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ヤフー新社屋公開、ジグザグに配置された机や社外の人でも利用できるスペースなど

 ヤフー株式会社は27日、同社の新社屋「東京ガーデンテラス紀尾井町」(東京都千代田区)を報道関係者向けに公開した。

 ヤフーは同ビルの5~24階を利用。社員が専用の机を持たない「フリーアドレス」を導入するほか、社外の人でも利用できる「コワーキングスペース」も開設。従業員同士や外部とのコミュニケーションを増やすための工夫が施されている。

 ヤフー株式会社副社長執行役員最高執行責任者の川邊健太郎氏は、「これまでは限られた人が利用していたPCのインターネット時代から誰でも使われるスマートフォン、IoTのインターネットの時代になってきた。それにも関わらず、相変わらずPCの前で作業が行われている」と従来のビジネスパーソンの働き方について指摘。「まずは、PC時代の働き方からスマートフォン時代に合った働き方へリズムを変えるべきだ」と述べ、新オフィスでは特定の場所に囚われない働き方を提案していく。

ジグザグに机を配置した執務エリア

 執務エリアの机はジグザグ状に配置されているのが特徴。オフィス内をわざと歩きにくくすることで、人と接する機会を増やすための狙いがある。実際に旧オフィスで試験的に実施したところ、他の従業員との接点が増え、コミュニケーション量が増えたそうだ。

 また、少人数のミーティングからセミナーを行えるフリースペースのほか、1人で集中して業務を行うための「集中ブース」も設けられている。

フリースペース
紫の椅子が設置されている場所が「集中ブース」
ロッカーは各従業員ごとに割り当てられている

食堂、カフェ、コンビニが集結

 社員食堂「BASE」、社内カフェ「CAMP」は11、17階に設置。BASEでは定食2種類、カロリーを655cal以内に抑えた「UNDER655」メニューなどをラインアップ。業績連動型を採用しており、前四半期の全社利益目標を達成することで、BASEやCAMP、社外でも使えるTポイントを付与する。

 CAMPは「FACTORY(285席)」「TINY GARDEN(140席)」「CASUAL DINING(126席)」「SIMPLE MODERN(140席)」「BOOK&DIY(107席)」の5種類のスペースを設置。落ち着いて食事を取るスペースや、モニター、ホワイトボードを設置された打ち合わせ向けに利用できるスペースもある。ここではコーヒーやスムージー、パンを購入できる。

社内食堂「BASE11」
社内カフェ「CAMP11」
食器の裏についたタグをセンサーで読み取ると商品名やカロリーが表示されるようだ
広さは3154平方メートルで座席数は800。同フロアにはコンビニエンスストアも併設されている

社外の人でも利用可能なコワーキングスペース

 コワーキングスペース「LODGE(ロッジ)」は従業員を含め、社外の人でも利用できるキッチン、スタジオ、社員食堂、カフェを併設。テーブルや椅子は可動式になっており、利用シーンに合わせて自由にレイアウトを変更することができる。

 また、最先端の映像表現やユーザーインターフェイスを研究・開発する「先端技術応用室」も設けられている。

受付には「Pepper」とコミュニケーションロボット「BOCCO」が
「LODGE Kitchen(ロッジ・キッチン)」には調理器具や調味料、食器を完備
「LODGE Sudio(ロッジ・スタジオ)」では、「GYAO」などが動画収録や生放送を行う。従業員以外も利用可能
椅子やテーブルは可動式
「先端技術応用室」
社員食堂「BASE17」とカフェ「CAFE17」も併設。従業員以外も利用できる

ビルの窓口となる来客エリア

 来客エリアは、同社の持つサービスから、「買う」「調べる」「知る」「集まる」「暮らす」「楽しむ」の6つのキーワードをコンセプトに表現されたスペースを用意。ここでは、同社以外に入居するグループ会社の受付も兼ねている。

来客エリアの床はあえて未完成の状態。インターネット上のサービスのように、一度公開したものをアップデートし、より良いものにするという文化を表現したという

社員の通勤環境、コンディションをより快適なものへ

 オフィス移転に伴い、「新幹線通勤」の導入と役職「チーフ・コンディショニング・オフィサー(CCO)」を新設。

 新幹線通勤は、通勤時間が2時間以上かかる従業員を対象に、新幹線代を含む通勤交通費を上限15万円まで会社が負担。住む場所の選択肢を増やすことで、育児や介護など各家庭の事情を抱える従業員にとって、より生活に合った働き方が可能になるとしている。

 ヤフー株式会社上級執行役員統括本部長の本間浩輔氏によると、育児や介護によりヤフーを退職する社員が少しずつ増えるようになってきたという。「通勤環境はコンディショニングを高める上でも重要。働く人の通勤をできるだけ快適なものにしたいという思いがある」と語った。

 CCOは、同社代表取締役社長執行役員最高経営責任者の宮坂学氏が就任。健康増進の取り組みを推進し、従業員に付与しているスマートフォンから取得できる「歩数」「歩行距離」「上った階数」などのデータを活用し、運動量が多い従業員に対しては、社員食堂「BASE」を利用する際に通常よりも多くTポイントを付与することを検討している。また、社員食堂「BASE」で注文したメニューやカロリー、栄養素の情報を従業員向けの専用サイトで閲覧できるようにし、希望する従業員には、連携する医療法人の医師や、管理栄養士を通じて、食事や運動、睡眠の生活指導を行う「健康増進プログラム」を提供する予定としている。

 なお、各メディアでも報道されている「週休3日制度」の導入時期については未定と回答。実施する場合は3連休ではなく、各々の好きなタイミングで休みを取る形になる。

 川邊氏は「ヤフーはデータドリブン企業に生まれ変わりたい。データドリブン企業で生産性を上げるには、AIや機械学習に単純な作業は任せ、人間は人間にしかできない創造性豊かな仕事を行う。これをヤフーは日本で最初にできるポテンシャルを持っている」としており、その上で週休3日の実現を提案する。週に3日休むこと自体がゴールではなく、労働生産性を上げ、成果に応じて給料を支払う働き方が重要と捉えているようだ。

ヤフー株式会社副社長執行役員最高執行責任者川邊健太郎氏
ヤフー株式会社上級執行役員統括本部長の本間浩輔氏
なお、4月にインターネット上でも公開された“絵巻物”(インターネットサービス20年の歴史1300項目以上を記録)は役員フロアに設置。社外の人は閲覧できない状態になっている