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仮想通貨マイニング事業「負けはない」とGMO熊谷正寿代表語る

専用チップを独自開発、PCIe拡張カードも2018年上半期に一般提供

 GMOインターネット株式会社が9月7日付で発表したビットコインマイニング事業への参入について、同社代表取締役会長兼社長で同社グループ代表の熊谷正寿氏が会見し、その勝算について語った。

 熊谷氏は、次世代マイニングセンターを設置する北欧について、再生可能エネルギーの活用が進んでおり地球環境に優しい点、電気代そのものが日本の約3分の1と安価な点、さらに気温が低く、マイニングにおける課題とされる冷却効率が高まる点から「最適な場所」と述べた。

 さらに国内半導体メーカーと共同開発し、従来製品と比較して半分以下の消費電力低減など、設計開発のめどが付いたマイニング専用チップとあわせ、「圧倒的な競争力があると思っている」との見方を示した。そして、「(仮想通貨のマイニングは)非常にシンプルな業界なので、チップ開発に成功すれば、(次世代マイニングセンターの立地とあわせて)負けはないと考えている」とし、「現在開始したとすれば、(電気代の占める割合は)10%くらいで済むため、収益性は極めて高い」と述べた。

「その時点で世界初の7nmプロセスを採用した半導体製品となる可能性もある」という独自のマイニング専用チップを国内半導体メーカーと共同開発し、2018年4月に国内で量産を開始する
独自のマイニング専用チップを搭載したモジュールカード。500W以下の消費電力で10TH/s(1秒あたり10兆回)の演算性能を実現
8枚のモジュールカードを搭載するシステムボード
2枚のシステムボードで構成されるブレード
8枚のブレードを格納するタワー型のサーバーラック
北欧に建設予定のマイニングセンター。サーバーラック400台で、現時点で世界の6.3%に相当する500PH/sの演算性能を実現
独自マイニング専用チップを搭載するPCIe接続のボードも一般販売する。消費電力は300W
デスクトップPCのPCIe x4スロットに装着して利用可能。競合製品との比較で消費電力を大幅に低減できる。対応OSはWindows/Linux

 熊谷氏は仮想通貨について、「国境のない経済圏を作ろうとしている」との見方を示し、「新しい経済のインフラで、仮想通貨によって世界共通の経済圏ができる。そこに日本の企業として参加する意味は大きい」とした。

 これまで手掛けてきたインターネットに対しては、「インターネットは情報に関しての境界を世界から取り除き、ビジネスや国、世界のあり方を変えた」とした。そして、「インターネットの力で、世界へ瞬時に平等に情報が伝わるようになり、企業活動でも、営業力よりプロダクト、サービスの性能価格が勝るものが選ばれるようになり、適正化された」との見方を示した。

 そして、GMOがこれまで手掛けてきたインターネット関連事業については、こうした視点に基づき、「インターネット自体の情報量を増やすべく、ネットインフラを中心に事業を展開し、国内トップの事業を数多く手掛けてきた」と述べた。GMOグループ全体は現在、9社の上場企業を含む102社からなり、世界で5000名の社員を抱える総合インターネットグループとなった。2018年春にはインターネットバンクの開業も予定しているという。

 参入する仮想通貨のマイニング事業に関しても、「仮想通貨は、お金に関しての境界線を取り除き、お金のやり取りをフラット化して、結果として世界のあり方を変えるもの」とし、「事業家としての勘で、インターネットに出会ったときに、成長性を感じてわくわくした。それと同じことを仮想通貨の世界に感じている。関与する人の盛り上がりや広がりに、当時のインターネットに近いものを感じ、既視感、依然見た図が起きていると考えている」と述べた。

 そして、「(通貨が)1つしかないことが不便と思う個人、企業、(通貨の弱い)国など、現在の状況を不便と思っている人がいる限り、仮想通貨は広がると考えている」との見方を示した。

