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講談社、京極夏彦氏の新刊「死ねばいいのに」を電子書籍としてiPadでも販売


京極夏彦氏(左)と野間省伸氏(右)

 講談社は20日、京極夏彦氏の新刊小説「死ねばいいのに」を、iPad向けに電子書籍としても発売すると発表した。同書は5月15日に単行本として発売されており、電子書籍はiPad用のアプリとしてiTunes Storeで販売する。アプリは現在アップルに申請中で、日本でiPadが発売される5月28日以降に発売の予定。また、「電子文庫パブリ」など各種電子書籍ストアで携帯電話向けの配信も行う。

 紙の単行本は1785円で販売しているが、iPad用アプリは発売から2週間はキャンペーン価格として700円、それ以降は900円と約半額で販売する。冒頭の第1章については無料配信も行う。携帯電話向けは、1章につき105円で配信する(6章構成で、第1章については無料配信)。

 20日に行われた記者会見には、講談社の野間省伸副社長と京極夏彦氏が出席。野間氏は、「書籍を刊行とほぼ同時にデジタル化して販売するのは、我々としては初めての試み。今回は京極夏彦氏の協力を得て、実験的な意味合いを込めながら、電子書籍とはどんなものなのかということを、広く読者の皆様に体感していただくチャンスにできればと考えている」とコメント。「電子書籍は作品を読む新たなチャンネルが生まれ、紙の本の市場も刺激し、広げていくものだと考えている。今後も電子書籍端末に積極的に書籍をリリースしていく予定で、電子書籍によって読者の楽しみを一層感じていただければ幸いだ」と語った。

新刊書籍をiPadでも電子書籍として販売する 京極夏彦氏

 京極氏は、「幸いなことに、iPadというセンセーショナルなものが、私の新刊とあまり時期を違えずに発売することになり、これはいい機会だということで実験台を買って出た」とコメント。「ただ、その第一号となる実験作のタイトルが、非常に扇情的な困ったタイトルでありますが」と会場の笑いを誘い、「実験なので失敗するかもしれないが、決して大きな意味での失敗にはつながらないだろう。やっとスタートラインに立ったという気持ちだ」と語った。

 また、電子書籍と紙の書籍の関係や出版社の役割については、「紙の本が無くなるということは、現実的には考えられないと思っている。電子出版や電子書籍が一般的になれば出版社もいらないという人もいるが、私はそれもないと思う。テキストは素材に過ぎない。たしかに中身は大事で、面白くない小説は売れないが、だからと言って素のまま、生のままでも読んでもらえるというのは傲慢だと思っている。きちんとしたプレゼンテーションがなされなければ商品にならない。そのための努力のほとんどは出版社がしている。版面やレイアウト、フォントもコンテンツのうちで、テキストのままでいいという人はそうした考えが欠如している」と語った。

 今回の配信に至った経緯について野間氏は、「これまでもPCや携帯電話向けの電子書籍は10年以上やってきたが、現在の市場は携帯向けコミックがほぼ大半という状況。今回、iPadという電子書籍を読むに足るであろうという端末が出ることと、ビュアーソフトの開発が進んだことなどのタイミングが重なった。また、京極氏はDTPに取り組まれていることもあり、ぜひやらせていただきたいという提案をしてご理解いただいた」と説明した。

 価格設定については、「どうやって作るかにもよるが、京極氏の場合はDTPで作成されているため電子データに変換することが比較的容易だった。また、米国の状況や既存の電子書籍の価格などから、900円が妥当であろうという判断をした。携帯向けは500円になるが、文字も横書きでルビも付かない。本来であれば商品としては不十分という判断だが、今回はまず実験」として、どのような価格設定がいいのかについては今後さらに検討していきたいとした。

 今後の予定については、講談社では現在、五木寛之氏の「親鸞」前編を無料公開しており、これを電子書籍でも展開していきたいと説明。また、秋に予定している京極氏の書き下ろし小説も電子書籍での展開を考えており、その他については個々の作家との話し合い次第だとした。


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(三柳 英樹)

2010/5/20 19:57