au、9月21日より「4G LTE」サービスを開始


高速性をアピール
KDDIの石川氏

 KDDIと沖縄セルラーは、下り最大75MbpsのLTE方式を採用した、新たなサービス「4G LTE」を9月21日より提供する。同社では14日、都内で報道関係者向け説明会を開催し、取締役執行役員専務の石川雄三氏がプレゼンテーションを行った。

 「4G LTE」は、LTE方式を採用したauの新たなサービス。下り最大75Mbpsで通信でき、2013年度には下り最大112.5Mbpsのサービスの提供も予定されている。またスマートフォンをモバイルルーターとして利用できる「テザリング」(有料)が利用できる。

 このほか音声通話の発信~着信を短縮する技術「eCSFB(enhanced Circuit Switched Fallback)」が採用されている。

 発表時点で対応機種は明らかにされていなかったが、石川氏は「9月21日時点での対応機種は1機種」と語った。このため、同日発売の「iPhone 5」で利用できると見られる。ただし本稿で紹介するプランは、auのLTEサービスにおける“正規料金”とのこと。「iPhone 5」向けの料金は、最大2年間にわたってパケット定額サービスが525円安く、テザリングが無料になるなど、正規料金との違いがある。iPhone 5向け料金は、ケータイWatchの関連記事(http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20120914_559802.html)をご覧いただきたい。

利用料

 「LTEプラン」は、月額980円で(誰でも割利用時)1時~21時までau同士の国内通話が無料となる。ISP(インターネットサービスプロバイダ)として月額315円の「LTE NET」が用意される。パケット通信料は月額5985円の「LTEフラット」となる。通信量が月間7GBに達すると、通信速度は128kbpsに制限される。別途、2GBごとに2625円支払うと通信速度の制限がなくなる「エクストラオプション」も利用できる。

 テザリングは月額525円。利用すると、通信量の上限が500MB増えて、最大7.5GB分通信できることになる。なお事前の申し込みが必要。加入手続きはWebサイト、店頭で受け付ける。

テザリング対応テザリングでより自由な通信の活用をアピール

 通話料は、1時~21時のau同士が無料、21時~翌1時、あるいはau以外に宛てた通話は30秒21円。SMS(Cメール)は、au同士で無料、au以外は1通3.15円。無料通話分はない。月額500円(税込)で、au同士の国内通話料が24時間無料になるオプション「au通話定額24」が利用できる。さらに全ての国内通話料が通常の30秒21円から、30秒10.5円と半額になるオプション「通話ワイド24」は月額980円。

LTEプランオプション
固定回線/CATVとのセットによるスマートバリュー適用対象

 「4G LTE」対応のスマートフォンは、auスマートバリューの対象となる。LTEフラットに加入し、指定の固定通信サービスに加入すると、毎月の利用額から2年間は月あたり1480円、2年経過後は月あたり980円が割引される。この点は他社との価格競争において優位な部分、とKDDIでは見ているという。

 留守番電話は月額315円の「お留守番サービスEX」が利用できる。請求書はネット上で確認する形となり、紙の請求書は1つ52円の有料となる。

エリア

 当初は東京23区と政令指定都市など全国の主要エリアで利用できる。2013年3月末時点で、実人口カバー率約96%まで拡大する。

 2.1GHz帯、1.5GHz帯、800MHz帯と3つの周波数帯でLTEの基地局は整備される。当初予定より3カ月前倒しにしたとのことで、まずは2.1GHz帯でサービスが提供され、1.5GHz帯と800MHz帯のサービスはほぼ同時期に開始される見込み。当初は利用できる周波数幅が限られるため、下り最大37.5Mbpsと、スペック値の半分でのサービスとなるが、PHSとの干渉を避けるために用いられてきた帯域(ガードバンド)が利用できるようになり、LTEに10MHz幅×2、3Gに10MHz幅×2が割り当てられ、下り最大75Mbpsとフルスペックのサービスが利用できるようになる。将来的には150Mbpsでのサービスも検討されているが、スケジュールなどは未定とのこと。

