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Twitterで大失敗をやらかす前に――バンダイナムコが小学生向け仮想空間

たまごっちのキャラとリテラシーを学べる「TamaGoLand」開設

 株式会社バンダイナムコゲームスは、6〜12歳の小学生を対象にしたネットサービス「TamaGoLand(たまGOランド)」を5月1日から正式提供すると発表した。仮想空間内で「たまごっち」のキャラクターと遊びながら、ネット上でのコミュニケーションのやり方などを身に付けていけるという。利用には、バンダイナムコグループのサービスの共通IDである「バンダイナムコID」が必要。料金は基本無料で、サービス開始当初はPCのみに対応する。

TamaGoLand内にある街「たまGOタウン」 (C)B・W/T・T (C)NBGI

 たまごっち星にTamaGoLandという島ができたという設定で、「遊ぶ」「カスタマイズ」「コミュニケーション」という3つの要素を盛り込んだサービスを開発した。ユーザーは、たまごっち星に住んでいる8種類のキャラクターの中から自分のキャラクターを1人選び、島内のさまざまな場所を訪れてコンテンツを楽しんだり、他のユーザーと交流する仕組み。

 用意されているコンテンツとしてはまず、知育パズルやミニゲームがある。東京書籍と共同で開発したとしており、子供からすれば遊びとして楽しめるが、数の問題や計算問題として勉強の延長となるよう学習要素を盛り込んだ。パズルは1日1回までプレイでき、制限時間が設定されており、クリアすると仮想通貨がもらえる。

パズル (C)B・W/T・T (C)NBGI

 また、島内の街にはたまごっちのアニメのキャラクターがおり、おつかいや人助けなどの「クエスト(ミッション)」を提示してくる。ミッションをクリアすることでも仮想通貨がもらえる。

 ためた仮想通貨は、島内の店舗でアイテムなどを購入するのに使うことができ、シールで自分のキャラクターをデコレーションしたり、ユーザーごとに用意された「マイルーム」に家具を置くなど、カスタマイズが楽しめる。

 このほか島内には、マウスクリックによりアクションが起きるギミックなど、主に低学年向けの仕掛けもある。

「たまもり」と呼ぶキャラクターのデコレーションの例 (C)B・W/T・T (C)NBGI
家具によるマイルームのカスタマイズの例 (C)B・W/T・T (C)NBGI

ネット上の発言は人に見られていることを意識させる仕組み

 コミュニケーションの要素としては、「たまとも」と呼ぶフレンド機能がある。島内で遊んでいる他のユーザーのプロフィールを参照することができるようになっており、気の合いそうなユーザーにはフレンド申請を出すことが可能だ。相手から承認されてたまとも同士になると、メッセージのやりとりが可能になる。

 メッセージは、タブレット端末を模した「たぶれっち」という画面上で行い、文章やスタンプでメッセージを作成可能だ。送受信した個々のメッセージは、たぶれっちの画面に付せんのように並んで表示される。

「たぶれっち」のメッセージ機能 (C)B・W/T・T (C)NBGI

 メッセージ機能は、子供がSNSなどのネットでのコミュニケーションに慣れていくのに重要な要素である一方で、子供にとって最もリスクになりやすい部分でもあることから、ユーザーの理解状況に応じて段階的に使える機能が解放されていくのが特徴だ。

 ユーザーはまず最初にメッセージ送信の基礎について、TamaGoLandでレクチャーを受ける。すると、まずスタンプのみを送信できるようになる。さらに応用のレクチャーを受け、内容を理解しているかどうか判定するテストに合格して、ようやくテキストによるメッセージを送れるという流れだ。

 レクチャーの内容は例えば、「メッセージでは、『自分がそのメッセージをもらったらどう思うか』を考えることが大切です。送信ボタンを押す前に、相手の気持ちになって考えましょう」「テキストに、名前/学校名/住所/電話番号/メールアドレス/ID/パスワードを書くことはいけません。たまともの情報も書かないようにしましょう」といったものだ。

段階的な機能解放の流れ

 当然ながら、投稿監視の仕組みもある。住所や電話番号などの書式、あるいは「会いたい」といった禁止ワードはシステムで検出して送信できないようになっており、ブロックした場合は、その旨がユーザーに通知される。さらに機械的な対応では漏れてしまう表現・記述や、いじめに該当するようなメッセージなどについては、イー・ガーディアンによる24時間体制の目視監視で削除していく。

 また、オープンコミュニケーションとしている点も特徴だという。個々のメッセージは1対1のたまとも同士でやりとりされるが、すべて公開されており、TamaGoLandのユーザーであればたまともであるかどうかにかかわらず、そのユーザーがどういったメッセージをやりとりしているか閲覧できる。ウェブ上で人に見られていることを意識させることで、ルールを守りたくなる環境を創出するのが狙いだ。

