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大日本印刷・凸版印刷、「電子出版制作・流通協議会」設立発表会


写真右から、電子出版制作・流通協議会の代行理事 北島元治氏(大日本印刷)、同会長 高波光一(大日本印刷)、同副会長 大湊 満氏(凸版印刷)、同代行理事 名和正道氏(凸版印刷)

 大日本印刷株式会社と凸版印刷株式会社は7月27日、2社を発起人とする任意団体「電子出版制作・流通協議会」を設立すると発表した。同日開催された総会における議決により正式決定した。

 正式名称は「電子出版制作・流通協議会」(英文名:Association for E-publising Business Solution、略称AEBS)、会長には大日本印刷副社長の高波光一氏が、また副会長には凸版印刷の常務取締役の大湊 満氏がそれぞれ就任。当面、協議会の仮設事務所を大日本印刷内に置く。幹事会員は、大日本印刷と凸版印刷、電通が務める。


「電子書籍の制作・流通に関わる環境整備が使命」大日本印刷・高波副社長

 発表会で、会長に就任する大日本印刷の高波光一副社長は、「現在電子書籍市場は提供社により配布の形態や仕様がばらばらで、この状態では電子出版市場が成長する上で今後大きな障害が出てくる」と指摘。

 「書籍にはISBNコード、雑誌には雑誌コードがあるからどこでどの本が何冊売れたという販売管理ができる。電子出版にはこうしたコードすら決まっていない。また、日本で電子書籍を普及させるには日本語独自の文字や組版の問題があるので、こうした規格も標準化されるべきであると考える。これらの制作・流通に関わる仕様や規格を決めていくことが、この協議会の活動の中心になっていく」と述べた。

 また、いわゆる三省懇談会(総務省・文部科学省・経済産業省による「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」)などの提言や、出版業界の要望にこたえていくのがわれわれの使命だとした。

 大日本印刷と凸版印刷の2社が発起人となったことについては、「もちろん競合関係にもあるが、2社を含めた印刷業界全体として、出版社と長年培ってきた信頼関係の中で、よりよい電子出版環境を作っていくことが一番重要であるという認識のもと、協力していくことになった」と説明。

 また、「印刷業界、出版業界だけでなくiT業界、通信業界など広く参加いただいてさまざまな問題をクリアしていくことで、読者にもっとも使いやすい電子書籍を作っていくための環境を整えることが一番大きな命題と考えている。市場は変化が激しくスピーディに動いているので、迅速に動いていくことが重要であると認識している。」とした。

「オープンで水平・分業型の日本独自のビジネスモデルを」凸版印刷・大湊氏

 続いて副会長に就任する凸版印刷常務取締役 大湊 満氏が、会の活動内容について説明。

 (1)電子出版・流通ビジネスについて定例会やセミナーで情報共有を図ること、(2)書誌データやコンテンツID、配信プラットフォーム、レベニューシェアなど制作・規格・仕様・流通に関する協議を行う、(3)電子出版ビジネスについて読者への啓蒙活動などを通して普及を促進、(4)電子出版制作・流通ビジネスにおける日本モデルの検討および協議、(5)図書館なども含めた電子出版関連分野に関する情報共有を活動の柱として挙げた。

 中でも、(4)の日本モデルの検討および協議については、「垂直統合型モデルというグローバル企業のビジネスモデルではなく、オープンで水平・分業型の日本独自のビジネスモデルを構築するための検討を行っていきたい」と述べた。

 日本モデルについては記者の質問にこたえ、大日本印刷の高波副社長は「水平・分業型といっても、各業界でそれぞれマージンを確保しようとかそういうことではない」と述べ、業界利益重視のプラットフォーム作りではないことを強調。あくまで「読者にとっていちばん使いやすい形にするための環境作りが目的」だと述べた。

出版業界との信頼関係とプリプレスで培った技術を生かしたい

 AmazonやGoogleなどの動きをどう受け止めているかとの質問に対しては、「米国中心で仕様が決まるということになると、日本の文字の特殊性や、縦組み横組みといった日本語の出版文化があやういという危惧は持っている」として縦書きをはじめとした日本語文化の継承の重要性を指摘。しかし、同時に「グローバル企業の垂直統合というやり方を否定するわけではない。また、この会で外資を排除するということではなく、外資の方々とも協議をしていきたい」。と述べた。

 また、電子出版については電子書協など既存団体があるため、印刷会社主導でいま団体を設立することについても重ねて質問が飛んだが、凸版印刷の大湊常務取締役は「紙の印刷を作るために培ってきたデジタル技術が電子出版でも役立つと確信している。プリプレス工程の中に、電子書籍で配信できるデータも作っていけるのはわれわれ印刷業界だろうと思っている」とコメント。

 出版業界との長い信頼関係と、プリプレス技術で培ったデジタル化のノウハウを持つ印刷会社がその技術をもとに、IT業界や通信業界、官とも連携しつつ、あくまで「制作・流通」にターゲットして普及のための課題解決がテーマであるとのスタンスを強調した。

 また、今後の活動では、中にいくつかの委員会を設置したいとの考えを示し、「最終決定ではないが」と前置きした上で、規格・仕様を協議する技術委員会、プラットフォーム・流通システムを協議する流通委員会、知財を扱う運営委員会、定例会・セミナーなどを行う普及委員会、広告の仕組みを検討する委員会などを考えていることを明らかにした。

設立時の会員46社、賛助会員36社・団体

 設立時点の会員社は46社、賛助会員は36社・団体。参加社は、共同印刷、図書印刷などの印刷会社、インテル、東芝、パナソニック、富士ゼロックスなどのメーカー、朝日新聞、毎日新聞、時事通信などの新聞・通信社、NTT Com、NTTドコモなど通信事業者のほか、ソリューション事業者や広告代理店、フォントメーカー、コンテンツベンダーなど幅広い。

 このほか、富士通など18社・団体が参加予定となっている。

 特別会員には小学館の岩本敏氏、東京電機大学の植村八潮氏、著作権情報集中処理機構の佐々木隆一氏、国立国会図書館の柳与志夫氏が就任する。


お詫びと訂正】記事初出時、大日本印刷 高波氏の肩書きは社長とありましたが副社長の間違いでした。お詫びして訂正いたします。


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(工藤 ひろえ)

2010/7/27 18:24