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東大先端研とMS、障害を持つ生徒が入試でPCを利用するための支援ソフトを開発


 東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)と日本マイクロソフト株式会社は、肢体不自由や学習障害の児童・生徒たちが、高校や大学などの入学試験において合理的な配慮を受けられるようにすることを目的とした支援ソフト「Lime(ライム)」を共同開発し、無償で公開した。対応OSはWindows 7/Vista/XP。対応IMEはMicrosoft IMEおよびMicrosoft Office IME 2010。東大先端研と日本マイクロソフトが立ち上げた「学習における合理的配慮研究アライアンス」のサイトからダウンロードできる。

 肢体不自由や書字障害などで筆記用具の使用が困難な児童・生徒は、日常の学習においてPCを利用するケースが増加しているが、こうした児童・生徒が入学試験でPCの利用を希望しても、日本では「日本語入力ソフトの変換候補から漢字の表記がわかってしまう」といった理由で、PCの利用が認められないという事例があるという。

 「Lime」はこうした問題の解決策の1つとして、他の受験生との公平性を保ちながら、障害のある児童・生徒が入学試験においてPCを適切に利用するための機能を提供するソフト。LimeをインストールしたPCでは、キーボードの入力内容や日本語IMEが変換候補として表示していた漢字がすべて保存(ロギング)される。これにより、国語の試験などにおいて、PCを使っている受験生がIMEを利用して不正に漢字を確認していないかといったことを、試験後に確認することが可能になる。

 ソフトは、Windowsが持つアクセシビリティ機能と、Microsoft IMEやMicrosoft Office IMEの機能を活用。開発にあたっては、日本マイクロソフトでアクセシビリティ技術を担当するプログラムマネージャーと、Office IMEの開発を担当するエンジニアリングチームが技術協力を行った。

 東大先端研と日本マイクロソフトでは、これまでも障害のある学生のための大学・社会体験プログラム「DO-IT Japan」に協働で取り組んでおり、今回新しい活動として「学習における合理的配慮研究アライアンス」を発足。「Lime」の利用促進や、入試における配慮についての情報発信を行い、障害のある児童・生徒が学習や進学における合理的配慮を受けられるよう、教育におけるICTの利活用を推進するとしている。

Limeの概要 入力内容や表示された変換候補をすべてロギングする
東大先端研の中邑賢龍教授

 東大先端研の中邑賢龍教授は、米国では障害のある学生が全大学生の10.8%を占めているが、日本の割合は0.27%と大きな格差があると説明。特に、日本では障害のために入試に参加できない生徒の存在があるとして、肢体不自由のある生徒が試験でワープロの利用が認められなかったため、ペイントソフトで文字を書く形で受験したケースを紹介。一方で、今年度の大学入試(推薦入試)では、書字障害のある受験生が日本で初めてワープロによる小論文の筆記と提出が認められ、合格したという。

 現状では、障害のある学生が入試でPCの利用を申請しても、「他の受験生との公平性」を理由に認められないケースが多いことから、まずは国語の問題などでIMEを不正に使用していないことを担保するためのソフトとして「Lime」を開発したと説明。今後はさらに、任意の漢字を変換候補に表示させない機能などの機能の追加も検討しており、障害のある受験生が入試でPCを利用できるようにするための取り組みを進めていきたいとした。

 マイクロソフトディベロップメント株式会社の代表取締役社長で、日本マイクロソフトの業務執行役員最高技術責任者(CTO)を務める加治佐俊一氏は、マイクロソフト製品ではアクセシビリティ向上のための取り組みを進めており、「Lime」のデータ取得も視覚障害者向け読み上げソフト(スクリーンリーダー)などと同じアクセシビリティ技術を利用していると説明。WindowsやIMEなど、どこにでもあるPCで利用できるソフトを提供することで、多くの人が当たり前に支援を受けられる世の中を目指していきたいとした。


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(三柳 英樹)

2012/2/9 17:02