Yahoo!検索はブックマーク代わり? クエリ数1位「YouTube」の謎


 ヤフーは2日、Yahoo! JAPANの「2009検索ワードランキング」について記者説明会を開催し、キーワードの動向から推測される検索エンジンの利用スタイルや、今年初めて発表した都道府県別の急上昇ランキングについて解説した。

2年連続の1位に「YouTube」、8位まで2008年から変動なし

 「2009検索ワードランキング」は、ヤフーがすでに11月18日に発表していたもの。集計期間は2009年1月1日から10月31日までで、Yahoo!検索におけるPCからのアクセスを対象とした。総合ランキング上位10語は、1位「YouTube」、2位「mixi」、3位「2ちゃんねる」、4位「Google」、5位「楽天」、6位「Amazon」、7位「ニコニコ動画」、8位「goo」、9位「JAL」、10位「MSN」だった。

「2009検索ワードランキング」の総合ランキング

 ヤフーR&D統括本部の池宮伸次氏は、「本来であれば、『今年はこんなサイトが突然ランクインしました』『すごいブームがありました」と紹介したかったところだが、なんと1位から8位までが2008年と全く同じ。“今年のサイト”といえるようなサイトはなかった」と語る。

 ただし、強力な新しいサイトが出てこないことがインターネットサービスの停滞を示しているのではなく、「強いところは強い」と説明する。YouTubeの検索数の推移グラフを見ると、現在も右肩上がりで増加していることがわかる。

 また、2位のmixiについては、今年後半から検索数が増加しており、「mixiアプリ」の効果ではないかと指摘する。実際、mixiについては1人あたりの検索回数が増えているとしており、「mixiアプリの『サンシャイン牧場』など、1日に何度も様子を見に行くため検索しているのではないか」と推測している。

 Yahoo! JAPANのサイトでは、100位までのキーワードを解説とともに公開中だ。池宮氏によると、11位以下では、12位「価格.com」(2008年は22位)、13位の「ハローワーク」(同20位)のランクアップが目立つという。また、15位「ハンゲーム」(同21位)、73位「GREE」(同圏外)、94位「モバゲータウン」(同圏外)などゲーム系の検索数が増えているとした。

 さらに、「アメブロ」は圏外から一気に14位にランクインしており、「今年を代表するサイトではないか」とした。池宮氏によると、アメブロにおける芸能人ブログは以前から人気があったが、従来は芸能人の名前で検索してアクセスするスタイルが多かったのではないかと指摘する。それが今年からアメブロのトップページをリニューアルし、芸能人ブログランキングを掲載するなど、トップページ自体がコンテンツ化したことや、アメブロに芸能人ブログが多く開設されていることなど、ユーザーに「アメブロ」の認知が高まったことで、大幅なランクアップを果たしたとみている。

「YouTube」「mixi」「2ちゃんねる」をわざわざ検索する理由

 ランキングを集計するにあたっては、「YouTube」と「ユーチューブ」など、同一サイトの表記の揺れは集約しているものの、単体キーワードと複数キーワードは別のものとして扱っている。

ヤフーR&D統括本部の池宮伸次氏

 すなわち、「YouTube」「2ちゃんねる」「楽天」「Amazon」「ニコニコ動画」などを検索しているということは、「YouTube ○○」「2ちゃんねる ××」などのように、それらのサイトにある動画や情報などの個々のコンテンツを探しているのではなく、各サービスのサイトそのものが目当てということになる。実際、「mixi」などは検索後、そのままmixiのトップページへアクセスする人が多い模様だ。

 この点について池宮氏は「中にはブックマーク代わりに使っている人もいるのではないか」と推測する。確かに、サイトのURLを記憶したり、ブックマークに登録しておいてリストから探すよりも、Yahoo! JAPANの検索窓から辿った方が速いという考えも成り立つ。

 その一方で、ここ数年のランキングの傾向から、「ユーザーが検索に慣れた傾向をひしひしと感じる」と池宮氏は語る。

 4年前の2005年の総合ランキングは1位「2ちゃんねる」、2位「Google」、3位「楽天」だったが、「壁紙」「画像」といった単純であいまいな単語が多かったという。

 これに対して最近では、「ドラゴンクエスト9 攻略」「価格.com デジカメ」など、最初から「ピンポイントな検索」をする人も増えているとした。複数キーワードで検索する方法は、詳しいユーザーでは昔から当たり前のことだが、一般ユーザーが複数キーワードを入力することはあまりなかったのだという。

Yahoo! JAPANで「Yahoo!」が検索されることも

 なお、他社の検索エンジンのランキングでは必ずランクインする「Yahoo!」については、ランキングから除外しており、上位には入らないが、それなりに検索されているようだ。

 例えば、Yahoo! JAPANのトップをリニューアルした際などは、Yahoo! JAPANの各サービスにアクセスするために、「Yahoo!」を含むサービス名称での検索が増えることがあるという。メニューの表示位置が変わり、目的のサービスへたどり着けなくなり、検索してしまうものと思われる。また、各サービスのページを閲覧中にYahoo! JAPANのトップページに戻るためや、Yahoo!ニュース内でヤフーに関する記事や株価を調べるために「Yahoo!」で検索されることも多いという。

千葉県では、そんなにしょっちゅう電車が止まるのか!?

