ニュース

独HERE、自動運転車向け地図プラットフォームをクラウド提供、IoT分野での活用も視野に

Intelが出資、Microsoft、NVIDIA、パイオニアとも提携

 オンライン地図サービスを手がける独HEREは、独自動車メーカーによる2015年の買収により変化した事業戦略に沿って、2016年から2017年初頭にかけて、さまざまな企業からの出資や提携を行っている。これに伴う今後の事業戦略についての発表会が23日、都内で行われた。

 HEREは、もともとNAVTEQの名称で30年前にシリコンバレーで起業され、地図のデジタライズを手がけていたが、2007年にフィンランドのNokiaが買収。その後2015年には、BMW、Audi、Daimlerの独自動車メーカー3社によるコンソーシアムが約25億ユーロで買収。車載センサーの情報をクラウドで収集し、従来から手がける地図や位置情報のデータと組み合わせた自動運転車向け地図プラットフォームの提供が事業の中心となっている。

 2016年には、中国Tencent(騰訊控股)、中国NavInfo(四維図新)、シンガポール政府投資公社(GIC)が出資し、計10%のHERE株式を取得。HEREとTencentは中国国内に合弁会社を設立し、中国国内での地図サービスの展開を図っている。さらに2017年1月には、米Intelが出資し、株式15%を取得することが発表されている。

 HEREオートモーティブ事業部APAC市場戦略本部統括本部長のマンダリ・カレシー氏によれば、今後は、BMW、Audi、Daimlerの3社が25%ずつ、米Intelが15%、中国・シンガポール3社が10%の株式を保有するかたちになる。2015年末のNokiaによる売却で、CEOをはじめとした経営陣を一新。中国企業やIntelの出資により「ドイツだけでなくグローバルで、統一プラットフォーム戦略に基づいた事業を展開していく」とし、「これまでの車載用のデジタル地図を中心とした地図プロダクトの提供から、クラウドを中心とするプラットフォームサービス提供への移行を進めていく」とした。

 そして、出資・提携を行う企業について、CPUの開発・製造を手がける米Intel、車載カメラやセンサーを手がけるオランダMobileye、GPUを開発・製造するNVIDIA、クラウド地図プラットフォームやセンサーも手がけるパイオニアについて「自動運転の時代にふさわしいパートナー」とした。

 Mobileyeの「Roadbook」は、車載センサーやカメラからの情報の変化点をクラウドへアップデートするシステム。MobileyeではHEREのプラットフォームを活用、一方HEREではRoadbookを搭載した車両のデータをHEREのHD Live Mapに反映するという。

 このほか、NVIDIAとの提携でも、自動運転アーキテクチャにHD Live Mapが利用される。HEREでは、HD Live Mapの作成やアップデートにNVIDIAのAI技術を活用するという。

 Intelとは、HEREのHD Live Mapのリアルタイムアップデートをサポートするため、アーキテクチャ研究開発を共同で行う。また、将来的にはIoT分野での提携も行うとした。

 HD Live Mapは、米国や欧州で展開されており、レーンからレーンへのロジカルモデルを搭載することで、レーンチェンジを判断して安全に自動運転ができる。また、自車位置を特定するための重要な情報として、標識や看板のローカライズも行っているとのことだ。

 また、これまではGPSの緯度や経度、方向の情報をもとに提供していた交通情報のリアルタイムサービスについて「これからはカメラ、アンチロックブレーキ、ワイパーなどさまざまなセンサー情報も利用する」とした。

 「(オープンロケーションプラットフォームでは)さまざまなユースケースを想定し、完全自動運転ではなく、まずは一部を自動化する高度自動運転を目指して、どういう地図情報やサービスが必要とされているかを念頭に、開発者が展開しやすいエコシステムとして、さまざまなやり方でプラットフォームを展開していく」と述べ、「車の中でも外でもウェブでも、同じような体験をシームレスに提供することを目指す」とした。

 一方、Microsoftと、ドローンを手がける中国DJIについては、「サービスを消費する会社」と位置付けた。Microsoftについては、以前から地図データ提供などでの提携関係だが、2016年12月に発表した新たな提携では、HEREのデータとサービスをBing Maps APIへ統合。「例えば、アプリで音声検索するとCortanaがHEREに検索をかけるといった、プラットフォームをベースとした密接な関係に」変化するという。

 DJIは企業向けのドローンの開発と提供を行っており、世界で高いシェアを誇る。HEREではDJIに地図インターフェース技術を提供する。カレシー氏は「ビジネス向けでは正確なナビゲーションが重要となる。ドローンが自身の位置を度把握するために地図が必要となる。ビジネス用ドローンには高価なセンサーやカメラが搭載されており、地図があれば緊急時に安全に戻ることもできる」とした。

 IoT分野では、HEREの提供する交通や地図の情報に加え、「車載センサーからクラウドに情報を上げ、ほかの車のセンサーに情報を展開できる」との見通しも示した。同社では現在、世界62カ国で交通情報提供サービスを展開しているが「こういうコアサービスに加え、駐車場空き情報がセンサーリアルタイム情報で分かるような次世代サービスなども展開していく」という。

 さらに「IoTで利用されるさまざまなセンサーでも、今後は地図情報が必要になる場面がある。ビジネス上で自動車は一番大きなところを占めているが、物流、インフラ、フィナンシャルなどの分野で、オープンロケーションプラットフォームができるだけ使いやすくなるように、便利なツールを用意する。顧客と議論して必要な部分については柔軟に対応していく」とした。

 日本国内でのサービス展開については、パイオニア株式会社と同社子会社であるインクリメントP株式会社との提携を2月に発表したばかり。車載ナビゲーション向けの地図データ提供を国内でも行っていくという。