「スマートグリッドに今後のビジネスチャンス」Google村上氏講演


グーグル名誉会長の村上憲郎氏

 Google日本法人の名誉会長である村上憲郎氏が13日、KDDIウェブコミュニケーションズのホスティングブランド「CPI」の新サービス発表会にゲストとして登壇。Googleのクラウドサービスと、グリーンIT戦略への取り組みについて講演した。

 CPIではレンタルサーバーの新サービスとして、GoogleのWebアプリケーションサービス「Google Apps」と連携し、レンタルサーバーの管理画面から簡単にGoogle Appsを利用できるサービスを発表した。CPIではこのサービスを、「既存のホスティングとクラウドを組み合わせたハイブリッドホスティング」と位置付けており、これを受けて村上氏がGoogleのクラウドサービスと、その背景として電力コストの削減を目指すグリーンIT戦略について説明した。

クラウドは電力コストの低減が課題に

 村上氏はまず、Googleのこれまでの歩みを簡単に振り返り、スタンフォード大学で使用していたマシンや、ガレージ企業として創業した際に使用していたマシン、初期にエンジニアが手作りしていたサーバーなどを紹介。現在でも、サーバーの設計は自社で行っており、今日に至るまでGoogleでは既製品のサーバーを購入して使うことは無く、自社のサービスのために専用に設計されたサーバーを使用していると語った。

 また、こうした多数のサーバーを運用していく中から「クラウドコンピューティング」という概念が生まれ、Googleのサービスもすべてクラウド上で動いていると説明。Google Appsが、同様のサービスを自社で構築する場合に比べて安く提供できるように、クラウドには財務面でのメリットがあり、さらに環境への配慮という観点からもメリットがあるとした。

Google創業者がスタンフォード大学で使用していたマシンGoogle創業初期に使用していた手作りのサーバー

 村上氏は、Googleがクラウドコンピューティングを進めていく上では、YouTubeの急拡大に代表されるようにサーバーリソースを拡大し続けなければならず、データセンターのコスト削減が課題だと説明。現在、Googleで使用しているコンテナ型のデータセンターを紹介し、ハードウェアのコストについては機器の性能向上などによりある程度対応が可能だが、電力コストの低減が大きな課題となっているとした。

 Googleでは、データセンターの電力効率の向上にも取り組んでおり、データセンターの総使用電力とIT機器が使う電力の比率を示す指数(PUE)では、2011年目標とされた数値を2009年に達成したと説明。ただし、こうした自助努力による省エネデータセンターの建設だけでは不十分で、長期的に低廉でクリーンな電力の供給も必要だと語った。

 こうしたことから、Googleでは再生可能エネルギーに対する投資も進めており、本社社屋の屋上にソーラーパネルを設置するなどの取り組みも行っていると説明。さらに、こうした再生可能エネルギーの活用に欠かせない技術として、スマートグリッドへの期待を語った。

現在使用しているコンテナ型のデータセンターデータセンターの電力効率化により、2011年目標の「PUE 1.20」を2009年に達成
Google本社の屋上にはソーラーパネルが設置されているGoogleがグリーンITに取り組む理由

現在電力網に接続されているものは、将来すべてスマートグリッドに

電力網と情報網を組み合わせた「スマートグリッド」が今後の鍵に

 スマートグリッドとは、電力網とIT技術を組み合わせることで、現在の電力網をインテリジェント化しようという取り組みの総称。電力会社の送電インフラの効率化や、センサーネットワークを利用したオフィス・家庭内の省エネルギー化、太陽光発電などで生み出された電力を有効活用するための仕組みなど、多岐に渡る取り組みがスマートグリッドと呼ばれている。

 村上氏は、現在考えられているスマートグリッドは、電力会社からの系統系グリッド(上流)とコミュニティグリッド(下流)に分割され、系統系グリッドは電力会社の一元管理によるクローズドなものになるが、コミュニティグリッド内では電力の双方向売買も可能となると説明。コミュニティグリッドの情報網はオープンな従来のインターネットであり、「現在、電力網に接続しているものは、将来すべてスマートグリッドに接続することになる。また、スマートグリッドの情報網はインターネットなので、それらの機器はすべてインターネットにも接続することになる」とした。

 Googleのスマートグリッドへの取り組みとしては、北米で整備が進められている通信機能などを持った高機能電力メーター(スマートメーター)と連携するソフトウェア「Google PowerMeter」を紹介。ただし、「スマートグリッドでのキラーアプリが何になるのかは、まだわかっていないのが正直なところ」だとして、「スマートグリッドが秘めた新しいインターネットの拡大に、これからのビジネスチャンスがあるのではないかと期待している」と語った。

電力網に接続している機器は、将来的にすべてスマートグリッドにスマートグリッドは、系統系とコミュニティ系の2種類に分割される
コミュニティグリッド内では電力の双方向売買も可能に電力消費量がWebで見られる「Google SmartMeter」
2030年までに石炭火力発電をゼロにしようという「Clean Energy 2030」の計画創業者の2人はプリウスがお気に入りで、プラグイン化して乗っているという

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(三柳 英樹)

2010/1/13 21:04