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山と渓谷社、女性向けアウトドア誌デジタル版をAdobeの電子出版ツールで制作

Adobe Digital Publishing Suiteは7月提供予定


山ガールの出で立ちで「Hutte」デジタル版のデモと紹介を行った山と渓谷社の関口まこと氏

 アドビシステムズ株式会社は5月25日、大日本印刷株式会社がアドビシステムズの電子出版ソリューション「Adobe Digital Publishing Suite」を採用、山と渓谷社と共同で制作した季刊誌「Hutte(ヒュッテ、uはウムナウト付き)」のデジタル版を配信したと発表した。デジタル版「Hutte」は現在Vol.2とVol.3を配信しており、Vol.2は無料、Vol.3からは有料で600円となる。

 Adobe Digital Publishing Suite(以下ADPS)を利用して制作したコンテンツ追加型のアプリケーションとしては「Hutte」デジタル版が日本初となる。「Hutte」は2010年7月に創刊された女性向けアウトドア季刊誌で、山と渓谷社は4月26日発売の紙媒体「Hutte vol.03」と同時進行でデジタル版を制作、5月9よりiTunes App Storeで配信を開始した。「Hutte」デジタル版は、紙媒体のデータを端末の画面サイズに変換するだけでなく、動画やアニメーションなどのインタラクティブな機能を組み入れたデジタル雑誌として再編集した。

 山と渓谷社の丸山信人氏は、「山と渓谷社は今年創立81周年にあたり、「DIGITAL+」というコンセプトで電子雑誌の発行を検討。紙の出版でもともとお世話になっている大日本印刷さんに相談して、デジタル版を共同で制作することになった」とデジタル版発行の経緯を説明。

 丸山氏は、「デジタル版では、山の上から360度の風景を見られる『パノラマ画像再生』や、アウトドアファッションを着たモデルの写真を360度、好きな角度から見られる機能などがとくに読者から好評」だと紹介。広告面でも、広告クライアントが持っているコンテンツとの連携が可能で、一枚の写真を使った広告でも、暖炉の炎がアニメーションするなどの効果がクライアントに好評を得ているとした。

 山の上から360度を見渡せるパノラマ画像再生は、大日本印刷がカメラを持ち込んで撮影したもの。山と渓谷社と共同で制作にあたった大日本印刷の吉岡康明氏は、「デジタル版を紙媒体と同時進行で制作するには、デジタル版の編集会議が重要」と述べ、「企画の時点でデジタル版を想定して、デジタル版を見据えた取材方法、企画立案が必須となる」と述べた。

 吉岡氏は、ADPSを使っての制作については、「紙媒体の製版データをデジタル雑誌のデータとして利用する点が従来の制作環境と比べて最も違う点」だと述べた。その後、動画を入れたりパノラマ画像を入れるなどのリッチ化を行い、文字の大きさをターゲットの端末に合わせて調整し、見開きレイアウトを縦スクロールで見せるなどの変更を行うと説明した。ADPSの使い勝手については「使い勝手が良く、習熟しなくてもすぐに使える。また、機能については今後も拡張されると思っているが、われわれが必要だと考える基本的な機能は備えている」として、使いやすさを評価した。

山と渓谷社 丸山信人氏 大日本印刷 電子出版ソリューション本部 吉岡康明氏
紙と同時出版のためのワークフロー Hutte制作で用いたデジタル台割 山の頂上で360度見渡せるパノラマ画像再生は、読者に大好評
製版データを出力したデジタル版のファイルで、文字の読みやすさなどを調整 紙の見開きページは縦スクロールにするなど、内容にあわせて見やすく編集 モデルさんを360%回転させることができ、山ファッションの後ろ姿も確認可能

 

ADPSのサービス開始は7月下旬。CS体験版で電子雑誌制作が試用可能

登山はしないが、Hutteに合わせて山スタイルで登場したアドビシステムズ マーケティング本部 岩本 崇氏

 ADPSは世界で324媒体が利用しており、日本では山と渓谷社、ゴルフトゥデイ社など6社が利用している。アドビのApp StoreやグーグルのAndroidマーケットプレイスでの発行に標準で対応しており、定期刊行物などのようにアプリは無料で配布、中身のコンテンツを毎月配信・販売する発行形式などにも対応する。

 ADPSのサービス提供は7月下旬となる見込み。アドビシステムズが5月20日に発売した「Adobe InDesign Creative Suite 5.5」で、電子雑誌制作を体験することができる。InDesignは無料体験版も提供中している。InDesign体験版でADPSへデータを受け渡すFolio Builderを用いてファイルを出力し、Adobeが無料で提供する無料のオンラインストレージサービスAcrobat.comにアップロード。アップロードした電子書籍ファイルはInDesign体験版や、アドビがApp Storeで配布する無料のコンテンツビューワをインストールしたiPadで閲覧することができる。

 ADPSは、Professional版とEnterprise版の提供が予定されている。

 Professional版は、自社コンテンツをアップルのApp StoreやグーグルのAndroidマーケットプレイスなどですぐに利用できる規格化されたパッケージサービス。プラットフォーム利用費は年間60万円(月5万円)。発行できる媒体数・アプリケーション数に制限はなく、サポート料と年間5000ダウンロード分のサービス費を含む。5000ダウンロードを超えた分については、年間契約でダウンロード数に応じたダウンロードパッケージを購入する必要があり、2万5000ダウンロードまでが62万5000円、2万5000ダウンロードまで425万円、50万ダウンロードまでが700万円。

 Enterprise版は、出版社の自社運営やサードパーティのサイトが利用できるようにカスタマイズできる。すでに自社コンテンツの販売サイトなどを自社で運営しているような大手出版社向け。大部数発行時のディスカウント、自社運営サイトでの決済を利用するためのAPI提供などはEnterprise版のみの機能となる。なお、Adobe SiteCDatalystとの統合はProfessional版でもサポートする。

 アドビではこのほか、契約者が第三者の制作工程を請け負い、サービスを代行する形態のエージェンシー版の提供を検討中。料金など詳細は未定だが、広告代理店や印刷会社などの利用を想定している。

インタラクティブなコンテンツや動画の埋め込みが可能 広告にもインタラクティブな要素を盛り込める コンテンツと広告の効果分析を標準で提供
ADPSの全体の流れ ADPSの制作ワークフロー ADPSのワークフロー
ADPSのワークフロー(アカウントのない制作者ができること) アップル App Store、グーグルのAndroidマーケットプレイスに標準で対応 InDesign 5.5の無料体験版で電子書籍制作を体験できる

 


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(工藤 ひろえ)

2011/5/25 16:59