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起業家や技術者を目指す女性を支援、NPO組織「Girls in Tech」の日本支部が本格始動

(左から)Girls in Tech日本支部代表の加藤愛子氏とCho Ro氏

 NPO組織「Girls in Tech」の日本支部「Girls in Tech Japan」は16日、日本での活動を本格化することにあわせ、同組織の活動内容に関する記者発表会を行った。17日には日本オラクル株式会社で東京ローンチイベントも開催する。

 「Girls in Tech」は、Adriana Gascoigne氏が女性起業家や女性技術者のキャリア形成を支援するため、2007年に米国サンフランシスコで設立したNPO組織。組織の会員は企業に勤める人材で構成され、米国をはじめヨーロッパやアフリカ諸国など世界63支部5万人以上に上る。

 2016年3月に設立した「Girls in Tech Japan」では、ビジネスの第一線で活躍するための女性起業家や技術系女性を輩出するため、ビジネスリーダーの基調講演や女性限定のプレゼンテーションコンテストを行っている。今後、海外支部と連携したメンターシッププログラムや技術交流プログラムなどの活動も行っていく。

 Girls in Tech日本支部代表の加藤愛子氏はダイキン工業株式会社に所属する技術者だ。加藤氏によると、STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)分野には女性が少なく、「将来、技術者として就職したときの想像がつかない」といった若い世代の女性からの意見も見られるという。そのため、Girls in Techでは、それらの基礎的な教育や女性のロールモデルを増やすこと、ステレオタイプを減らし、相談できる機会を増やすことを目的とした活動を行っていくという。

専攻分野別にみると、人文科学、薬学・看護学などでは女子学生の割合が高い一方、理学および工学の分野では女子学生の割合が低い

 「Girls in Techのイベントに高校生のころから気軽に遊びに来てもらい、技術系の女性達に就職セミナー以外の話を聞くことで、興味を持つきっかけを増やしていきたい」と同氏は述べる。

技術系の女性リーダーは世界的に見ても低い傾向だという
日本は60支部目の設立となった

 5月にはハッカソンイベント「Angel hack」の運営を担当。大盛況だった一方で女性の参加者が少なく、IT業界で女性が少ないことを改めて痛感したという。6月には登壇者を女性に限定したプレゼンテーション大会も実施。会場のキャパシティぎりぎりになる50人超が集まったそうだ。また、Girls In Techについてプレゼンテーションを行うとその場でスポンサーが決まるといったエンゲージメントもあったという。

 9月に行われたプレローンチイベントはダイキン工業で実施。ここでは参加者110名のうち7割が女性だった。「技術系のイベントは女性1割以下の参加者であることも珍しくないため、7割というのは新規性のあるイベントになったのではないかと思う」と加藤氏は語る。

 また、11月にはパナソニックのイノベーションセンター「Wonder LAB Osaka」において、技術交流プレゼンテーション大会「メーカー Women's Pitch Night」を開催している。

ハッカソンイベント「Angel Hack」は大半が男性の参加者だった
プレローンチイベントでは女性参加者が増え、休憩時間中も登壇者と積極的なコミュニケーションが行われたという
アンケートでは、今後もこれらのイベントに参加するといった結果も得られた

積極的なイベント展開で女性技術者・起業家たちの交流の場を増やす

 今後は1カ月に1回の頻度でイベントを開催する予定で、12月17日には日本オラクル本社で東京ローンチイベントを実施する。株式会社IHI、株式会社NTTドコモ、ヤフー株式会社などの女性技術者や起業家らが登壇する。また、海外からはGirls in Techポーランド支部の代表かつロンドン支部のディレクターを務めるKamila Hankiewicz氏が参加する。これまで同組織が支援してきた事例や、複数の起業を経験してきた同氏の取り組みについて加藤氏と対談形式で紹介する予定だ。

 各イベントには、オラクル株式会社やヤフー株式会社などもスポンサーとして積極的に支援を行っているという。これは両企業が女性のキャリア促進のための取り組みを自社でも展開していることに関係する。

 オラクルでは女性のリーダー育成支援プログラムプロジェクト「Oracle Women's Leadership」を2012年に立ち上げており、全世界におけるデジタルリテラシー向上のため年間33億ドル規模の投資を行うなど、少女の教育機会を創出するための支援をしている。

 また、ヤフーでは2013年2月より女性従業員有志による「ウーマン・プロジェクト」を立ち上げており、キャリア研修やワークショップ、講演会などを実施。活動を通して知識を得るだけでなく、女性同士のつながりを作り、結婚や出産、育児などのライフプランと両立して自分自身のキャリアを実現できるような支援を行っている。

 Girls in Tech日本支部のメンバーは加藤氏と西日本電信電話株式会社(NTT西日本)に所属するCho Ro氏の2人で構成されるが、これらパートナー企業の協力を得ているため「実際は多くの人の手によって回っている」という。

「Empowerment」「Engagement」「Education」、3つの軸で日本経済を牽引する女性を輩出

 加藤氏はダイキン工業の研究職に就いているが、同社は技術系の女性の割合が10%以下のため、かねてより「自分も同じような境遇の人と話したい、仕事のことを話せる仲間が欲しい」という思いがあったそうだ。そのため、Girls in Techの活動内容や目的について強く共感したという。

 同組織では、技術系女性の起業家精神を育成する「Empowerment」、多様な技術の現場で活躍する女性のコミュニティーを通じてモチベーションを向上する場を提供する「Engagement」、技術スキルを獲得するための教育、若い世代に技術業界で働く選択肢を与えるための「Education」の3つの“E”を軸に日本経済を牽引する技術系女性を輩出していくとしている。

 「普段はライバル関係にある企業でも、次世代のための教育であれば互いに協力し、支援していく」(加藤氏)

現在、スポンサー企業だけでなく、メンバーも募集中だそうだ。「熱意があり、ウェブ制作・PR・イベント経験・英語に堪能な人であれば紹介していただきたい」