NFCを使用したスマホのモバイル決済サービス「Google Wallet」米国で開始
米Googleは19日、“Google版お財布携帯”となるモバイル決済サービス「Google Wallet」を米国で開始した。Googleは5月26日に、NFC技術を使用したGoogle Walletを開発し、準備中であることを明らかにしていた。
現時点でGoogle Walletを利用できるスマートフォンは、携帯キャリアSprintで利用できるNexus S4G端末に限られている。しかしGoogleが唱える「オープンな」決済ビジネスが普及し、ショッピングに伴うデータ収集が進めば、Googleにとって大きな商機となる可能性が出てくる。
「Google Wallet」サービス紹介ページ |
現時点でGoogle Walletで利用できるクレジットカードは、Citi MasterCardとGoogleプリペイドカードに限られている。Citi MasterCardの利用者は、そのまま個人情報を入力することによって、Google Walletアプリ(Android対応無料アプリ)に入力して利用を開始できる。それ以外のクレジットカードの利用者は、Googleプリペイドカードにチャージすることで、Google Walletを利用できる。Googleは今年年末まで、Googleプリペイドカード利用者に対して10ドルの無料利用キャンペーンを提供している。
現時点では利用できないが、Visa、Discover、American ExpressもNFC仕様を発表したため、Google Walletの将来バージョンでは、これらのクレジットカードも利用できるようになる見込みだ。
Google Walletでの支払いは、Master PayPassネットワーク加入業者で行える。現時点で加入業者はニューヨークとサンフランシスコで特に多い。これら地域では、コカ・コーラ社製自動販売機やタクシーなどでも利用できるという。そのためGoogle Walletのトライアルではこの地域に重点が置かれていた。ユーザーは携帯を決済端末の上に軽くかざすだけで決済を完了できる。
当初発表されていた通り、Google Walletはセキュリティを重視している。Google Walletアプリは、アプリごとのPIN番号で保護されており、認証情報はAndroid端末の独立した領域にあるチップに暗号化されて保存されている。これらの情報は、適切な認証を受けたアプリしかアクセスできず、Google Walletアプリですら、その一部の情報にしかアクセスしないとしている。このセキュリティが守られるかどうかも、今後の普及にとって重要な試金石となりそうだ。
Google Walletの利用にネットワーク接続は必要ないが、電源を入れる必要がある。「現時点では」もし電池が切れた場合、Google Walletを利用することはできないとしている。そのため、将来的にはこの点は改善される可能性がある。
Google Walletは決済機能だけでなく、Googleのクーポンサービス「Google Offers」や、ポイントカード、ギフトカードに対応。将来的にはAPIを公開する予定で、それによってレシートを受理したり、飛行機の搭乗券やチケットをGoogle Walletアプリに同期できるようにしたい考えだ。APIを使用した銀行独自のサービスが提供されることも期待されている。
プライバシーに関する懸念は当然存在するが、その一方でこれ自体が大きなビジネスになる。Googleもそのことを念頭に置いているようだ。例えば、「現時点でGoogle Walletはユーザーが購入した商品の情報を保存することはしない」と説明しているが、それは将来的には購入商品情報を利用することも排除していないということも言える。また、決済時間と利用された認証情報は保存されている。その上で、ユーザーがオプションで自ら設定すれば、位置情報を決済時間と結び付けることもできる。現時点では設定メニューからユーザー自ら選択しなければ、位置情報が記録されることはない。それ以外に、決済履歴を削除したり、Google Walletアプリの情報をリセットすることも可能となっている。
Googleでは「オープンコマースエコシステム」を目指すとし、そのためにさまざまな決済パートナー、銀行、携帯キャリア、端末メーカー、小売業者と分け隔てなく協力したい意向を表明している。Googleは決済費用を徴収することも、銀行やカード業者との提携費用を徴収することもしないという。それだけに、ユーザーとしてはプライバシー情報の扱いと、それに伴う新たなサービス、利便性に注目していきたい。
関連情報
(青木 大我 taiga@scientist.com)
2011/9/20 11:46
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