「日本版フェアユース」に関して文化庁がパブコメ募集、パロディは別途議論


 文化庁は25日、「日本版フェアユース」の導入について議論を行っている文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の中間まとめに対して、パブリックコメントの募集を開始した。募集期間は6月24日まで。

 法制問題小委員会では、政府の「知的財産推進計画2009」で、日本版フェアユースの導入に向けた検討を提言されたことを受けて、2009年から具体的な検討を進めてきた。今回、検討結果を中間的にまとめ、内容を公表した。

 現在の著作権法は、私的使用のための複製や図書館における複製など、著作物を無断で利用しても著作権侵害とならないケースを列挙する形(個別権利制限規定)になっている。このため、法で明記されていない著作物の利用は、権利者の利益を侵害しない場合でも形式的には著作権侵害と解釈されうることから、著作物の円滑な利用が妨げられているとして、米国著作権法のような一般権利制限規定(フェアユース規定)を日本にも導入すべきであるという指摘がされていた。

 中間まとめでは関係者などへのヒアリングにより、フェアユース規定の導入に賛成する意見としては、個別権利制限規定は利用者や新規ビジネスへの萎縮効果があり、必要に応じて個別のケースを新たに追加していく手法も立法措置に時間がかかるといった指摘があったと説明。一方で、フェアユース規定を導入しなければならないほどの重大な問題は生じておらず、導入により居直り侵害行為者が蔓延する、訴訟コストなどの負担が権利者側のみに増加し公平性を欠くといった反対意見もあり、利用者側と権利者側に大きな意見の隔たりが認められるとしている。

 こうしたヒアリングの結果も踏まえて検討した結果、小委員会では「企業をはじめとして法令遵守が強く求められている現代社会においては、利用者が権利侵害となる可能性を認識し、利用を躊躇する場合もあると考えられ、権利制限の一般規定の導入によりかかる萎縮効果が一定程度解消されることが期待できる」として、フェアユース規定を導入する意義は認められるとしている。

 その上で、フェアユース規定を導入することで認められる利用としては、1)写真や映像の撮影に伴ういわゆる「写り込み」などの付随的な利用、2)適法な著作物の利用の過程で合理的に必要と認められる著作物の利用、3)技術の開発や検証のために著作物を素材として利用する場合など、著作物の表現を享受するための利用とは評価されない利用――といった例を挙げ、いずれの場合でも権利者の利益を不当に害することがないよう、条文化などに際しては慎重な検討が必要だとしている。

 また、中間まとめでは、パロディとしての著作物の利用については、いかなるパロディを権利制限の対象とするのか、現行法の解釈による共用性、表現の自由と同一性保持権との関係などについてあまり議論が進んでいるとは言えず、検討すべき重要な論点が多く存在すると考えられると指摘。パロディとしての利用をフェアユース規定により解決するのは必ずしも適当でないとして、別途議論が必要だとしている。


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(三柳 英樹)

2010/5/26 14:45