 今年初めて公開した「日本全国! 急上昇ワードランキング」では、都道府県別に検索が急増したキーワードをそれぞれ上位5件紹介している。

都道府県別に算出した「日本全国! 急上昇ワードランキング」

 ヤフーは、「Yahoo!ラボ」において、あるキーワードの検索数をIPアドレスをもとに都道府県別に集計し、その分布を日本地図などで表示する「サーチのなかみ - 地域別」というコンテンツを公開している。今回、その1年分のデータが蓄積されたとして、年間ランキングとして公表することにした。

 このランキングでは、みごとに地域で異なる傾向が出ており、池宮氏は「『なるほど』とわかるものもあれば、『なぜ?』というものある」と語る。

 例えば、千葉県のランキングは、1位「東西線 運行状況」、2位「常磐線 運行状況」、3位「総武線 運行状況」、4位「ふれあい相浜」、5位「京葉線 運行状況」の順。鉄道の「運行状況」を含むキーワードは埼玉県などでもランクインしており、キーワードを見ただけでそれを検索しているシチュエーションが想像できる。ただし、都道府県別ランキングはモバイル検索は含まれないため、PCからこのような情報をチェックしていることになる。

 一方で、富山県の1位「生産技術」は一般名詞であり、これを見ただけではなぜ注目されたのかわからない。しかし実際に検索してみることで、「生産技術」という名称の地元企業が民事再生法の適用を申請したことがわかる。他の同様のキーワードでも、ニュース記事などのリソースを見ればだいたい理由がわかるという

 なお、ヤフーがこのランキングを11月に公表した後、「千葉県では、そんなにしょっちゅう電車が止まるのか!?」という疑問の声がネットなどで見受けられたという。これに対して池宮氏は、あくまでも“急上昇ワード”のランキングであることを強調する。

 “急上昇ワード”とは、1日単位の検索数の集計で、前日と比較して検索数が急激に増加したものであり、ヤフーがその上昇率をスコア化して比較している。必ずしも年間を通じて検索された絶対数が多いものではない。都道府県別に見ても、やはり絶対的に多いのは「YouTube」などだ。

 すなわち、1年を通じて1日だけでも、台風の影響などでその地域の鉄道が広い範囲で運休した日があれば、“急上昇ワード”としてランクインする可能性がある。他の災害についても同様のパターンが見受けられ、「地震」「地震速報」もいくつかの県でランクインしている。

埼玉県でプロフが流行?

 Yahoo! JAPANのサイト上では公開していないが、記者説明会では都道府県別の年間“特徴語”ランキングも一部の地域について紹介した。例えば北海道は、1位「JR北海道」、2位「アルキタ」、3位「北海道新聞」、4位「北洋銀行」、5位「STV」、6位「札幌市」、7位「札幌ドーム」、8位「札幌」、9位「日ハム」、10位「北海道銀行」となっている。

 “特徴語”とは、あるキーワードの全検索数に占める都道府県別の比率を算出し、地域の偏りが高いもの(ただし、絶対数がある程度多い語)をランキングしたものだ。

 前述の「サーチのなかみ - 地域別」でも同様の機能があり、例えば、直近1日に全国から「阪神タイガース」と検索されたクエリのうち、最も多かったのは「奈良」からの検索で6.0%を占めた。以下、2位「兵庫」5.7%、3位「滋賀」5.3%、4位「和歌山」4.9%、5位「大阪」4.9%などとなっており、やはり関西方面が比率が高いことがわかる。

 特徴語ランキングを見ると、地方紙の新聞社名や地方銀行名、自治体名、ローカルテレビ局の省略名称であるアルファベット3文字などは、都道府県ごとにその地域のものが検索されていることがわかる。

 ただし唯一例外もあり、東京都は、1位「ぐるなび」、2位「JAL」、3位「ビックカメラ」、4位「ANA」、5位「都バス」、6位「ぐるなび 東京」、7位「みずほ銀行」、8位「HIS」、9位「三菱東京UFJ」、10位「MSN」だった。全体の総合ランキングに近い傾向が出ているという。

 このほか、埼玉県は「レイクタウン」「浦和パルコ」「浦和レッズ」「国際興業バス」などのほか、10位に「前略」が入っている。

 「前略」というキーワードは、全体の総合ランキングでも34位に入っており、プロフサイト「前略プロフィール」を探す際に使われるキーワードだという。ただし、埼玉県の特徴語となっている点について、「前略プロフィール」の利用者が多いのか、流行っているのかといった理由はヤフーではわからないとしている。

モバイル検索ならではの人気タレントが出現する可能性も

 ヤフーでは、携帯電話からの検索キーワードについても、モバイル版「2009年間検索ランキング」としてとりまとめており、PC版と同様に11月18日に公表している。

ヤフーR&D統括本部の中前正氏

 総合部門のランキングのうちトップ10は、1位「mixi」、2位「2ちゃんねる」、3位「モバゲータウン」、4位「YouTube」、5位「GREE」、6位「Google」、7位「楽天」、8位「アメブロ」、9位「Amazon」、10位「マクドナルド」だった。

 やはり「モバゲータウン」「GREE」が上位に入っている。また、10位の「マクドナルド」のほか、11位の「ぐるなび」、18位の「ホットペッパー」などはPC版のランキングに比べてかなり上位に来ている。携帯サイト内で提供しているクーポン目的で検索されているためだ。

 ヤフーでは今年2月から、日々のモバイル検索ランキングを公表しており、トレンドを知るデータとして蓄積されてきたことから、今年初めてモバイル版の年間検索ランキングを発表することにした。

 ヤフーR&D統括本部の中前正氏は、「モバイル検索ならではのカルチャーや、ユーザーの年齢層・男女比の違いがあるのではないかとの仮説があり、PC版との違いを見せたい」と、ランキング公表の意図を説明する。

 実際、動画部門の5位にランクインしたグラビアアイドルの「篠崎愛」は、PC版のランキングでは見られないキーワードだという。中前氏は「モバイルならではの隠れた人気タレントやキャラクター、ゲームが出現する可能性がある。それをいち早く伝えたい」とした。


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(永沢 茂)

2009/12/3 06:00