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「日本のユーザーがTwitterの使い方を発明している」Twitter Japanが新オフィスで事業戦略パネルディスカッション

 Twitter Japan株式会社は3日、同社が8月18日に東京都中央区に開設した新オフィスで、事業戦略を説明するパネルディスカッションを開催した。パネルディスカッションには同社代表取締役の笹本裕氏ら幹部4名が登壇し、日本におけるTwitterのこれまでの事業成果や今後の方針などを語った。

(左から)Twitter Japan株式会社代表取締役の笹本裕氏、執行役員の王子田克樹氏、味澤将宏氏、牧野友衛氏

日本と世界におけるTwitterの利用状況

 パネルディスカッションの前に、Twitterの共同創業者でCEOであるジャック・ドーシー氏のビデオメッセージが紹介された。ドーシー氏は「日本のモバイル利用は(世界でも)トップクラス。日本独自のTwitterの利用が今日までの成長を導いてくれた」と述べ、東日本大震災時にTwitterが利用されたことや、日本が1秒間のツイート数の世界記録を持っていることを例に、「日本におけるTwitterの活用は、世界を魅了し続けている」とした。さらに、「これからもTwitterが日本でより成長できるように取り組んでいく」とし、取り組みの1つとして、7月に発表されたTwitter Japanへの開発部門の設置についてアピールした。

 続いて行われたパネルディスカッションでは、Twitter Japan執行役員/事業成長戦略本部長の牧野友衛氏が日本のTwitter利用の独自性について解説した。牧野氏は「日本では、電車が遅延したり、地震が起きたときにTwitterを見る。さらに、お店の前に行列ができているときも、Twitterを検索すれば情報が分かる。それほどまでにTwitterが普及しているのは日本だけだ」と語った。また、Twitterを検索することが多いのも日本の特徴であるとし、「日本のユーザーがTwitterの使い方を発明している」と述べた。

 また、Twitter Japan執行役員/日本・東アジア地域事業開発担当本部長の味澤将宏氏は、Twitterを取り巻く“グローバルオーディエンス”の最新状況について説明した。グローバルオーディエンスとは、Twitterにログインしているユーザーだけでなく、何らかの形でツイートを目にする機会がある人を含めた“観衆”。TwitterとのパートナーシップによりYahoo! JAPANが提供している「リアルタイム検索」などがその代表例であり、このようなTwitter外のサービスの利用が「ものすごい伸びている」(味澤氏)といい、Twitter外でのツイート表示回数は四半期で1850億回を超えるとする。

 さらに、Twitter外のサービスからログアウト状態でTwitterにアクセスする“ログアウト”の人数も増えており、Twitterの月間利用者数が3億1600万人であるのに対し、ログアウトの月間アクセス人数は5億人を超えるという。味澤氏は「さらにログアウトやTwitter外の利用を増やすために、パートナーシップを広げていく」とし、「日本でのTwitterの使われ方に合わせて、日本独自のパートナーシップを展開していきたい」と語った。

 味澤氏はこのほか、昨年10月にローンチしたアプリ開発者向けSDK「Fabric」にも言及。Fabricは、クラッシュレポートの送信や電話番号でのログイン、アプリへの広告掲載などを可能にするSDK。味澤氏は全世界で10億台のデバイスにFabricを組み込んだアプリがインストールされているとアピールした。

Twitter共同創業者でCEOのジャック・ドーシー氏からビデオメッセージ
Twitter Japan株式会社執行役員/事業成長戦略本部長の牧野友衛氏
Twitter Japan株式会社執行役員/日本・東アジア地域事業開発担当本部長の味澤将宏氏
Twitter外やログアウトからの利用も含めたTwitterの“グローバルオーディエンス”

ターゲティング広告の変遷とTwitterの今後の課題

 Twitter Japan執行役員/オンラインセールス担当の王子田克樹氏は、Twitterの収益の9割を占めるというターゲティング広告の変遷を解説。「どのユーザーにどの広告を表示するか」というターゲティングに関して、開始当初はフォロワーベースと「非常にプリミティブ(原始的)」(王子田氏)だったが、2012年秋からはユーザーの興味に応じて広告を表示する「インタレストターゲティング」が可能に。さらに2013年夏からはツイートの中身を判別して広告を表示できるようになり、「だんだんと進化してきた」と王子田氏。約1年前からはアプリのダウンロードを促す「モバイルアプリプロモーション」の提供も開始している。

