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PayPal、国内市場での今後の取り組みを紹介

 PayPalは6日、日本市場における今後の取り組みやビジネス戦略についての発表を行った。

 PayPalは、PayPalアカウントを用いて、クレジットカードにより販売元への支払いが可能なオンライン決済システムを提供している。決済時にはクレジットカード情報を販売元に提供する必要はなく、数クリックで決済が完了できる。決済自体は販売元と支払側のアカウント間で行われる仕組みだ。

 EC事業者側のウェブサイトには、HTMLのコードを貼り付けるだけでPayPalでの決済機能を追加でき、利用料金は決済1件あたり3.6%+40円の手数料のみで、初期費用は不要。手数料は、売上高に応じて、30万円以上は3.4%、100万円以上は3.2%、1000万円以上は2.9%に減額されるほか、マイクロペイメント向けには2357円以下の場合には安価になる5%+7円の手数料が用意されている。

 現在、200以上の国・地域で100通貨以上での取引に対応しており、口座についても、グローバルでは25、国内では22の通貨に対応するという。不正取引の排除や、発生時の売り手と買い手の保護が可能なリスク管理の仕組みが提供されており、10月3日に新たにPayPalのカントリーマネージャーに就任した曽根崇氏は「信頼性の高いプラットフォームを提供している」とした。

 世界全体で見れば、2016年第3四半期には、取扱高が前年同期比で25%増の9兆2500億円に成長、決済件数も24%増となっており、ユーザーアカウント数は11%増の1億9200万人に達している。2015年の取扱高は約30兆円だったが、これを大きく上回る見込みだという。

 曽根氏によれば、PayPalでは2010年に日本国内にオフィスを開設し、2012年の終わりごろから、国内間取引の事業に集中し始めたという。そして、日本国内のオンライン決済市場での今後の取り組みについて曽根氏は、中小企業やスタートアップ、訪日観光、モバイルの3つをポイントに挙げた。

 中小企業におけるマーケットの課題やトレンドを理解するため、同社ではJECCICA(ジャパンEコマースコンサルタント協会)とともに、日本の中小企業EC事業者1000社にインタビューを行い、白書として共同でリリースしている。また、スタートアップ向けのイベントなどにもスポンサーとして参加。開発者を対象とした勉強会、交流会なども開催して、APIへの理解を深めてもらうとともに、課題の理解を深めているという。

 こうした取り組みにより、家事代行のクラウドソーシングサービスを提供するANYTIMES、キャッシュバックのモバイルアプリを提供するCashB、個人間チケットプラットフォームのPeatixといったスタートアップ企業での採用が進んでいる。また、ネットショップ作成サービスであるカラーミーショップや、クラウド会計ソフトを提供するマネーフォワード、ECパッケージを提供するecbeing、中小企業向け配送物流サービス提供のOPENLOGIといった中小企業向けのパートナーシップ拡大も進んでおり、2015年から2016年にかけてのサービス利用企業の増加率は2桁に達したとのことだ。

 この1~2年でPayPalの利用を開始した企業には、DMMやPlayStation Store、huluなどが含まれるが、このほかにもNetflixやYouTube、Google Playなどでの利用も可能となっている。国内で特に伸びている分野として、デジタルコンテンツやデジタルグッズ関連を挙げ、「(同分野では)不正利用の割合が高いが、リスク管理システムが価値を提供できているため、弊社サービスと相性が良い」との見方を示した。

 そして、「どれだけの数のコンシューマーに何回使ってもらえるかが重要」とし、国内でも、年1回以上決済をしているアクティブユーザー数の伸び率が2016年に急増していることを紹介。しかし、「オンライン決済サービス市場は国内で見るとまだまだ大きくないのが現状」だという。国内では、年末に向けたキャンペーンを12月15日から提供。「今後も主にデジタルコンテンツの購入ユーザー層を中心に決済機能の提供を拡大し、利用数を増やしていきたい」と述べた。

 EC市場においては、決済手段の選択肢を追加すれば、そのまま売り上げが純増する場合がほとんどということで、「選択肢を与える上で重要な側面で、市場内での競争というよりも、マーケット全体を盛り上げていきたい」とした。

 訪日観光については、主に中国人を中心にこの2~3年で利用が増加しており、2016年は10月時点で、2015年全体の数字である2000万人をすでに超えた訪日観光客向けに、宿泊施設が利用しているブッキング(予約)エンジンとの連携に注力。2016年には新たに6社との連携を行い、それまでの2社に加えて合計8社となったことで、「自社のウェブサイトで予約を受け付けている国内宿泊施設の約8割程度にリーチできた」という。このほか、2800施設が加盟する日本旅館協会との提携なども進めている。

 モバイルについては、「国内ECのトレンドでもあり、過去1年でモバイルでのショッピング体験を充実させる最適化を進めた」とした。具体的には、サービスにサインインしてから決済を行うまでのログイン画面や決済確認、ゲスト決済画面をモバイル対応とし、支払いを実際に行うデバイスに合わせて最適化する仕組みを整えたとのこと。これによりコンバージョンレートの改善などにつなげるとした。

 2016年に提供を始めた「OneTouch」は、PayPalアカウントで購入を行う際にチェックボックスを有効にしておくと、以後180日の間は同一デバイスにおいてPayPalアカウントを用いて別サイトで商品を購入した場合にもIDやパスワードを入力しなくても済む機能となる。こうした機能によりモバイルでの決済における利便性を向上し、利用頻度の向上を目指すとした。

 PayPalは2015年7月に、eBayから分社して単独企業となり、以降は「eBayグループだったころには競合と見なされていた企業とも、制約のない中でフラットな議論ができるようになった」という。こうした変化により、VisaやMastercard、Alibabaといった企業との連携や、Facebookメッセンジャー上での決済の仕組みの提供など、この1年あまりで大きく舵を切っている。

 曽根氏は、「こうしたグローバルでの提携内容について、まずは国内での展開を進めていきたい」とし、国内でも「今後も、グローバル同様にさまざまな連携を模索していく。すでに多くの企業と連携を進めており、逐次発表していく」と述べた。また、グローバルでは提供されている機能についても、「日本のビジネスの進ちょくや国内での状況に応じて、新しいプロダクトのリリースも視野に入れている」と述べた。