「Google マップ」に不動産検索機能が追加


「Google マップ」の不動産検索機能の利用イメージ

 グーグル株式会社は12日、地図検索サービス「Google マップ」に不動産物件の検索機能を追加した。株式会社ジアースが提供する全国約100万件の賃貸物件情報を検索し、地図上に一括表示できる。「Google マップ」のTOPページから検索フォームで、「不動産」「賃貸」などのキーワードと地名を組み合わせて入力する、あるいは検索オプションや地図レイヤー機能から「不動産」を選択することで利用可能。

全物件の情報を地図上に一括表示

 不動産検索機能は既に提供を開始。マウスのドラッグによるスムーズなスクロールで、地図上の表示領域内のすべての物件情報を一括表示できる。物件の絞り込みも可能で、賃料、間取り、広さ(平方メートル単位)のほか、風呂トイレ別、洗濯機置き場、オートロックの有無といった「こだわり条件」が指定できる。

 絞り込み条件を追加していくたびに、物件の位置を示すピンがマップ上で動的に増減するため、物件の傾向や賃料相場を視覚的にとらえられるのも大きな特徴。ピンをクリックすると、当該物件の詳細情報をまとめた「プレイスページ」が表示される。そこから周辺のストリートビューを閲覧したり、電話連絡先などが記載されたページ(ジアース管轄)にアクセスできる。物件が契約済みとなった場合は、ジアースからの連絡後、数日で情報掲載を終了するが、近い将来には即時反映が実現する見込みだ。


不動産検索結果の一例。左ペインには物件リストも表示されている物件の詳細を表示する「プレイスページ」。ストリートビューや電話連絡先の確認なども行える

 不動産検索機能の開発にあたったエンジニアの南野(なんの)朋之氏は、「例えば予算5万円という条件まずありきで物件を探す場合、現実的にどのエリアで物件を探せばいいかわかる」と新機能の魅力を説明。希望する居住地や最寄りの駅名を起点とした、従来型の物件探しとは異なるアプローチが可能という。

 さらに南野氏は「実際に物件を探す場合は、近所に病院やコンビニがあるかといった生活環境を調べることも重要。その際は、レイヤー機能を使うと便利」だと語る。これは、Google マップの地図表示画面左下に表示されている検索履歴チェックボックスを切り換えることで利用できる機能。「六本木 不動産」と「小学校」の検索結果を地図上に同時表示するといった用途に対応し、目的の施設に近い物件を直感的に把握できる。


グーグル株式会社 エンジニアの南野(なんの)朋之氏不動産と小学校の検索結果を同時に表示した例。レイヤー機能を応用することで、近隣施設を直感的に把握できる

 なお、不動産検索機能は「Google マップ」の各ページから利用できるが、Googleの通常のウェブ検索結果(Google.co.jpなど)にはマージされていない。また、モバイル版のGoogle マップからも現状では利用不可。今後は、物件情報提供企業との提携拡大も検討していく。

賃貸物件探しに新たな体験を

グーグル株式会社シニアプロダクトマネージャーの河合敬一氏

 12日の新機能発表会では、グーグルのシニアプロダクトマネージャーである河合敬一氏がサービス導入の経緯を説明した。河合氏は「ローカル情報をオンライン検索するユーザーの数は非常に多く、Googleで処理している全検索クエリーのうち、5回に1回は“場所”に関連したもの」と、そのニーズの高さを指摘する。

 また、場所の情報は、その1つ1つが多面的な視点で構成される特徴があるという。「(グーグルが入居する)六本木ヒルズひとつ見ても、さまざまなストーリーがあり、店舗の営業情報、ウィキペディア、写真、動画など多くの情報がウェブ上にある。これを“六本木ヒルズ”という言葉に寄せ、整理することがGoogleの大きな目的になる」と河合氏は強調する。

 Googleは、ウェブ上のコンテンツを自ら作るケースはほとんどなく、パートナー各社と協力してコンテンツを集め、それをわかりやすく提示することこそが信条だという。Google マップ上のコンテンツについても外部の企業や団体との提携を進めることで増強しており、直近では、ベビーカーや車いすでも利用しやすいトイレ、鉄道時刻表、地下鉄ルートなどのデータを追加した。

 不動産情報についても「地図の上に改めて重ねてみると、『こんなに便利だったのか』と驚かされた。新しい検索体験をお届けできるのではないか」と、河合氏はその新規性をアピール。「条件絞り込みによって、地図上の物件が増減していく感覚は単純に気持ちいい。ぜひ気軽に利用してもらえれば」と呼びかけた。

 不動産情報の提供を担当する株式会社ジアースからは、代表取締役社長の池添吉則氏が発表会に参加。「不動産会社がジアースに物件情報をご登録いただくと、Google マップにも自動的に、無料で掲載される。貸し主、不動産会社双方にとってメリットある仕組みではないか」と話している。

 なお、グーグルとジアース2社間で情報料や広告料など金銭の授受は行われていない。河合氏は「まずは、使いやすいサービスをお客様に提供するのが目的」と従来からの姿勢を改めて表明。物件掲載順位も機械的処理で、口コミやレビューなどは特に考慮されていないという。分譲物件などにも情報提供分野を拡大するかについては、今後の利用動向をみて判断するとしている。

パートナーと協業することで、コンテンツ強化していく方向性を打ち出す不動産情報は株式会社ジアースが提供。同社代表取締役社長の池添吉則氏も新機能発表会で登壇した

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(森田 秀一)

2010/8/12 17:23