ネットレイティングスが口コミ分析サービス「BuzzMetrics」開始
ネットレイティングスの千葉尚志代表取締役社長 |
ネットレイティングスは30日、CGM(Consumer Generated Media)分析サービス「BuzzMetrics」日本版の提供を開始した。同社はこれまで、インターネット視聴率などの定量的な調査サービスを展開してきたが、今回、インターネット上の消費者の口コミを定性的に調査するサービスに国内参入したかたちとなる。
「BuzzMetrics」では、国内のCGM分析サービスで主流となっているオンラインによるASPサービスも提供するが、アナリストが分析したオフラインによる「アドホックレポート」に主軸を置くのが特徴。特にCGM分析サービスでは国内後発組になることから、「ヒューマンパワーを駆使した高品質サービスで、ニールセングループの統合力を発揮する」(ネットレイティングスの千葉尚志代表取締役社長)としている。
●ネット視聴率や広告統計との連携も可能
「アドホックレポート」では、特定製品やサービス、ブランドのキーワードを含んだ口コミ記事の分量を時系列調査するほか、好意度を「ポジティブ」「ネガティブ」「ミックス」「ニュートラル」などに分類し、そう評価されている要因も分析する。また、それらの記事が、例えば「価格に関する記述が多い」「機能に関する記述が多い」といった傾向から、消費者がどの消費行動ステージに多くいるのかも分類する。
さらに実際の記述を引用しながら詳細な傾向を分析したり、同時に語られることの多いキーワードとの関連を示した「ブランド・アソシエーション・マップ(BAM)」も作成。このほか、特定の話題について影響力の多いブロガーなど“インフルエンサー”も特定する。なお、スパムブログなどのシステム的な排除に加え、アナリストの目視によるクリーニングにより精度の高い分析が可能だとしている。
ネットレイティングスが提供する複数の調査指標と連携した分析が行えるのも強み。例えば、Nielsen Onlineのインターネット視聴率調査「NetView」のデータと連携することで、口コミの盛り上がりがWebサイトへの利用者数増加につながっているかどうか相関分析できる。また、インターネット広告統計「AdRelevance」と連携し、広告の出稿が口コミの盛り上がりに影響しているか確認することも可能だという。
右下の図が「ブランド・アソシエーション・マップ(BAM)」 | 調査対象となる日本のサイトの概要と、分析までのプロセス | インターネット視聴率「NetView」の指標とも連携可能 |
実際に提供するレポート形式は顧客のニーズによって個別設計し、代表的なものとしては「ブランド調査レポート」「新製品ローンチ分析レポート」「イベント効果分析レポート」「リスク分析調査レポート」などがある。調査の設計・事前調査から、データ収集・精査、分析・レポート作成を経て、納品までは1カ月から1カ月半程度を要する。料金は262万5000円からとなり、レポート内容などによって異なる。
一方、ASPで提供する「My BuzzMetrics」では、オンラインのダッシュボード機能において顧客自身がキーワードやメディア、地域を設定して口コミの量や傾向を調査し、グラフなどで表示できる。8月8日より提供開始で、料金は月額31万5000円から。
「My BuzzMetrics」の設定画面。キーワードやメディアなどを選択する | ダッシュボード機能では、作成したグラフを登録しておくことで自動更新される |
●SNS、ブログ、掲示板など国内約200サイトが調査対象
「BuzzMetrics」の分析ソースとなるデータは、Nielsen Onlineの開発によるクローラーによって世界中のメディアから収集する。このうち日本のサイトは、具体的な名称は公表していないが、ブログや掲示板、Q&Aサイト、SNS、ユーザーグループ(メーリングリスト)をはじめ、現在はベータ対応のYouTube、Twitterなど約200サイト。また、新聞や雑誌などのトラディショナルメディアについても、外部ベンダーから提供を受ける。7月時点で、ブログ190万記事、掲示板40万メッセージを収集済みで、今後もデータは日々更新・増強していく。データの保管期間は最大2年間で、過去までさかのぼって分析できる。
なお、顧客のニーズによりクロール対象サイトはフレキシブルに対応するとしており、携帯電話向けサイトについても、IPアドレスでのアクセス制限をかけていないサイトであれば対応可能だという。また、SNSなどのクローズドなサイトもクロール対象に含めることが技術的に可能だが、実際にクロールするかどうかはそのコミュニティのポリシーに従って判断するとしている。
ネットレイティングスで「BuzzMetrics」日本版を担当するアナリストの中村義哉氏 | Nielsen Companyプロダクトマネージャーのショーバナ・スリニワサン氏 |
「BuzzMetrics」は米国では10年の実績があるほか、2007年に英国とドイツ、2008年にオーストラリア、ニュージーランド、スペイン、2009年にはイタリアでも開始している。アジアでは、日本のほか、8月には中国でもスタートする。さらに、フランスやインド、マレーシア、南米にも段階的に導入予定だという。複数地域・複数言語を対象に同一手法を用いたグローバルな調査・分析サービスも行えるとしている。
Nielsen Companyのプロダクトマネージャーであるショーバナ・スリニワサン氏は、日本版の提供開始の背景について、クライアントのニーズがあったのはもちろんのこと、「日本のCGMはポテンシャルが高いことも大きな理由」だとした。スリニワサン氏はUniversal McCanの調査データを紹介し、すでに「BuzzMetrics」の実績がある米国においては消費者のブログ閲読経験率が60.3%なのに対し、日本は84.4%に上ると指摘。また、ブログを毎日読むとした人も、米国では23%だったのに対して日本では50%と半数を占め、日本はCGMの閲読頻度が高いことを紹介。日本の消費者がいかにブログから影響を受けているか、企業が認識することの重要性を強調した。
「BuzzMetrics」による調査データ例。トヨタの新型ハイブリッドカー「プリウス」と、ホンダのハイブリッドカー「インサイト」を対象とした口コミ件数のトレンド |
関連情報
(永沢 茂)
2009/7/30 16:52
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