オープンコミュニケーション

 バンダイナムコゲームスの栗田穣崇氏(ネットサービス推進部ゼネラルマネージャー)は、自身が発信したメッセージが公開される仕様について、「Twitterに似ている」と説明する。「子供の時から、ネットの発言は多くの人に見られているという体験をすることが、ネットリテラシーを学んでいく上で重要と考え、このようなシステムにした」。

 なお、子供のIDを把握していれば、保護者自身がTamaGoLandのユーザーになって入場することで、子供のやりとりしたメッセージを確認できる。TamaGoLandは小学生向けのサービスだが、ユーザー登録に年齢制限はなく、大人でも登録・利用可能(プロフィールには、バンダイナムコIDに登録した生年月日に基づく年齢が表示される)。

株式会社バンダイナムコゲームスの栗田穣崇氏(ネットサービス推進部ゼネラルマネージャー)

子供が小さな失敗をしながらリテラシーを身に付けられる場に

 栗田氏によると、TamaGoLandが目指したのは、「子供にとって初めてのネット体験の場」。海外では、北米を中心に1億人以上が利用しているというディズニーの「CLUB PENGUIN」や、欧州を中心に利用が拡大している「Moshi Monsters」など、子供が楽しみながら利用でき、保護者にとっても安心して利用させられるネットサービスが提供されているという。これに対して日本ではこうしたサービスがなく、子供が初めてソーシャルサービスを始めようとした際に「ソフトランディングできる環境がない」。大人がいるようなサービスにいきなり飛び込んでいくしかなかったことから、「ずっと子供とよりそってきたバンダイナムコグループとしては、楽しみながらネットの使い方を学べるサービスを世の中に出していく使命がある」として、TamaGoLandを提供することにした。

 たまごっちのキャラクターを採用したのは、親子2世代で楽しめることがあるという。1996年に携帯型育成ゲームとして初代製品が発売されてから17年目を迎え、当時ブームだった時に高校生や20代前半だった世代が、今はちょうど小学生の子供がいるぐらいの保護者の世代にあたる。また、2009年からはたまごっちのアニメも放映しており、就学前の年齢でアニメを見てたまごっちを知った子供が、現在は小学校高学年になっている時期にもあたる。さらに、暴力的なバトルがあるわけではない、ほのぼのとしたフレンドリーな世界観や、もともとデジタル玩具から生まれた世界観が、目指すネットサービスと親和性があるとの判断もあった。

 栗田氏はまた、「子供が小さな失敗を通して成長できる場」であることも、TamaGoLandで目指す姿だと語る。

 前述のように送受信したメッセージはユーザー全員に公開されるため、何か問題のあるメッセージを発信すれば“炎上”のような体験をする可能性もある。一方、監視により不適切な内容を削除されるなど問題が発生したユーザーに対しては、使える機能が制限され、再びレクチャーを受けてからでないとメッセージ機能が使えなくなる仕組みだ。原則的には、TamaGoLand内でのこうした小さな“失敗”を繰り返しても強制退会させられることはなく、失敗しながらもリテラシーを身に付けてもらいたいというスタンスだ。

 「小さいところで痛い思いをしても、1回転んでも立ち上がれるよう、我々が支えてあげられるような場を作ってあげたい。大人になってTwitterがオープンな場であることを知らずに、何か大きな失敗をやらかす前に、子供の中だけで小さな失敗を許容できる場にしていきたい。」(栗田氏)

 25日に開催された記者発表会では、お茶の水女子大学大学院の坂元章教授も登壇。坂元教授によると、以前は子供のネット利用に関する問題に対して、携帯電話などを全く使わせずに、子供から遠ざようとの考えが強かったという。確かにその間は安全ではあるが、ネットを使わなければ当然ながらリテラシーは身に付かず、ある日、大人になっていきなり危険な環境に入っていくことになる。しかし最近ではリテラシーを伸ばすことの重要性が認識されてきており、子供にネットを徐々に使わせていき、慣らしていくことが必要になってきたと説明。安全性のためには利用できるサービスや機能を段階的に拡大させていく考え方が重要だとした。

お茶の水女子大学大学院の坂元章教授。子供の成長段階やリテラシーの習熟度合いに応じて利用を許可する範囲を拡大していく「インターネットの段階的利用モデル」(関連記事を参照)を以前から提唱しているが、サービス自体のシステムとしてこの仕組みを取り入れているのは新しいという

月額525円の有料会員サービスも提供予定

 TamaGoLandは、当初は無料サービスのみだが、今夏からは有料会員サービスも開始する。月額525円を予定しており、有料会員には遊べる/学べるコンテンツや購入できるアイテムを拡充する。料金を定額制にすることにより、ソーシャルゲームで問題となった子供による高額課金のリスクもないとしている。

 また、スマートデバイスにも順次対応していく予定だ。単に子供がタブレット端末などからTamaGoLandを利用できるというだけでなく、保護者がスマートフォンから楽しめるパズルなども用意。それを解いてためた仮想通貨を、子供へのご褒美などとしてプレゼントできるような仕組みも追加したいとしている。

(永沢 茂)