求職者にFacebookのパスワード要求事例相次ぐ~Facebookは法的措置を示唆


 米国内で、企業、大学、政府機関等が、就職面接時にFacebookのパスワードを要求する事例が相次いでいるとの報道が続き、大きな問題となっている。

 これを受けてFacebookは、チーフプライバシーオフィサー署名による声明を発表。同社がユーザーのプライバシーとセキュリティーを守るために、法的措置を含む手段を取る可能性を示唆した。しかしその具体的内容にはまだ踏み込んでいない。

 これまでの報道によれば、米国の政府機関や企業への求職者が面接を受けた際に、Facebookアカウントのパスワード提出を要求されたり、友人リクエストの承認を求められたりする事例があったとされる。また大学の学位取得の際に同様のことを要求された事例もある。拒否した場合、職や学位が得られない可能性があったという。

 FacebookのチーフプライバシーオフィサーErin Egan氏は声明で、「我々はユーザーのプライバシーとセキュリティー保護のために行動をとる。政策決定者との話し合い、また適切な場合には、ユーザーの特権を侵害するアプリケーションの閉鎖を含む法的措置の発動を行う」としている。

 また、ユーザーパスワードを要求することは、企業や大学にとっても法的責任を問われる可能性があることも指摘。求職者の個人情報を知った上で不採用にした場合、差別的行為として訴訟を受ける可能性や、求職者の過去の犯罪隠蔽のために法的問題に巻き込まれる可能性、個人情報を保護し続ける責任が要求されることなど、「企業にとっても決して得策ではない」と主張している。

 この問題は求職者本人に止まらず、求職者の友人にとっても他人事ではない。求職中の友人がパスワードが提出してしまった場合、“友達”である友人の個人情報も合わせて流出することになってしまうからだ。

 約8億人の会員を抱えるFacebookにとって、ユーザーが自由に活動できることは同社の死活問題でもある。だからこそFacebookはこの種のプライバシーについては最重要事項と考えていると表明。ただし、現時点でFacebookがユーザーを守るために、どのような具体的行動を取るのか、また取れるのかについては不明だ。

 日本国内では企業が求職者にパスワードを要求するような事例はあまり聞かないが、従業員がSNSに不用意に書いたひと言が発端で企業がトラブルに巻き込まれる例は増加している。日本ではパスワードを要求するより、サービス利用そのものを禁止する企業があると聞く。日本でもさまざまなソーシャルサービスが利用されており、個人と企業とSNSの利用ルールの問題は、決して対岸の火事ではないだろう。



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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2012/3/26 06:00