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Winny開発者・金子勇氏の控訴審が結審、判決は10月8日


大阪高等裁判所

 ファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇氏が、著作権法違反幇助の罪に問われた裁判で、控訴審の第3回公判が16日、大阪高等裁判所で行われた。公判では、検察側・被告側双方の弁論が行われ、検察側は一審判決の罰金刑(150万円)は軽すぎると主張。被告側は無罪を訴え、結審した。控訴審判決は10月8日。

 この裁判は、Winny利用者2人の著作権法違反事件(いずれも有罪が確定)について、Winnyを開発した金子氏が2人の犯行を幇助したとして罪に問われているもの。一審の京都地裁は2006年12月、金子氏の行為は幇助にあたるとして、罰金150万円の判決を下した。これに対して、検察側・被告側の双方が判決を不服として控訴していた。

 公判で検察側は、Winnyの機能と特質自体が著作物を流通させることに特化したもので、それ以外の利用は考えられないと主張。また、金子氏の2ちゃんねるへの書き込みなどからも、現行の著作権ビジネスモデルへの挑戦を目的としたもので、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)などが行ったファイル共有ソフトの利用実態調査からも、違法な著作物流通による被害は甚大であり、金子氏の責任は重大であると指摘。罰金刑とした一審判決は軽すぎると訴えた。

 また、控訴審では、被告側が、正犯者を特定した手法には矛盾があり、正犯者が特定されていないと主張したことに対して、検察側は、正犯者が虚偽の供述を行う理由が無いと主張。事前の捜査段階と実際に正犯者のPCを調べた結果、IPアドレスやポート番号が異なっているという指摘についても、正犯者は2台のPCを使用しており、ポート番号は変更していた形跡があること、捜査員はファイルに付けられたトリップ情報によってファイルの放流者を特定していたなどの理由を挙げ、2人が正犯者であることに疑いはないとした。

 一方、被告側は、被告人の金子氏はWinnyを開発しただけであり、一審判決でも認めているようにファイル共有ソフトやその技術は価値中立的なものだと主張。価値中立的な技術を開発したことが安易に幇助に問われてはならず、その基準は明確であるべきだが、一審判決では「その技術の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的様態」によるとだけされており、基準とは呼べない曖昧なものだと指摘した。

 また、著作権侵害について開発者やサービス提供者の責任が問われた海外の裁判では、米国のグロックスター事件、韓国のソリバタ事件、台湾のezPeer事件などではいずれも厳格な要件を求めており、一審判決は世界的な趨勢とかけ離れた曖昧なものだと主張。一審判決に対する「立法手続きを経ずに刑事的制裁を加えることは罪刑法定主義に反する」「民事責任より広範に刑事責任を認めるものであり、容認しがたい」「不特定多数という公衆に対する幇助を認めるのは誤りである」といった法学者の意見も紹介した。

 また、一審判決では2004年にACCSなどが実施した調査をファイル共有ソフトの利用実態として挙げているが、この調査はダウンロードしたファイル名を自由回答で記入させ、例として映画のタイトル名を挙げているなど、回答にはバイアスがかかっており、調査として妥当なものとは思えないと指摘。これらの調査は著作権保護強化の観点からバイアスがかかったものであり、現実の利用実態とはかけ離れているものであるとした。

 さらに、現在ではYouTubeのようなサービスが、著作権者による公式の動画配信や、政党などの動画配信といった形で有益に使われているが、一方では依然として著作権侵害にも利用されていると指摘。優れた技術やサービスにはプラスとマイナスの両面があり、特に位置付けが決まっていない黎明期の技術を刑事で罰することは明らかに早計であるとして、無罪を訴えた。


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(三柳 英樹)

2009/7/16 14:14

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