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JASRACが“無罪”審決会見、公取委の仕事の仕方が問題と批判


 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が放送事業者と結んでいる楽曲使用料の包括契約に関して、公正取引委員会が同社に排除措置命令を出していた件で、この命令を取り消す審決が12日に出されたのを受け、JASRACが15日、記者会見した。

JASRACの菅原瑞夫理事長(右)と北田暢也常任理事(左)

 会見の冒頭、JASRACの菅原瑞夫理事長が審決について、15日付で同社が発表したコメントを読み上げ、「当協会としては、審判における審査官・当協会双方の主張・立証が十分に吟味された結果として、委員長および委員各位に適正な判断をしていただいたものと考えている。2008年4月の立入検査から4年以上が経過したが、この間、当協会の業務に変わらぬ理解・協力を賜ったことについて、委託者、利用者その他の関係各位に厚くお礼申し上げる」と述べた。

 また、「当協会では、これをひとつの教訓として、今回のような事態を再び招くことがないよう、より広く理解を得やすいものにするという見地から、利用曲目報告の電子化・全量化を関係各位と協力して促進させるとともに、その進ちょく状況を踏まえ、放送分野における使用料徴収方法のあり方について検討を進めていきたい」とした。

JASRACの弁護団。(左から)大江忠・田中豊法律事務所の田中豊弁護士、矢吹法律事務所の矢吹公敏弁護士、橋本綜合法律事務所の藤原浩弁護士、矢吹法律事務所の高木加奈子弁護士

 会見にはJASRACの弁護団も出席。矢吹法律事務所の矢吹公敏弁護士は、審決について「JASRACの言いたいことを、そのままいっていただけたのではないか」と評価するとともに、今回の審決の内容は、公取委の審査手法に対する審判官からの意見だといってもよいと指摘。公取委が審査手法を改善し、今後は客観的証拠を重視する審査を行ってほしいと訴えた。

 大江忠・田中豊法律事務所の田中豊弁護士は、81ページに及ぶ審決文のポイントについて解説。検察の捜査手法が問題視されているのと同様、1つの仮説を立て、その仮設を検証するという公取委の調査手法に対して、証拠収集する際の命題の建て方が間違っていると40ページにわたり指摘しているのが、今回の審決の中身だという。「ある意味、事実認定とそれに対する法的評価は我々が主張した通り。当事者にとっては喜ばしいことだが、公取委の日々の仕事の仕方が、審判官がこれだけ批判するほどなのは、危ぐの念をもたざるをえない」とした。

 なお、菅原理事長は、排除措置命令により経済的なところも含め多大な労力を費やしたのは間違いないが、賠償請求については今後の検討課題であり、同社の理事会・総会の意志によるとした。

 排除措置命令は、2009年2月に出されていたもの。放送事業者では、使用曲数にかかわらず事業収入の一定率を使用料として支払うことで、JASRACの管理楽曲を自由に使用できる「包括的利用許諾契約」をJASRACと結んでいる。一方、JASRAC以外の著作権管理事業者の楽曲を使用するには別途費用が必要になることから、JASRACによる包括契約という行為が他の著作権管理事業者の参入を阻害していると公取委では判断した。JASRACはこれを不服として審判を請求。その後、2011年6月まで13回にわたって審判が行われた後、今年2月になって命令を取り消すとする審決案が示されていた。今回、それからさらに4カ月かかって、公取委も審決案の内容を適当であると認めて正式に審決を出したかたちだ。


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(永沢 茂)

2012/6/15 20:16