米Viacom、YouTube裁判に関する証拠書類をネットで公開

YouTubeはただちに反論


 米メディア大手のViacomと米Google傘下のYouTubeの間で行われている著作権侵害に関する裁判に関連して18日、ViacomはYouTubeが意図的に著作権侵害を行っていたとする証拠だとして、数百ページをインターネット上に公開した。一方、GoogleはYouTube公式ブログにおいて直ちに反論し、Viacom自身もマーケティング戦略としてYouTubeを利用していたと主張している。

 Viacomがこれらの証拠を公開した理由は、同社が米ニューヨーク南部地裁に対して略式判決の申し立てを行ったためだ。この申し立てを行う際には、それを保証するための証拠を公開する必要がある。Viacomは2007年3月に、YouTubeとGoogleを相手取り、意図的な著作権侵害を理由に提訴していた。

 今回Viacomが提出した証拠には、裁判で明らかになったYouTube創業者Chad Hurley氏、Steve Chen氏、Jawed Karim氏の間で交わされた生々しいメールも含まれている。

 例えば、YouTube公開直後の2005年4月25日にChad氏が送信した内部メールでは、「BootieChristが投稿したビデオは取り下げるべきだと思うんだ。これはレイプものだからね。だけど『South Park』のやつは著作物だからどうすべきかな。よくわからない」といったものがある。

 このメールに対してChen氏は、「同意するよ。彼のビデオの一部は取り除くべきだな。最初に公開されているビデオのラインナップは、このサイトで我々が見て欲しいと思っている種類のビデオになるから本当に重要になる。ビデオのチェックをしなきゃだめだ!」と返信し、著作物の存在を認識したことがわかる。

 また、2005年8月にはChen氏が、「映画やテレビ番組みたいなのは削除しよう。今のところは短いニュース映像はそのままにしておこう。すぐにではなく、時間をかけて厳しくしていった方がいい。例えばCNNのスペースシャトルの映像みたいなモノは気に入っているんだ。我々がもっと大きくなってよく知られるようになったら、削除すればいい。だけど今のところこの映像はいいと思う」とメールし、Jawed氏も「それでいい」と認めている。これは著作物の放置を暗に認めたようにも受け取れる。

 さらに、YouTube公開前の2005年2月には、Jawed氏がChad氏とChen氏に宛てたメールで、YouTubeの目標となる企業にGoogleやYahoo!だけでなく、BitTorrent、Napster、Kazaaなどを挙げていることも問題になっている。このメールは、「ユーザー数と人気度に関連してイノベーションを起こしたい」という文脈の中で述べられている。

 Viacomは、このようなメール数百通を証拠とし、YouTubeとGoogleが意図的な著作権侵害を放置してきたと主張した。

 これに対してYouTubeは、チーフカウンシルのZahavah Levine氏が18日付の公式ブログでコメントを発表。YouTubeが米国デジタルミレニアム著作権法に従って、通知され次第著作物を削除してきたことを述べた上で、Viacomが極秘裏にYouTubeに動画をアップロードしていたことを指摘した。

 具体的には、18以上の異なるマーケティング会社を雇い、動画が盗まれた、あるいはリークされたと見せかけるために加工して、偽のメールアドレスを使ってYouTubeアカウントを作成し、アップロードしたとしている。別のケースでは、従業員をキンコーズに行かせてViacomに足がつかないようなコンピューターから映像をアップロードさせたとしている。

 さらに、著作権侵害で提訴する一方で、Comedy Centralの社長やMTV Networksの社長は、マーケティング上の観点から、いくつかの動画はYouTubeに残すべきだと「非常に強く」考えていたことも指摘した。

 YouTubeは、このようなViacomの態度を厳しく批判し、「我々はYouTubeを守り、著作権の保護、技術的革新の発展、言論の自由の保全との間でバランスを保つという議会がデジタルミレニアム著作権法に組み込んだ考え方を擁護したい」と主張している。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2010/3/19 13:41