ネット関連企業の経済団体「eビジネス推進連合会」が正式発足


 インターネットおよびeビジネスの拡大を通じた日本の競争力強化を目的に、民間の立場から各種提言や情報提供を行う一般社団法人「eビジネス推進連合会」が22日に正式発足した。2月17日時点の会員数は1665社に上る。

初代会長には楽天の三木谷社長が就任


(左から)eビジネス推進連合会会長である楽天・三木谷氏、ヤフー・喜多埜氏(同社社長で副会長を務める井上氏の代理)、幹事のサイバーエージェント・藤田氏、監事のフューチャーアーキテクト・金丸氏

 eビジネス推進連合会は、インターネット関連企業やインターネットを通じてサービスなどを提供する企業などが参加する経済団体。会員数は法人および個人事業主を含めて合計1665社で、内訳は一般会員が238社、賛助会員が1427社。会費は一般会員が一口10万円、賛助会員が一口1万円で、集まった会費を原資として推進連合会を運営するという。

 また、会員企業の中で上場企業は82社。楽天やヤフー、サイバーエージェント、ミクシィ、グリーなどのインターネット関連企業に加え、近畿日本ツーリストや昭文社、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、TBSテレビなども参加している。

 22日の設立総会および理事会で、楽天の三木谷浩史代表取締役会長兼社長が初代会長に選出された。副会長にはヤフーの井上雅博代表取締役社長、幹事にはサイバーエージェントの藤田晋代表取締役社長CEO、監事にはフューチャーアーキテクトの金丸恭文代表取締役CEO、事務局長にはヤフーの別所直哉CCO兼法務本部長がそれぞれ選出された。


2月17日時点での会員企業数。各社のサービスを利用するユーザーの合算値(重複含む)は1.72億人を超えるという82の上場企業も参加する(記者会見資料より)

 記者会見の席で、三木谷会長はeビジネス推進連合会が発足に至った背景や設立趣旨を説明した。三木谷会長はまず、「日本が将来にわたって国際競争に勝ち抜き、さらなる経済成長を続けていくためには、ITのさらなる戦略的な利活用によって、eビジネスを推進・発展させていくことが不可欠である」と説明。

 一方で、「こうした発展を支える環境整備について、いまだ途上の段階にあり、国をあげた政策や諸制度の整備が喫緊の課題となっている」とし、「インターネットの利活用が進まなければ、日本は発展途上国に追い抜かれてしまうのではないかと危機感すら抱いている」と述べた。三木谷会長は、こうした状況を踏まえて設立されたeビジネス推進連合会に関して、「参加企業の叡智を結集して、ネットの活用とeビジネスの拡大を通じた日本の国際競争力の強化を、ぜひとも実現したい」と抱負を語った。

政策提言に加えて、eビジネス白書の発行やコンテスト開催も検討


eビジネス推進連合会の会長を務める楽天の三木谷氏

 具体的な活動方針に関しては今後の幹事会などを通じて詳細を決定するが、主な事業としては総会や賀詞交歓会、幹事会を開催。また、医薬品の通信販売やインターネットを利用した選挙活動に関する政策提言活動に加え、Twitterを利用したマーケティングなどをテーマにした会員向け勉強会、地域活性化などに関するワーキンググループ、インターネットの定点調査、各社のデータを活用したeビジネス白書の発行も予定する。加えて、検討案ベースだが、「日本インターネット大賞」や中高生を対象にしたeビジネス・IT関連のコンテストも開催したい考えだ。

 このうち政策提言活動に関して三木谷会長は、「個別具体的な政策提言に関しては幹事会で議論したい」と前置きした上で、「一般的に諸外国はインターネットを利用して成長しようとしているのに対して、日本では制約をかけようとしている」と指摘。三木谷会長は「マクロ的に一番重要な点は、インターネットに必要のない規制をかけないこと」と述べ、「医薬品の通信販売にしても、ライフラインであるインターネットにしても、規制をかけようとする勢力に断固として反対する」と語った。

 なお、政党に対する政治献金については予定しておらず、特定政党に対して支援する考えはないという。ただし、三木谷会長は「政治の古い体質の中で、非常に進歩的な考えを持つ政治家の方もおられるようだが、政党の中のヒエラルキーでつぶされる傾向にある」と語り、「eビジネスを心の中から推し進めたいという思いを持っている方は何らかの形で応援したい」と述べた。

 また、既存の経済団体との違いに関しては、「eビジネス推進連合会の活動の根底にあるのは、通信革命であるインターネットが経済の実態を大きく変えていく点にある」と説明。「既存の経済団体も活動されているとは思うが、正直に申し上げてレガシーなシステムを引きずっている」と述べ、「より未来指向型でITを通じた日本経済の発展を推進していきたい」とした。

 このほか記者会見では、幹事に就任したサイバーエージェントの藤田社長が「非常に厳しい経済状況下の中、eビジネス業界は業績があがっている企業も多く、これからの国の新産業の発展、雇用の創出、国の競争力の面などでも大いに期待して欲しい」とコメント。「我々も国としっかりとベクトルを合わせて、こうした期待に応えていきたい」と語った。


記者会見後の懇親会では、発起人が共有する問題意識などを紹介。その中でeビジネスは内需、外需の双方で日本の経済成長に貢献できると説明したこちらは外需に関する資料

過剰な規制や負担は社会経済の効率性をゆがめるとも説明懇親会の乾杯の音頭は、副会長のヤフー井上社長の代理で出席した喜多埜氏が務めた

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(村松 健至)

2010/2/22 19:02