スタートアップの次のトレンドは? 160企業を見たVCスタッフの考察
インターネットで起業する環境はますます簡単になってきている。そのため、起業家やエンジニア、投資家たちは、次のトレンドは何だろうかと常に考え続けている。
年末を迎えるにあたって、著名なベンチャーキャピタル(VC)であるUnion Square VenturesのスタッフであるChristina Cacioppo氏が、数カ月間にわたって160以上の企業を見てきた中で考察した次のトレンドを予測した。
同氏によると、2つのトレンドが見られるという。1つ目は、ソフトウェアのコンポーネント業界の誕生、2つ目は、フリーランスや独立事業主の台頭と働き方の変化だ。
ソフトウェアのコンポーネントをコアビジネスとするテクノロジー企業の例として、AmazonやRackspaceのクラウドホスティングサービス、Google Analyticsや、音声・テキストメッセージングのTwilioなどツールのアウトソーシング、iOS通知サービスのUrban Airshipなどを例として挙げた。
こうしたニーズが生じる理由として、ベンチャーインキュベーター「Y Combinator」の参加企業のあるCEOが「このテクノロジーの部品を3つの異なる企業で3回作った。そして4回目に作り、それがいま私の会社が提供しているサービスだ」という言葉を引用し、今までいかに非効率にいわゆる「車輪の再発明」が行われてきたかを指摘している。
同氏はこのトレンドを象徴している企業として、モバイルアプリのバックエンドParse、MongoDBのインスタンスをホスティングするMongoHQ、ユーザー獲得ツールを提供するLaunchRock、ビッグデータのためのカスタマイズされたデータベースのTightDB、サイト利用者へのメール送信の簡略化サービスReportGrid、Google App Engineへのウェブサイトホスティングを簡単にするCoderBuddy、ゲームを複数端末やOSに対応させ開発者を支援するCreative Brain Studiosを挙げた。
もう1つのトレンドとして挙げた働き方の変化について同氏は、仕事はP2Pモデルに移行しつつあるとし、フリーランスやフリーエージェント、独立事業主が増加し、その働き方も時間や場所によって制限されにくくなっていると指摘する。
このトレンドを象徴する企業として、バーテンダーや美容師などの専門職種が雇用主以外のフォロワーを獲得できるサービスのOpez、地元ツアーガイドにマーケティングと決済ツールを提供するVayableやSideTour、グラフィックデザイナーのプロモーションサービスHiptic、クリエイティブ職のためのプロモーションツールZerply、プログラマーが技術をアピールできるInterviewStreetを挙げた。さらに特定の職種を募集できるサービスも多数現れている。校正係のKibin、ブロガーのContently、家庭教師のLearnBop、外国語パートナーのVerbling、自動車レンタルのRidejoy、科学者のScience Exchange、料理の先生のCulture Kitchen、覆面調査員のSpotCheck、書き起こしのMobile Worksなどだ。
こうしたさまざまなスタートアップが登場してくる背景には、Y Combinatorの成功によって注目されるインキュベータープログラムの台頭が挙げられる。これによって、少ない資金で数カ月間集中して開発を行い、投資家にアピールすることができる環境が整い、ますますスタートアップを起こしやすくなっている。こうしたインキュベーターにはこのほかにもTechstars、500 Startups、DreamIt、Excelerate、Seedcampなどが挙げられている。
今後ますます多くのスタートアップ登場が予想され、この2つのトレンドに加え、新たなトレンドが登場してこないかどうか注視する必要がある。
関連情報
(青木 大我 taiga@scientist.com)
2011/11/29 11:43
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