ニュース

120台接続可能なハイエンドWi-Fiルーター、Synology「RT2600ac」、NASやVPNの機能をアプリで追加可能

 Synologyは、IEEE 802.11ac wave 2に対応する無線LANルーター「RT2600ac」を14日より出荷する。オープン価格だが、予想実売価格は2万9800円(税別)。

 RT2600acは、160MHzまたは80MHz+80MHzへのチャンネル幅拡大、MU-MIMOへの対応を加えた第2世代規格「wave 2」を含むIEEE 802.11ac/n/a/g/bに対応する無線LANルーター。最大通信速度は5GHz帯接続時で1733Mbps、2.4GHz帯接続時で800Mbps。可動式アンテナを4本装備し、4×4 MU-MIMOにも対応する。

 Synologyは2013年にNASメーカーとして日本市場に参入。「最近になって知名度が上がってきた」と手ごたえを感じているという。そして今回、すでに米国では1月に発表済みだったRT2600acを投入し、無線LANルーター市場に参入する。7月6日に行われた製品説明会において、販売を担当する株式会社フィールドレイクの倉石敬介氏は「技適が取得できさえすれば、すぐにでも売りたいと思っていた。6月末に取得できたので、7月中旬の販売を決めた」と述べた。

 本製品のレンジとなる200ドル以上のルーターの市場は、販売規模が全世界で月20~30万台に拡大しているという。これは「PC関連製品では、かなり大きい市場規模」だという。一方、国内の無線LANルーター市場の平均単価は6000円台で推移している。また、「多くのケースは回線業者が設置する」することが多く、ほとんどアクセスポイントとしてしか使われておらず、「米国と比べ、高機能ルーターの認知度が低い」のが現状だ。

 しかし現在は、アプリの複雑化や通信量の増加により、安定した帯域の確保が求められる。さらに、無線LANルーターへの接続機器が増加しており、外部からの脅威からネットワークやユーザーを保護する機能も必要になり、高機能なルーターの必要性は高まっている。

 こうした状況を受け、2018年にはIEEE 802.11acに対応するルーターが8割を占めると言われるとのことだ。さらに大きな演算処理が必要で実装に課題があったMU-MIMOに対応する機器も、CPUの性能向上と省電力化により順調に増えている。

 RT2600acは、Synology製NASの管理用OSである「DSM」に類似した機能を提供する「SRM(Synology Router Manager) 1.1.4」により、ウェブブラウザーベースのGUI画面で容易に設定や管理が行える点や、DSMと同様に「パッケージセンター」からアプリをダウンロードして、機能を追加できるのが特徴だ。なお、「管理メニュー自体は深い階層まで多くの項目が用意されており、ネットワークポリシーのさまざまな設定をカスタマイズできる」とのことだ。

 初期セットアップは、Synologyの提供する「クイックコネクトサービス」で、スマートフォンを用いるID登録により、ウェブブラウザーベースでルーターにアクセスできる。

 ハードウェア面では、CPUにデュアルコア1.7GHz駆動の「Qualcomm IPQ8065」を採用。512MBメモリも搭載しており、台湾本社でのテストでは、「120台接続しても実用に耐える速度が出ていることを確認している」とのことだ。

 なお、IPQ8065により、L4/L7層のハードウェアアクセレレーション機能も提供される。海外発売モデル「RT1900ac」との比較では、速度遅延が大幅に抑えられるという。

 本体背面に装備する4基のLANポートのうち1基をWANポートとしても利用可能で、もう1つのWANポートを併用し、インターネットを2回線接続できる。この「スマートWAN」により回線の切断を意識せずに1ポートを冗長化できるフェイルオーバーの機能や、サーバーとクライアントの回線を分けるなど端末レベルでもルーティング設定を行ってトラフィックを分散させるロードバランシングの機能を提供する。

 また、接続クライアントからは1つのSSIDに見え、電波状況などに応じて5GHz帯と2.4GHz帯を自動的に最適化して接続する「スマートコネクト」の機能も備える。

 パッケージセンターでの追加機能の目玉となるのが、従来からNAS向けに提供していた「VPN Server」を大幅に機能強化した「VPN Plus」だ。Synologyが2016年末に新サービスとして発表したもので、従来のPPTP/L2TP/OpenVPNに加え、SSTP、Web VPN、さらに独自のSSL VPNが利用できるもの。1アカウントは無料で常時接続できる。

 独自SSL VPNは、「高いセキュリティと高いスループットを維持し、簡単に設定ができるのが特徴」とのこと。端末やアプリ単位でのトラフィック制御ポリシーが設定可能。スプリットトンネルにより、社内接続先のみにSSL VPNを経由させるといったことも可能。また、通信がHTTPSであるため、通常のVPN接続と比較して、ファイアウォールのブロックを回避できる可能性が高いことも特徴だ。

 パッケージセンターでは、トラフィックを解析して悪意あるパケットを警告・通知する「Intrusion Detection System」や、通信を遮断するポリシー設定ができる「Intrusion Prevention System」により侵入検知・防止機能も追加できる。

 また、外部ストレージをUSB接続したりカードスロットにSDカードを装着して、簡易NASとして利用することも可能で、フォルダー同期機能を提供する「Cloud Station Suite」アプリもSynology製NASと同様に利用できる。

 このほか、ペアレンタルコントロールも備えており、カテゴリーごとにウェブフィルタリングが設定できる「Safe Search」を端末単位で設定できる。また、特定URLを指定したカスタムフィルタリングも可能。また、インターネットへの接続時間を端末ごとに曜日・時間単位で設定することも可能だ。