InDesignからiPadアプリを書き出すツール、「Adobe Creative Cloud」に追加


 アドビシステムズ株式会社は、同社のクリエイティブ系ソフトウェア製品群「Adobe Creative Suite 6(CS6)」シリーズを月額料金制で利用できるサービス「Adobe Creative Cloud」において、個人・小規模企業向けの電子出版ツール「Adobe Digital Publishing Suite Single Edition(ADPS SE)」を追加した。

 ADPS SEでは、DTPソフト「InDesign CS5/5.5/6」でインタラクティブコンテンツを作成して、iPad向けアプリとして書き出せる。定期刊行物は扱えず、単発コンテンツに限られるという制約はあるが、個人のデザイナーやフォトグラファー、学生、教職員などが自身の作品集や教材などをiPadアプリとして配布する際などに向いているという。コーディング不要で使えるのも特徴。App Storeのアップデート通知にも対応している。

 ADPS SEはすでに単体製品が2万9800円で販売されているが、制作する1アプリごと同料金が発生する料金体系だった。今回、それがCreative Cloudの月額料金内(月々プランの場合で月額8000円、年間プランの場合で月額5000円、学生・教職員版が月額4000円)で利用でき、制作・配布可能なアプリの数も無制限となっている。

 Creative CloudのADPS SEでは、InDesign CS6との組み合わせにより、アプリ制作時における制作ワークフローも簡略化した。

従来のワークフロー簡略化したワークフロー

 まず、InDesign CS6の「代替レイアウトの作成」「リキッドレイアウト」という機能により、iPadの縦・横画面に対応する2種類のレイアウトおよび高解像度の第3世代iPad用レイアウトを1つのファイルで管理できるようになったとしている。

 さらに、従来は.folioファイルへの書き出しなどの処理を、ADPSのウェブサイトにログインし、サーバー側の機能をウェブブラウザー上のダッシュボードから操作することによって行っていたが、多くの作業をローカル側のInDesign上で行えるようにした。具体的には、InDesign CS6の「Folio Builder」パネルにおいて.folioファイルを書き出しが可能。これを、USB接続したiPadのADPSビューアーアプリからプレビューすることで、ローカル環境でiPad実機による動作確認まで行える。ログインしてサーバー側で処理する作業は、最終的にiPadネイティブアプリ化(.ipa/.zipファイルの作成・ダウンロード)する際に行えばよくなった。

InDesign CS6の「Folio Builder」USB接続したiPadでのプレビュー

 なお、クラウド側で.folioファイル書き出し、ビューアーアプリ化などを行う従来のワークフローも選択できる。複数スタッフで制作する場合などは、クラウド経由で作業を進める従来のワークフローを使えばよい。

 ADPS SEの書き出しアプリは現在、iPadのみの対応だ。iPhoneアプリについても検討しており、開発に着手しているが、提供時期などについては未定。

Illustratorの新機能、Creative Cloudで先行公開

 Creative Cloudでは、InDesignのほか、Photoshop、Illustrator、Flash Pro、AcrobatなどすべてのCS6ソフトウェアとともに、クラウドストレージやウェブサイトホスティングなどのサービスも含まれている。アプリや機能の追加・アップデートも逐次行っており、今年5月のサービスの提供開始後、画像管理ソフト「Lightroom 4」やウェブサイト制作ソフト「Muse 2.0」が追加された。さらに今回、9月19日からADPS SEを提供開始。同じく9月中にはHTML5アニメーション制作ソフト「Edge Animate」をリリースする予定だ。

Adobe Creative Cloudで提供するソフト/サービスAdobe Creative Cloudのロードマップ

 8月末に行われたIllustratorのアップデートでは、単体製品にはまだ搭載していない新機能をCreative Cloud向けに先行公開した。

 まず、InDesignに搭載されていたようなファイルの「パッケージ」機能をIllustratorにも搭載。Illustratorで作成したファイルに使用されている画像やフォントなど、ファイルの受け渡し時に必要となるファイルを簡単に収集できる。また、使用されている画像を表示する「リンクパネル」の機能を強化し、サムネイルとファイル名に加えて、解像度や配置場所、カラーモードなどの情報をプルダウンで確認できるようにした。さらに、ファイルに使われている埋め込み画像をPSD/TIFFファイルとして生成する「埋め込み解除」機能も追加し、旧バージョンのファイルなどで使用している画像の修正をやりやすくしたとしている。

 アドビシステムズでは、今回のIllustratorのアップデートを皮切りに、Creative Cloudで提供しているソフトの新機能追加を他のソフトにも実施していく予定だ。

Illustratorの「パッケージ」機能機能強化した「リンクパネル」

「埋め込み解除」機能Adobe Creative Cloudのアップデート内容について説明したアドビシステムズ株式会社マーケティング本文の西山正一氏(右)と岩本崇氏(左)

 このほかアドビシステムズでは、CS3/4/5/5.5の単体製品もしくはスイート製品の登録ユーザー向けに用意しているCreative Cloudの割引料金版を継続することも決定した。割引料金版は、Creative Cloudの提供開始に合わせた「発売記念版」として、当初は8月末まで受け付けの予定だったが、名称を「特別提供版」に変更し、9月以降も継続して販売する。利用開始から1年間、Creative Cloudを月額3000円で利用可能だ。


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(永沢 茂)

2012/9/19 11:00