高さ13.6mの風力発電設備を備え、クラウドで管理・制御する省エネ住宅発売

Windows Azureや.NET Microを活用


 株式会社益田建設(埼玉県八潮市)は、クラウドを活用した省エネ・エコ住宅の新商品「イデアホーム CoCoLo」を14日に発売するとともに、そのモデルハウスをABCハウジングワールド立川(東京都立川市)にオープンした。太陽光発電パネルや、住宅用としては大出力の風力発電用風車を備えており、発電量や電力使用量などをクラウド経由で確認できるほか、エアコンや蓄熱式床暖房などを外出先などクラウド側から制御できるのが特徴。

「イデアホーム CoCoLo」モデルハウス

 富士ソフト株式会社と日本マイクロソフト株式会社が提供するエネルギーマネジメントシステム(EMS)である「FSGreen EMS」を、益田建設がカスタマイズして「i-HEMS」として提供するもの。

 FSGreen EMSでは、電力量計や温度センサーなどのEMS機器にマイクロソフトの小型機器向け開発・実行環境「.NET Micro Framework」や、組み込み機器向けOS「Windows Embedded」を実装するとともに、それらの機器から送信される各種データの集約先として同じくマイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Windows Azure」を採用。ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の専用管理端末を使わずに、スマートフォンやタブレット端末、PCなどから管理できるようにしている。

 CoCoLoで導入しているi-HEMSでは、家庭用蓄電システム、風力発電システム、各部屋および屋外に設置した温度センサーをEthernetで、配電盤に設置した電力計、給湯器、蓄熱式床暖房を省電力無線で、i-HEMSのホームゲートウェイと接続している。また、各部屋のエアコンは、学習型赤外線リモコンをEthernetでホームゲートウェイに接続し、オン・オフを制御できるようにしてある。

リビングルームでは、Windows 8タブレットなどのタッチ操作によるi-HEMSの操作デモを見られるiPhoneを使って、外出先からという想定で寝室のエアコンを制御するデモ。i-HEMSでは、スマートフォンからログインするとエアコンの制御画面を表示するといった、端末に応じた設定がなされているという

エアコンの制御は、宅内有線LANでEthernet接続した汎用の学習型赤外線リモコン経由で行うリビングルームにも、エアコン制御用の学習型赤外線リモコンを設置

 ホームゲートウェイでは、各種センサーから、消費電力量、商用電力の買電力量、太陽光・風力の発電量、売電力量、蓄電システムの放電量・充電量・消費電力、各部屋の室温・外気温のデータを収集し、定期的にクラウドに送信。クラウド側でこれらのデータを蓄積・加工し、ユーザーがi-HEMSの画面にウェブブラウザーからログインすることでグラフなどのかたちで確認できるほか、エアコンと給湯器(浴槽のお湯張り)を遠隔操作可能だ。さらに蓄熱式床暖房についても、温度や気象条件から蓄熱時間を制御できる機能を追加しているのも特徴。

 なお、i-HEMSに接続された各種機器の制御は、宅内からでもタブレットなどから行えるが、この場合はクラウドは経由ぜずに通信をホームゲートウェイ内で折り返すことでタイムラグを小さく抑えている。一方、外出先などからクラウド経由で制御する場合は、タイムラグが数秒程度発生する。

各部屋に設置されている温度センサー(上)i-HEMS機器や蓄電システムは、玄関正面の階段下スペースに設置

情報ボックス内に、i-HEMSのホームゲートウェイ(モデルハウスでは、OSにLinuxを採用したものを使用。このほか、Windows Embeddedにも対応)やハブなどを収納向かって左がi-HEMSのホームゲートウェイ。右は、蓄電システムや風力発電システム、温度センサーのRS-232CなどのシリアルインターフェイスをEthernetに変換するアダプター

 CoCoLoはクラウドを活用したi-HEMSが特徴だが、それ以上に目を引くのが、出力5kWの風力発電システムだろう。モデルハウスでは、延べ床面積45坪(バルコニーなど含む施工面積60坪)の2階建て住宅の横に、羽の部分の直径が2.4m、支柱を含めた高さが13.6mの真っ白い風車がそびえ立っている。

 この風車には“風レンズ”と呼ばれる羽の回りを囲むリング状のダクトを装備しており、これが風車の下流側の気圧を下げることでダクト内の風速を約1.3~1.4倍に増速。ダクトがない場合に比べて約3倍の出力が得られるという。不安定な風力発電の電力をパワーコンディショナーにより整流する仕組みも備え、一般住宅向けに導入しやすいシステムとして共同開発した。価格は一式450万円。モデルハウスのある立川市のような内陸の平野部ではこの風力発電システムで採算は厳しいが、太陽光と異なり昼夜問わず発電されるため、風が比較的強い沿岸部や山間部では太陽光よりも大きい発電量が見込まれるとしている。

「風レンズ風車」は九州大学が研究・開発したもの。風は、写真向かって左から右へ流れる風力発電システムについて説明する株式会社益田建設企画設計部次長の鈴木強氏

 一方、太陽光発電は3.4~6.8kWで、価格は3.4kwの場合で200~250万円。これにグローバル・リンク株式会社のHEMS対応蓄電システム「GE-VENUS 5000」を接続し、太陽光発電からの電力が蓄電される。GE-VENUS 5000は、リチウムリン酸鉄バッテリーを採用しており、容量は5280Wh。本体サイズは682×445×600mm(キャスター部分を除く)。価格は200万円。

 また、CoCoLoでは風力発電が商用電力と連係しており、風力発電の出力が少ない場合は商用電力を購入。逆に使用電力よりも風力発電量が多い場合は上記バッテリーに蓄電する仕組みだ。商用電力系統とバッテリーの切り替えは30~40msで行われるため、パソコンも使用可能だとしている。

蓄電システムのRS-232Cインターフェイスでは、太陽光発電の発電量、充放電情報、バッテリー電圧および残量のデータ通信が可能HEMS対応蓄電システム「GE-VENUS 5000」の概要

 このほかCoCoLoでは、屋根下の断熱材を厚さ240mmとしているのをはじめ、立川市のモデルハウスでも北海道並みの断熱性能を有することで省エネを実現しているという。制震システムも導入しており、価格は坪単価63万円から(各種設備をオプションとしたベーシックモデルは坪単価47万円から)。

 なお、i-HEMSに使用するセンサーやネットワーク機器の設備コスト自体は20万円程度で、そのうち10万円は補助金を適用できるという。一方、運用コストについては、月額料金制とするか、売り切りで一括払いとするか、具体的な料金体系は実際にCoCoLoを販売する段階で決定するとしている。


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(永沢 茂)

2012/7/17 13:01