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「あと1年でサポート終了」、日本マイクロソフトがWindows XPからの移行支援を強化
(2013/4/9 18:45)
日本マイクロソフト株式会社は9日、Windows XPとOffice 2003のサポート期間が1年後の2014年4月9日(日本時間)に終了することをあらためて告知するとともに、今後の1年間を最新のPC環境への「移行支援強化期間」に位置付け、各種支援を提供すると発表した。
2014年4月のサポート終了に向け、企業内PCの移行を促進
Microsoftのライフサイクルポリシーでは、発売後5年間はセキュリティ対策のみならず、機能向上を目指した改善を行うメインストリームサポート、5年経過後は、セキュリティ対策などを提供するさらに5年の延長サポート(エクステンデッド・サポート)が提供されることになっていた。
ただしWindows XPでは、「Windows Vistaの発売が当初計画よりもずれたため、メインストリームサポートが7年半あり、合計で12年半のサポート期間になった」と、日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏が説明するように、法人向けのProfessionalから個人向けのHome Editionまでの全ラインアップに対して、2014年4月までのサポート期間が設定されている。
Windows XPは、前述のようにWindows Vistaが遅れて登場したこと、またそのVistaの評価がそれほど高くなかったこともあり、販売がかなり長期にわたって行われたため、相当な数のWindows XP搭載PCが市場には出回っている。樋口社長が引用したIDC Japanの調査によれば、国内法人市場におけるインストールベースは現在でも約40.3%、1419万台(2012年11月現在)という膨大な数で、これらのPCをあと1年で新しいOSへ置き換えるには、かなり広範な啓発活動と、相当綿密な準備が必要になる。
今回のサポート期間終了も突然決まったわけではなく、「2007年はじめに設定された期日であり、その時も大々的に告知を行った」(樋口社長)ほか、その後も折に触れてサポート期間の話は言及されてきたが、あまり周知されているとは言いがたい状況だった。そのため今回、移行支援強化期間として、法人向けに本格的な訴求活動を行うことになったわけだ。
具体的には、特設サイトや広告などでサポート終了の周知や移行情報の提供などを行うほか、「どういったことを行えばいいのかがわからない、ITマネージャが不在の中堅・中小企業を支援するため、『Windows XP&Office 2003サポート終了ご相談窓口』をフリーダイヤルで設け、4月8日より提供する」(日本マイクロソフト 執行役 ゼネラルビジネス ゼネラルマネージャーの高橋明宏氏)とのこと。
また、「Windows XP&Office 2003移行支援キャンペーン」として、Windows XPおよびOffice 2003から最新PC環境へアップグレードする場合は、通常価格の15%引きでアップグレードライセンスを購入できる。一方Officeについては、4月より開始されている新Office 365へのキャッシュバックキャンペーンも合わせて訴求し、既存PC環境の移行を推進するとした。
さらに、日本マイクロソフト1社ではWindows XPをまだ使っている企業ユーザーへリーチしきれないことから、全国360社のパートナーと協業。PCメーカーによる推奨モデルの紹介と各種キャンペーンの実施を行う一方で、システムインテグレータを中心とするソリューションパートナーとは、企業ユーザーのOS/Office移行を支援するさまざまなサービスを取りそろえ、移行を行う企業の負担を軽減するという。
パートナーを代表して登壇したリコージャパン 専務執行役員の窪田大介氏は、「当社でもWindows 8/Windows 7などへの入れ替えをサポートしてきたが、まだまだ道半ばであり、多くのお客さまがWindows XPで業務を続けているのが実態。移行作業には、認証やセキュリティの設定、アプリケーションやデータの移行がくっついてくるため、1台のPCを入れ替えるのにも多くの時間がかかるし、事業を遂行しながらでの移行を希望されるので、準備も複雑になる。また、来年4月にはどうやら消費税率も変わりそうで、IT部門はそのためのさまざまな対応もしないといけないため、年明けはリソースが足りなくなってくる。Windows XPのサポート終了後どうするかという方針は、どんなに遅くとも9月までには決定していただくべきだろう」と述べ、企業は移行方針の策定を後回しにすべきではないと訴えた。
サポート終了後のOSを使い続けるのは危険、最新OSへの入れ替えを
では、なぜWindows XPのサポート切れが問題になるのだろうか。それは、セキュリティパッチも提供されなくなるため、新たに見つかったセキュリティ上の脅威に対して無防備になるからだ。
Windows XPのPCがすぐに利用不可能になるわけではないが、独立行政法人情報処理推進機構(IPA) 技術本部 セキュリティセンター 調査役の加賀谷伸一郎氏は、「Windows XPやOffice 2003に影響のある脆弱性は今も見つかっており、サポートが終わった後でも脆弱性がなくなるわけではない。(セキュリティパッチが提供されないことで)不正アクセスに合いやすくなるので、使い続けるのは危険だ」と警告する。
また日本マイクロソフトによれば、そもそもWindows XPのOSとしての構造が古いため、そろそろ限界に来ているのだという。日本マイクロソフトの樋口社長は、「Windows XPが登場した2001年~2002年当時は、ネットワークワームやウイルスに対してWindows XPでも防ぐことができたが、その後マルウェアも進化しているため、新しいOSにはマルチレイヤのセキュリティを組み込み、標的型攻撃への備えをしている」との違いを説明。その上で、「Windows XPはいわば耐震構造が十分でない建造物のようなもので、対策しても限界がある。新しい堅牢なOSへ移行していただけるよう、会社をあげて取り組んでいく」と述べた。
一方、「スタンドアロンで使っているのであればWindows XPを使い続けても大丈夫」という声に対しては、日本マイクロソフト チーフセキュリティアドバイザーの高橋正和氏がこれを否定。「実は、日本は過去、世界でもっともウイルス感染率が低い国だったが、USBメモリで感染を広げるConfickerが広まった結果、17位まで落ちたことがあった。何らかのウイルスに感染することで、PCが使えなくなったり、データが破壊されたりする可能性がある。スタンドアロンだから大丈夫と思うのではなく、現在の脅威に対応した新しいOSにしていただくのがいいと思う」と述べ、危険性を警告している。