 その事業展開については、「大元となるマイニング事業への参入が必要と考えた」とし、三菱や三井などの旧財閥グループによる鉱山採掘事業、そしてゴールドラッシュで周辺事業者として潤ったリーバイスの場合を比較し、北欧にデータセンターを建設して自ら行うマイニング事業と、一般ユーザー向けに提供するクラウドマイニング事業について、「両立てで事業参入する」とした。このほか、専用チップを搭載したPCIe接続のマイニングボードの一般向け販売も行う。そして、「データセンターの建造と、専用チップにおける7nm、5nm、3.5nmの研究開発費込みで」、今後数年間で100億円規模の投資を行うとした。

 GMOインターネット常務取締役次世代システム研究室室長の堀内敏明氏は、「法定通貨に対して、特定国家による価値の保証を持たないもの」と、仮想通貨についての解説を行った。

 「法定通貨の中央集権に対して(仮想通貨は)分散型で、信用力の源泉はブロックチェーンにある」とし、2100万とされる発行量の上限があることも違いとして挙げた。

 仮想通貨自体は、現在1000種類以上あり、日々新しい通貨が生み出されるが、時価総額では「ビットコイン」が全体の7割を占めるという。

 ウェブサイト「blockchain.info」のデータでは、アプリのダウンロード数を示したウォレットユーザー数がこの2年で4倍に、時価総額は20倍となり、特に直近で急成長している

 仮想通貨の採掘を行う「マイナー」の収入は、1日あたり7.6億円に達し、全体の演算量を示す「ハッシュレート」は798HT/sに達している。

 仮想通貨の中でも、最も市場価値の高いビットコインは、ブロックチェーン(ネットワークに分散して保持される台帳)に取引が記録されるが、この正確さを保つ上で必要なプロセスを実行して成功報酬を得るのが、いわゆる「マイニング」となるわけだ。

 堀内氏は、「マイニングはくじ引きによくたとえられる」とし、受け取ったマイナーが一番早くくじを当てるには、できるだけ早くくじを引かなくてはならない」とした。そして、「高速にくじ引きできる機械を用いて、その能力や参加者の数によって変化するが、約10分に1回程度、計算が成功すると、1回で12.5ビットコインが受け取れる」と、その流れを解説した。

10分に1回だと1日あたり144回となり、1800ビットコイン(約8.5億円)が1日に新規発行されている計算となる
マイナー(採掘者)は、新規発行されるビットコインと、それに対するシェア、その時点の時価で売り上げが決まることになる

 堀内氏は「サーバー事業を手掛けるGMOには、数万台のサーバーの運用管理、ネットワークやセキュリテイのノウハウがある。同じ電気量で2倍の性能を誇る専用チップと、冷却効率が良く、電気代も安い北欧に建設しているデータセンターという武器を最大限利用する」とした。ビットコインの運用についても、「金融やFXの事業ノウハウによるビッグデータ解析システムでの経験を生かしていく」と述べた。そして、「これらすべてを自社で開発運用している会社は世界でもあまりない」との見方を示した。

 GMOインターネットマイニング事業責任者の奥村真史氏は、熱処理と電気代をマイニングセンター運営のポイントに挙げ、北欧は、地球環境への影響が軽微な再生可能エネルギーが盛んで発電コストが安い上、気候的にも寒冷で冷却に有利な点を挙げた。2018年上半期には運営を開始するとのことだ。なお、専用チップによるマイニングでは、ビットコインのほかに、SHA256方式の仮想通貨を用いた採掘を行うとのことだ。

 一般ユーザー向けにデータセンターの演算性能の利用権利を提供する予定の「クラウドマイニング」については、「まず自社でマイニング実績を残した上で」の提供のため、その時期は未定とのことだが、「契約期間や計算量の組み合わせで提供する予定」とした。

 PCIe拡張カードについては、「競合の動向を見ながら、よりリーズナブルな価格で提供する」とした。また、「カード1枚では一般的にマイニングに成功する確率は少ない」としたが、「共同で携わるグループを作ることで成功確率が上がる『GMOマイニングプール』との組み合わせで、安定した収益を提供できる」とした。