「Internet Explorer 9」プラットフォームプレビュー版公開

GPUアクセラレーション、マルチコアプロセッサーにも対応


Internet Explorer 9プラットフォームプレビュー版

 米Microsoftは16日、次期Webブラウザー「Internet Explorer 9(IE9)」のプラットフォームプレビュー版を、米国ラスベガスで開催されている開発者向けカンファレンス「MIX10」で公開した。既に、サイトからもダウンロード可能となっている。

 IE9では、JavaScriptのパフォーマンス向上のほか、HTML5、DOM、CSS3などの標準規格への対応を強化。HTML5の実行にGPUハードウェアアクセラレーション機能を利用するなど、数多くの改良が加えられている。

JavaScriptのパフォーマンス向上

 IE9には、新しいJavaScriptエンジン「Chakra」を搭載している。Microsoftが公表したJavaScriptのSunSpiderベンチマークテストテストの結果によれば、IE9プラットフォームプレビュー版の実行速度はIE8の6.4倍となっており、大幅に速度が向上している。他のブラウザーと比べると、IE9はFirefox 3.6とFirefox 3.7アルファ2プレリリース版(開発版)よりは高速だが、Opera 10.50、Google Chrome 4、Safari 4.0.5の実行速度には及ばない。

 もっとも、Microsoftではこうしたベンチマークテストの結果をさほど重視してはおらず、Internet ExplorerゼネラルマネージャーのDean Hackamovitch氏は、「ブラウザーの300ミリ秒の違いを認識するには70秒を必要とする」とコメントしている。また、現状のIE9では、SunSpider向けのチューニングをそれほど行っていないともしている。

 さらにIE9では、JavaScriptのパフォーマンスを向上させるため、マルチコアプロセッサーを最大限に利用することにしたと説明。JavaScriptのコンパイルは、可能な場合、IEとは別のコアを利用するため、マルチコアプロセッサーのマシンではページ読み込みやコード速度の体感は一層速くなるとしている。

SunSpiderベンチマークテストの結果

標準規格と相互運用性の向上

 IE9では、標準規格への準拠など、他のブラウザーとの相互運用性にも力を注いでいる。

 Hachamovitch氏は、「我々は異なるブラウザー間でも、同じマークアップできちんと動くようにしたい」との目標を掲げ、他のブラウザーとの相互運用性にも力を注いでいることを明らかにした。複数のブラウザーの異なる実装により、違うHTMLや、スクリプトを開発しなければならないという、開発者の理不尽な負担を減らすためだ。

 しかし、先進的な標準規格は、依然としてドラフト段階であるなどの制約があるため、MicrosoftではWebサイトから最も多く使用されているDOMとJavaScript APIのデータを収集し、これらのAPIをサポートしていくと説明。これらの収集結果のデータも公開した。

 また、このデータに表れてこないAPIもIE9ではサポートする。その中で最も重要なものは「HTML5、CSS3、DOM、SVG」だとしており、Microsoftでは特にHTML5の実装方法について、開発者からのフィードバックを強く求めている。

 Web標準準拠テスト「Acid3」のテスト結果は、現時点でIE9は55点だが、今後開発が進むにつれてこの点数は良くなっていくと説明。Microsoftでは、W3Cに対してHTML5、CSS3、DOM、SVGに関する100の追加的テストを提出し、標準規格の正確な策定に寄与していることもアピールしている。

Acid3テストの結果

HTML5にGPUによるハードウェアアクセラレーション

 Microsoftでは、IE9のHTML5アプリケーション実行に、GPUによるハードウェアアクセラレーションを使用することを明らかにした。こうした手法を採用するブラウザーは、IE9が「業界で初めてだ」と主張している。GPUアクセラレーションは、HTML5アプリケーションのほか、SVGの描画やJavaScriptのパフォーマンス向上に用いられる。

 GPUアクセラレーションには、Windowsに搭載されている最新のDirect2Dテクノロジーが使用される。このことによって、アプリケーションやグラフィックの応答性、毎秒当たりのフレーム数が大きく向上するとしている。

現時点のIE9はあくまでも開発者向け

 なお、Microsoftでは、IE9プラットフォームプレビュー版は日常的に使用できるブラウザーではないとして、注意を促している。プレビュー版にはアドレスバーや戻るボタンすらなく、フィッシング対策やマルウェア保護機能もない。

 IE9プラットフォームプレビュー版は、あくまで開発者向けのバージョンで、パフォーマンスやハードウェアアクセラレーションなどの新機能をテストするためのものとされている。また、Microsoftにフィードバックを提供するためのレポートメニューが搭載されていることも、大きな特徴だ。

 IE9プラットフォームプレビュー版の対応OSはWindows 7/Vista SP2で、Vista SP2では事前にInternet Explorer 8とDirect X 2D(D2D)がインストールされている必要がある。

 Microsoftでは初の試みとして、IE9プラットフォームプレビュー版をベータ版公開まで8週間おきにアップデートすると説明。アップデートごとに、IE9の完全な姿に近づいていくとしている。この手法により、IE9プラットフォーム開発者とのフィードバックループをスピードアップさせていくとしており、IE9については今後ともIE公式ブログでさらに詳細な情報を提供するとしている。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2010/3/17 13:15