 さらに王子田氏は「ROI(投資対効果)を測定するための環境を整え、広告代理店向けのツールも提供している」と取り組みを紹介。昨年11月にYahoo! JAPANと提携したことで、「中小企業にも広告を使ってもらえるようになった」とし、「今後もビジネスを広げていきたい」と語った。

 日本におけるTwitterの課題として、牧野氏が挙げたのが「(使っていない人にとって)Twitterが何であるか、が分かりづらいこと」「Twitterを使っている人は“情報を得るためのもの”だと考えているが、使っていない人は“ツイートするもの”だと思っている」といい、認識にギャップがあるとする。

 そこで、Twitterを情報入手ツールとして使ってもらうために、7月にローンチしたのが公式アプリのニュース機能であり、反響は上々だという。ニュース機能は日本で最初に提供され、現在では米国とインド、ブラジルの3カ国でテスト提供されている。牧野氏は「まだ使っていない人にもTwitterの魅力を感じてもらい、広めていきたい」と述べた。

 笹本氏は最後に「使ってもらえなければ、Twitterの存在意義はない」とし、「ライフライン、プラットフォームとして幅広く使われるように、開発面でも日本から発信していきたい」と語った。さらに「グローバルオーディエンスというTwitter経済圏が広がれば、事業収益の機会も増える」とし、「事業としては、まだまだ投資のフェーズ。Twitterの利用の機会はまだある。利用を促進して、日本でのTwitterの成長を推進していきたい」と締めくくった。

Twitter Japan株式会社執行役員/オンラインセールス担当の王子田克樹氏
Twitter Japan株式会社代表取締役の笹本裕氏

Twitter Japanの新オフィスは日本らしさを表現

 パネルディスカッションに先立ち、Twitter Japanの新オフィスのデザインについて、動画で紹介が行われた。同社担当者によると、デザインのコンセプトは「Twitter Japanらしさ」。今の東京の空気感を表現しつつ、社員同士のコミュニケーションを増やすことに重点を置いたという。さらに、モダンと伝統、都市と自然という相対するものを取り入れることで、それぞれの場所にオリジナリティを持たせている。

 オフィスの玄関口となるエレベーターホールには、杉を使用した木目調のTwitterロゴが配置されている。各国のTwitterオフィスともエレベーターホールなどにはロゴを配置しているが、木目調のデザインを採用したのは日本が初めてだという。

 各会議室には鳥の名前が付けられており、そのうち1つは椅子がすべて取り払われ、ソファーが導入されている。これは長時間のプレゼンテーションでも疲れないようにという心遣いだ。また、今回のパネルディスカッションの会場にもなった大会議室には、室内にパントリーが設置されており、飲食やケータリングも楽しめ、さまざまなイベントに対応できる空間になっている。

 大会議室の壁に配置されているのが「#LOVE WHERE YOU WORK」というアート。各国のTwitterオフィスに配置されており、ほとんどはネオサインを採用しているが、日本では印鑑を使用したアートとなっている。また、大会議室の脇にはゲームルームも用意され、Twitter Japanオリジナルのプリクラなども設置されている。

Twitter Japan新オフィスのエレベーターホール
木目調のTwitterロゴが配置されている
受付の床には木目調とコンクリートを採用
椅子の代わりにソファーが導入されている会議室
大会議室の壁には明るい絵が描かれており、黒い天井と対照的なデザインになっている
毎年、社員の記憶に残ったツイートを飾る「メモラブルツイート」
社員専用の憩いの場。「新宿御苑」「代々木公園」といった公園の名前が付けられている
社員専用の集中スペースである「ライブラリー」
壁に配置された「#LOVE WHERE YOU WORK」というアート
印鑑を並べてアルファベットを描いている
大会議室に設置されたパントリー
大会議室の脇に用意されたゲームルーム
ゲームルームにはTwitter Japanオリジナルのプリクラが設置されており、シールの背景もオリジナルになっている
受付にある衝立。3色グラデーションの「焼杉板」という伝統の素材を採用している
大会議室の天井に吊るされた「#新オフィスなう」

(鈴木 友博)