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「IoTはビジネスに活用するステージ2の局面に」ぷらっとホーム取締役
OpenBlocks IoTとMS Azureでシステム構築、Power BIでデータ視覚化
2016年10月31日 12:24
ぷらっとホーム株式会社は26日、日本マイクロソフト株式会社の協賛で、「Plat'Home IoTビジネスセミナー~MS Azure・Office 365を活用したIoTへの取り組み~」を開催した。
ぷらっとホーム取締役の竹内敬呂氏(執行役員営業部長)は、総務省発行の「情報通信白書(平成28年度版)」では、2020年に世界全体でのIoTデバイス数が300億を超えるとの予測を紹介。現在のIoTについて、IT業界のサイクルで言えば、黎明期から過度な期待を集めるピーク期を経て、幻滅期に入りかけている時期との見方を示した。そして、商業的に大成功を収めた技術「WWW」との類似性を指摘。「IoTはビジネスに活用するステージ2の局面に来ており、今後発展を遂げる」と述べた。
竹内氏は、JR東日本のSuicaや高速道路のETCシステムを例に、IoTとM2M(Machine to Machine)の違いについて、「M2Mは大規模なシステムが前提で、専用品が使用される」と述べ、さらに「完成がビジネス上のゴールに直結している」とした。一方のIoTは、「案件の規模が小さく、システムには汎用品が多く用いられており、いわばロングテールの構図が当てはまる」とし、その上で活用されるサービスを実現するための基盤として位置付けられるが、「誰もその具体的なユースケースや、ビジネスが書けない状態が続いている」との見方を示した。さらにIoTシステムの実現において必要となるセンサー、コネクティビティ、アプリのそれぞれが専門性が高いため、「1社ではカバーできず、パートナーシップが重要になる」とした。
ぷらっとホームでは15年ほど前からLinuxを搭載したマイクロサーバーを手がけているが、3年ほど前からは、IoTゲートウェイデバイス「OpenBlocks IoT」も提供している。ゲートウェイからクラウドへデータを送信してから、応答を待ってIoTデバイスへ命令を送るといった手順では遅延が大きいため、ゲートウェイ自身がある程度の処理を行う“エッジコンピューティング”が必要になる。OpenBlocks IoTは1.3GHz駆動のAtomを搭載し、データを一時的に格納するストレージが拡張されるなど、高機能化が進んでいる。
セミナーに参加したオプテックス株式会社は、温度や湿度、気圧、人感センサーやスイッチなど、多種多様なセンサーデバイスを提供している。OpenBlocks IoTは、こうした多様なIoTデバイスの各種インターフェースに、オプションボードを搭載することで対応している。セミナー当日のデモでは、928MHz帯を用い、EnOcearnプロトコルでIoTゲートウェイとの通信を行うワイヤレスロッカースイッチ「CSW-2-J」が実際に使われた。スイッチの押下を利用して発電を行うため、電源が不要なこともメリットだという。
ソラコム株式会社が提供している「SORACOM Air」は、NTTドコモのMVNOを活用して、IoT向けにコネクティビティを提供しているサービス。世界で唯一、クラウド上でバーチャルキャリアを実現しており、料金は1日10円+1MB0.2円の従量制と、非常に低価格からの導入が可能で、顧客企業は4000以上とのことだ。通信速度や回線管理、監視が可能なウェブコンソールも提供しており、既存システムともAPIによる連携が可能となっている。OpenBlocks IoTにもSIMモジュールを介して搭載することが可能だ。
IoTセンサーデバイスが収集したデータは、OpenBlocks IoTを介して、インターネットを経由し、クラウドサービス「Microsoft Azure」へと簡単に送信できる。Azure側に用意されている1秒間に数百万ものイベントやテレメトリデータを受け入れ可能な「Azure Event Hubs」を通じて取り込み、1秒間に数百万のイベントを処理可能な「Azure Stream Analystics」によりリアルタイムに処理し、「Power BI」を使って比較的簡単にデータをダッシュボードとして視覚化できる流れとなる。
企業向けのBIツールであるPower BIは、Office 365を利用しているアカウントであれば、無料で利用できる。セミナーでは、来場者が入場時に押したスイッチのデータを時刻ごとに集計し、Power BIでグラフを選んで視覚化するデモが行われた。
日本マイクロソフトの清水豊氏(デベロッパーエバンジェリズム統括本部ビジネスデベロップメントマネージャー)は、こうしたクラウド上でのデータ分析においては、「社外秘データなどが取り扱われる場合が多い」とし、米国政府からの要求でもデータを渡さなかったことも例に、「Azure ADと連携したユーザー管理により、高いセキュリティを提供している」と述べ、サーバーの運用監視などの面も、「クラウドにオフロードして、その分ビジネスに注力できる」とした。
また、Microsoft Azureの高いスケーラビリティはもちろん、「さまざまな部品を組み合わせてIoTサービスを構築できる」上、こうした機能部品は日々追加されていることや、機械学習機能である「Azure Machine Learning」の有用性についても触れた。
このほかセミナーでは、ぷらっとホームが手掛ける自治体向けの導入事例も紹介された。カメラをOpenBlocks IoTとともに各所の電柱に設置し、高齢者や子供の見守りを行う兵庫県伊丹市の事例のほか、ごみ収集車に気圧や湿度、排気ガス、PM2.5の各項目を測定できるセンサーを、加速度・GPSセンサーとともに搭載して環境測定を行う神奈川県藤沢市の事例を紹介。このように、自治体の保有するオープンデータを市民の生活に役立てる動きが加速しているという。
また、株式会社インフォキューブLAFLAが手掛ける物流倉庫や、ビル/ホテル清掃における行動解析の事例なども紹介された。インフォキューブLAFLAでは、IoTのセンサー技術を用いた行動解析に加え、高度測位や画像解析などの技術などにより、人のさまざまな行動を分析し、地図上や建築物のCADデータを組み合わせたフィールドに分かりやすく可視化する行動解析プラットフォームを提供している。
株式会社インフォキューブLAFLA取締役の田中大輔氏は、Microsoft Azureをはじめとした大規模トラフィック可能なクラウドサービスや、GPSやビーコンといったセンサーデバイスなどの技術要素が低価格化したことで、これらを組み合わせたIoT基盤を商業レベルで運用可能になったとした。