ニュース

HDDの「ゆりかごから墓場まで」――データ復旧事業に参入したバッファローがサービス拠点を公開

1ドライブ3万円から、保証期間内は無償で復旧

 株式会社バッファローでは5月1日より、自社製品の外付けHDD/SSDやUSBメモリ、SDカード、光学メディアの「データ復旧サービス」を開始し、データ復旧事業へ参入。サービス拠点をプレス向けに公開した。

 データ復旧事業への参入は、データ復旧において高い技術力を持つアドバンスデザイン株式会社の子会社化によるもの。バッファロー東京支店内(東京都中央区)に、サービス拠点「データ復旧センター」を新たに開設した。このほか、バッファロー本社のある名古屋と大阪にも拠点を開設。将来的にはさらに拠点数を増やすという。

 データ復旧の対象製品は、過去にバッファローが発売しているすべてのHDDやUSBメモリ、SDカードなどのストレージ製品。光メディアについては、バッファロー製ドライブでデータを保存したものが対象となる。保証期間が切れた旧製品でも、有償とはなるがサービスの対象となる。

 サービスは、ウェブサイトからの申し込みに加え、直接持ち込みにも対応する。サービス提供から約1カ月が経過しているが、数百件の問い合わせがあり、現在70~80程度のデータ復旧を終えているとのことだ。復旧サービス利用者の約3割は直接持ち込みとのこと。

 データの復旧前には、30~60分程度で事前見積もりを行う。軽度論理障害によるデータ損失については、製品の保証期間内であれば無償でサービスを提供する。さらに重度な障害や、保証外の製品は、固定料金体系でのサービス提供を行う。軽度な論理障害の場合で3万円、中度の論理障害で4万5000円、軽度な物理障害の場合で6万円(いずれも税別)から。これには復旧したデータを格納するストレージ代金などが含まれる。

 ここまでのデータ復旧がバッファローのサービス拠点内で実施可能で、これ以上の障害については、神奈川県川崎市のアドバンスデザインに送られ、作業が行われるという。重度なハードウェア障害や、データ部の破損など、重度な障害については、別途見積もりとなる。

 サービス拠点でのデータの復旧にあたっては、故障したHDDを動作させると障害が広がるために、まず別の物理HDDにクローニングし、その上でデータの復旧作業が行われるとのことだ。

 バッファロー前代表取締役で、株式会社メルコホールディングスの専務取締役の斉木邦明氏は、9年前にHDD事業部長として同社を外付けHDD市場トップに押し上げた人物。斉木氏は「これまで、ユーザーの自己責任で必ずバックアップ取ってくださいとして、データの保証はしてこなかった。データ復旧からは目を背け、約20年間放置してきた」とした。

 この20年で、HDDのドライブベンダーの統廃合が進み、Western Digital、Seagate、東芝に集約された一方、国内の外付けHDDベンダーも「主に3社に大別され、激しい価格競争の中、シェアトップを継続しているが、結果的に付加価値がないため、利益が取れるビジネスではない」とした。

 斉木氏は「まずNo.1メーカーがデータ復旧サービスを行うことで、ユーザーの支持を取り付け、シェアを高めていきたい」と述べ、「直接的にお金を儲けるということではなく、(データ復旧事業は)トントン以上でできればいいと考えている。トータルのHDDビジネスの中で利益が出れば」とした。データ復旧から消去、また故障機器の廃棄まで、HDDの「ゆりかごから墓場まで」を担う総合的なサービスを展開するという。

 そして、「(バッファローにはデータ復旧の)技術はないので1年間研究と調査を重ね、古くからデータ復旧を手がけ、技術力があり、信用のおけるアドバンスデザインをメルコグループに迎えることで、データ復旧サービスを開始できた」とし、「ユーザーに受け入れられることで、さらにHDDビジネスを大きくしていきたい」と述べた。

 株式会社バッファロー取締役データストレージソリューション事業部長の和田学氏は、「すべてのデータがデジタル化され、HDDなどのストレージやフラッシュメディアはフィルムやカセットの代わりになっている」とした上で、「HDDの大容量化が年々顕著に進んでいる。一般のユーザーでは、なかなかデータをいっぱいにはできない状況だ。それにより買い換え、買い足しのタイミングを逃し、HDDが寿命を迎えるタイミングが来てしまっている」とした。

外付けHDD容量が全体に占める割合は、2TB以上が37.1%、3TB以上が33.4%で、合わせて7割超にもなる
容量を使いきらないまま、寿命を迎えるHDDが増えてきている

 「HDDは4年を超えると故障率が一気に高まり、6年目には50%しか生き残らない」とのデータ会社による調査結果を紹介し、「以前と比べ、データに対するリスクが高まっている」とした。

 しかし、実際にデータ復旧の見積もりを依頼しても、価格が不明瞭だったり、個人情報などのプライバシーを他社に渡すことへの不安などから、復旧に二の足を踏む場合も多く、「実際に復旧を依頼するユーザーが2~3割と言われている」ほか、「これはデータが壊れて実際に依頼をした数なので、復旧可能と知らずに依頼をせず、データを捨てているユーザーは2~3倍いると言われている」という。バッファローでは、固定料金でサービスを提供することも含め「ユーザーが安心して利用できるサービスを提供したい」とした。斉木氏によれば、この1カ月のサービス提供で「(データ復旧見積もり後の)申し込みの6割が成約し、(一般的な復旧サービスの)ほぼ倍と聞いている」という。

4年目以降になると、HDD故障率が増加し、6年目には約半分が正常稼働しないという
データ復旧の市場調査によれば、依頼件数8万件のうち6.5万が復旧に成功するが、「2割程度はデータが消失して戻ってこない」という。

 また、データを別メディアに移行する「データ変換(メディアコンバート)」、HDDデータを完全消去する「データ消去」、「HDD廃棄」の各サービスもあわせて提供する。さらに、故障予測を行うクラウドサービスも本年度中に提供するとした。

 斉木氏は「外付けHDD購入ユーザーの約半数はテレビ録画に使用しているが、テレビ録画データは日本だけはコピーワンスの問題で復旧できない。アイ・オー・データ、デジオン、バッファローの3社で立ち上げた一般社団法人デジタルライフ推進協会(DLPA)での取り組みなどにより、この規制撤廃を推進していきたい。そうするとすべてのデータが復旧できるようになる」とした。

 アドバンスデザインの創業者で取締役会長の本田正氏は「10年間貯めた子どもの写真データがもしなくなったらどう思われるか。歴史は帰って来ず、二度と同じ写真は作れない。これまで、そういうデータをたくさん直してきた。それが私どものビジネスのいいところ。重い軽いは一概に言えないが、法人であれば、フォルダーが1つなくなっても、会社がつぶれることも十分に考えられる。データ復旧はそれくらい重要なこと。ストレージは買えば元に戻るが、データは一度失われたら元に戻らない。そういうビジネスをバッファローが始めるということを聞いて、非常に喜んだ」と述べ、「アドバンスドデザインは熟練した古参の口うるさい医者として、若いバッファローのサービスを見守っていくと同時に、手助けしていきたい」と語った。