当初は2.1GHz帯、下り最大37.5MbpsでスタートPHSのガードバンドが利用できるようになり、3G帯域を圧迫せずに下り75Mbpsを実現できる

 auのLTE端末は、音声は3G(CDMA2000 1x方式)、データは3GとLTEという2方式に対応することになる。このうち3Gのデータ通信は、今後、全てWIN HIGH SPEED(MC Rev.A方式)がサポートされ、下り最大9.2Mbpsになる。

 またLTEネットワークで通信しながら、電話がかかってきた際に、3Gへ切り替える形になる。これは一般的に「回線交換フォールバック(CSFB)」と呼ばれる技術が用いられる。今回、KDDIでは、国際標準の最新(Release 9)で採用されている「eCSFB」を採用したことで、他社のCSFBと比べ、着信までの時間は約半分になるという。また通常のauの携帯電話では音声とデータ通信、両方の電波を交互にチェックする格好だったが、LTEではLTEの電波だけチェックする形になり、バッテリーもより長時間持つことが期待できるとのこと。端末には、LTEをオフにする機能は用意されるが、KDDIでは「ネットワークを最適化しており、基本的にLTEと3G、どのエリアでも使えるようにしている。できるだけオフにせずに利用して欲しい」と説明している。

eCSFBを導入バッテリー駆動時間にも影響するという

 このほかネットワーク関連では、緊急地震速報と緊急速報メール(災害・避難情報、津波警報)もサポート。LTE端末でも、これまでのau端末と同じように、BroadcastSMSによる一斉同報配信になる。

緊急速報にも対応auのLTE端末は3G方式でWIN HIGH SPEED対応になる

最強のスマホネットワーク

 説明を行った石川氏は、「最強のスマホネットワークへ」というテーマを掲げてプレゼンテーションを開始した。これは、同社のネットワーク整備の方針となるもので、LTEでは3つの周波数帯を用い、そのLTE対応機種では3Gも下り最大9.2Mbpsになること、Wi-Fiは5GHz帯に対応することなどが語られた。

 5GHz帯のWi-Fiについては、au Wi-Fi SPOTが20万超(一部除く)、家庭用のWi-Fi HOME SPOTが120万超となる。これまで一般的だった2.4GHz帯のWi-Fiと比べ、利用できる帯域幅が20MHz幅から40MHz幅と倍になっており、今まで利用が進んでいなかったことから現状は空いているとして、より高速で利用できるとアピール。通信が混雑しがちな夕刻の繁華街で測定したところ、2.4GHz帯と比べ、5GHz帯のWi-Fiのほうが約2倍速かったという。

5GHz帯対応のWi-Fiスポットが順調に増加5GHz帯のWi-Fiは空いていて高速
実測で倍だったという

 このほか、auも含め、携帯各社がLTE方式を導入したことになり、今後のSIMロックの取り扱いについて石川氏「現段階では、3Gの方式が異なるため、SIMロックは現状のまま」とコメント。携帯各社のLTE対応端末では、音声通話を利用するには3Gのネットワークが必須となるため、auと他社の3Gにおける方式の違いが当面影響するとの見方が示された。

iPhone向けプランは別途発表

 今回の会見では、iPhone向けプランについては触れられず、会見終了にあらためて発表された。iPhone向けプランについて一切触れなかった石川氏は、「端末ごとに利用料が異なっていくことになるだろう」とコメント。ただ「Windows Phoneを含めて、どのプラットフォームに対しても特別料金ができるということか」と問われると、歯切れ悪く「そうですね……」と述べ、iPhone向けには特別な価格設定を行うことは否定しない一方で、iPhone以外の機種で、今回案内された“正規料金”と異なる、特別な価格が用意されるかどうか明言を避けた。

 今後のARPU(ユーザー1人あたりからの収入)は、今年度中に下落傾向に歯止めを掛ける計画で進めていると石川氏は説明。iPhone向けプランでも、そうした計画を達成するとした。


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(関口 聖)

2012/9/14 19:42