「デジタル化が雑誌の価値をさらに高める」アドビが電子出版製品をアピール
米Adobe SystemsのRicky Liversidge氏 |
アドビシステムズ株式会社は1日、電子出版に関するフォーラム「Adobe Digital Publishing フォーラム 2011」を開催し、来場した出版関係者などに電子出版ソリューション「Digital Publishing Suite」をアピールした。
「Digital Publishing Suite」は、アドビのDTPソフト「InDesign CS5」やグラフィックデザインソフト「Creative Suite」シリーズ各製品によるコンテンツ作成環境と、電子書籍や電子出版の配信・決済・効果測定などのオンラインサービスを組み合わせて提供する電子出版ソリューション。サービスは2011年第2四半期に提供開始予定で、日本でも出版社などに向けてプレリリースプログラムを開始している。
イベントでは、米Adobe Systemsのデジタルパブリッシング部門担当副社長であるRicky Liversidge氏が米国の事例を紹介。アップルのApp StoreにはDigital Publishing Suiteを使った出版物が既に100以上あり、さらに数十誌が近く発行予定だという。
Liversidge氏は、「デジタル雑誌はただ紙をタブレットに載せ替えただけのものではなく、音声や動画、インタラクティブな仕掛けでストーリーを強調し、自分たちが作る雑誌の価値をさらに強めるものだ」として、最初に展開した「WIRED」誌では既にデジタル版で10万部を販売し、デジタル版が紙の書籍の37%の売上を上げるようになったという実績を紹介した。
Digital Publishing Suiteを使った100以上の出版物が既にApp Storeで公開されている | 「WIRED」はデジタル版の売上が店頭での売上高の37%に |
また、デジタル雑誌の広告は非常に訴求力が高いとして、「Martha Stewart Living」のデジタル版に掲載されているティファニーの広告を紹介。Martha Stewart Livingの事例では、すべての広告出稿者においてブランド認知が改善したという調査結果が出ているという。ウェブにはほとんど広告を掲載しないブランドもデジタル雑誌のインタラクティブ広告には価値を認めており、出版社にとってデジタル雑誌は広告を雑誌に引き戻すためのいい機会となるだろうと語った。
Liversidge氏は、Digital Publishing Suiteには既に3000社以上の出版社がプログラムに参加しており、質の高い雑誌が次々とマーケットに登場していると説明。また、「1月の2011 International CESでも80以上のAndroidタブレット端末が発表されており、今後数カ月でこうした端末が発売される。もう待つ必要はありません」と語り、日本の出版社に対してもDigital Publishing Suiteのプレビュープログラムへの参加を呼びかけた。
デジタル雑誌に掲載した広告の訴求力は高いという調査結果も | Digital Publishing Suiteの概要 |
アドビシステムズ マーケティング本部の岩本崇氏は日本の事例として、Digital Publishing Suiteで制作したアプリケーションでは国内初の有償販売となる株式会社三栄書房のiPadアプリ「ゴルフトゥデイ」を紹介した。
アプリ制作を担当した株式会社ビーワークスの丸田敏晴氏は、有名プロのスイングをコマ送りで見られる機能や、レッスン動画、クラブのカタログで打球音を確認できる機能など、紙の上では表現できなかった様々な情報を、アプリにすることで掲載できたと説明。これまで出版側もインタラクティブなコンテンツには興味はあったものの、開発の手間を考えると手を出しづらかったが、Digital Publishing SuiteによってInDesignを使う紙面のデザイナーもスムーズに制作に参加できたと語った。
「ゴルフトゥデイ」のiPadアプリ | スイングの連続写真やレッスン動画など、アプリならではの機能を掲載 |
このほか、株式会社ロータスエイトが作成したファッションブランド「HEADPORTER」のカタログアプリや、凸版印刷株式会社が株式会社集英社の協力により作成した「ヤングジャンプ」のグラビアアプリのサンプルなどが事例として紹介された。
大宮エリー氏 |
最後にゲストスピーカーとして、脚本家、演出家、CMプランナーなどとして活躍するクリエイターの大宮エリー氏が登壇。「電子書籍は縦にして読んだり横にして読んだり、文字サイズや行間も変えられたり、読者にたくさんの選択肢を提供できる。自分も編集長になって電子雑誌を出したいと思った」として、オリジナルの電子雑誌を今春にリリースすることを発表した。
関連情報
(三柳 英樹)
2011/2/2 06:00
-ページの先頭へ-