめとする仮想通貨を使用することによる損益は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されることとしていますが、例えば、事業所得者が、事業用資産としてビットコインを保有し、決済手段として使用している場合、その使用により生じた損益については、事業に付随して生じた所得と考えられますので、その所得区分は事業所得となります。
 このほか、例えば、その収入によって生計を立てていることが客観的に明らかであるなど、その仮想通貨取り引きが事業として行われていると認められる場合にも、その所得区分は事業所得となります。
※仮想通貨を使用することにより利益が生じた場合の課税関係(所得区分)については、タックスアンサーにも記載しております。

〈情報第4号に記載のケース〉

問9  仮想通貨をマイニングにより取得した際の所得の計算方法を教えてください。

答9  いわゆる「マイニング」(採掘)などにより仮想通貨を取得した場合、その所得は、事業所得又は雑所得の対象となります。
 この場合の所得金額は、収入金額(マイニング等により取得した仮想通貨の取得時点での時価)から、必要経費(マイニング等に要した費用)を差し引いて計算します。
 なお、マイニング等により取得した仮想通貨を売却又は使用した場合の所得計算における取得価額は、仮想通貨をマイニング等により取得した時点での時価となります。

所得区分

 所得は、その性格により区分されますので、仮想通貨に関係する損益のすべてが雑所得とはなるわけではありません。

 情報第4号その冒頭で、「ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却または使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分」されるとし、その末尾では、「マイニング(採掘)などにより仮想通貨を取得した場合、その所得は、事業所得又は雑所得の対象」としています。

 マイニングを事業的規模で行うような場合は、事業所得となり、仮想通貨の売買により生じる所得であっても、取引所のような場合には、事業所得に分類されることとなります。

 しかしながら、マイニングによる所得が事業所得に該当するかどうかは、必ずしも明確ではありません。というのは、事業所得とは何かについては、所得税法も、所得税法施行令も例示列挙しているだけで、定義を行っていないためです。

 第3章のQ9で解説したように、判例では事業所得とは①自己の計算と危険において独立して営まれ②営利性、有償性を有し、かつ③反復継続して遂行する意思と④社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得(最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁参照)とされています。

 マイニングファームなどを自ら設けている、マイニングを相当規模で行い、生計を立てているなどの場合には、事業所得として良いでしょう。

 なお、判例の定義によって区分することが不明な場合には、管轄税務署に相談されるのが良いと思います。なお、雑所得として区分するのであれば、税務署の問題は生じないと思います。事業所得よりも雑所得に区分する方が不利であること先述のとおりであるがゆえですが、以降も事業規模などに変更がない場合には、雑所得で申告する必要があるかと思います。

収入の計上

 収入の計上時期については、その収入が「実現」した時点になり、①単独でマイニングをする場合にはマイニングに成功した時点、②マイニングプールに接続し、貢献割合に応じて報酬を受け取る場合には分配額が確定した時点、③その他契約に基づいて、マイニング報酬を受け取る場合には、契約により、受け取る報酬が確定する時点となります。

 なお、マイニング報酬を再投資し、新たなマイニングマシンの割り当てや貢献割合の増加を図ることがあるかと思います。この場合も、上記の①から③の原則に従うことになります。手元に現金化できる仮想通貨がないにもかかわらず、納税をすることを避けるには、契約により報酬の確定が実際に仮想通貨を受け取る時点まで、また一定額に達するまで払い出しができないなどの場合には、当該一定額に達するまでは仮想通貨の所有権や持ち分の移転が生じないなど、契約による合意などが必要です。

 マイニング報酬に関する収入の計上金額については、報酬の計上がなされる時点の当該仮想通貨の時価を計上します。具体的には、取引所のレートに基づいて円換算した金額となり、この点は海外の取引所で仮想通貨を購入した場合に使用しているレートと同じレートを使用すべきでしょう。

※次の章は、Chapter5「仮想通貨取り引きの申告には、税理士の協力を! タックスプランニングの重要性を認識しよう」です。

書誌情報

タイトル:今年の申告で将来が決まる! 仮想通貨の税務対策~2018年3月確定申告対応版~
著者:鹿 剛
小売希望価格:電子書籍版1000円(税別)/印刷書籍版1500円(税別)
電子書籍版フォーマット:EPUB3/Kindle Format8
印刷書籍版仕様:A5判/カラー/本文94ページ
ISBN:978-4-844398189
発行:株式会社インプレスR&D
概要:本書はビットコインなどの仮想通貨を確定申告でどう取り扱うか、税務当局の最新の見解をもとに専門の税理士が監修した日本初のガイドブックです。取得価額の決め方や法人と個人のメリット/デメリットなどについて、タックスアンサーの例示を筆者が丁寧に解説。今年の申告内容で将来の課税内容が大きく変わる可能性がある2018年3月(2017年分)の確定申告にあわせて緊急出版いたします。また、「INTERNET Watch」上でスタートする当連載コーナーとも連動。ウェブと書籍の双方で情報を活用できます。

鹿 剛

鹿剛事務所代表。東芝、Sun Microsystems(現Oracle)を経て、ソニー入社。アジア、欧州での法務統括職を経て、2001年よりSony Card Europeのマネージングダイレクター。その間、複数国にまたがるオペレーションを法務的な視点、国際税務的な視点から分析し、各国オペレーションの構築に従事。2011年より株式会社ケアネットの取締役、上席執行役員等を歴任。現在、上場済み仮想通貨アーキテクチャの拡充に携わるほか、取引所、マイニングファームの設立、新規ICO準備などに従事。デジタル通貨アカデミーを運営。そのほか上場支援・海外進出などのコンサルティングを行っている。