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トレンドマイクロがスマホ向け「3D戦略」、データバックアップアプリ発売

 トレンドマイクロ株式会社は15日、コンシューマー向けモバイルデバイス用製品における「3D戦略」を発表するとともに、その一環としてAndroid向けデータバックアップアプリ「トレンドマイクロ セーフバックアップ」の提供を開始した。あわせて、すでに提供中のセキュリティ対策アプリ「ウイルスバスター モバイル」とバッテリー管理アプリ「トレンドマイクロ バッテリーエイド」も16日よりのアップデート版の提供を開始する。

 「3D」とは、1)多様化するデバイス環境を保護するための「デバイスプロテクション」、2)クラウドやSNSを安全に楽しむためのデータ保護を目的とした「データアクセス」、豊富なアプリをより安全に利用できる環境を提供するための「ダウンロードアプリ」――という3つの「D」の領域にフォーカスして製品を開発・提供していくというもの。

コンシューマー向けモバイルデバイス用製品における「3D戦略」

 今回新たに提供を開始したセーフバックアップは、このうちのデータアクセス領域の製品にあたる。Android端末内の連絡先、カレンダー、発着信履歴、SMS履歴、写真、音楽、動画データのうち必要な項目を選択し、トレンドマイクロが運営するオンラインストレージにバックアップしておける。バックアップしたデータは同じ端末に復元できるほか、別の端末に移行することも可能だ。対応OSは、Android 2.1/2.2/2.3/3.0/3.1/3.2/4.0/4.1/4.2。

 価格は、Google Playで販売する月額版が170円、トレンドマイクロ・オンラインショップで販売する1年版が1890円、2年版が3570円。なお、これは1ユーザーあたりの金額だ。提供されるオンラインストレージ容量6GBの範囲内であれば、1ユーザーで複数のAndroid端末にインストールして利用できる。

 無料版も用意しており、オンラインストレージ容量が1GBと制限されるが、30日間フル機能を試用可能。その後は、有料版を購入するか、無料版のまま継続するか選択するかたちとなる。無料版として使い続ける場合は、バックアップできる項目が連絡先、カレンダー、発着信履歴のみとなる。

「トレンドマイクロ セーフバックアップ」

 ウイルスバスター モバイルは、3D戦略の3つの領域を包括的にカバーする製品にあたる。既存バージョンでは、不正アプリ検出機能、個人情報漏えい防止機能、詐欺・有害サイトへのアクセスブロック機能、端末盗難・紛失対策のための遠隔ロック/データ消去機能、迷惑SMSブロック機能を提供しているが、今回のアップデートでセーフバックアップとの連携機能を搭載した。両アプリをインストールしている環境では、メニューの「データバックアップ」の項目からセーフバックアップを起動できるほか、ウイルスバスター モバイルのメイン画面にも、直近にバックアップされた項目がアイコンとともに表示される。対応OSは、Android 2.2/2.3/3.0/3.1/3.2/4.0/4.1/4.2。店頭価格はオープンプライスだが、Google Playおよびトレンドマイクロ・オンラインショップでの販売価格は、1デバイスあたり1年版が2980円、2年版が5480円。

「ウイルスバスター モバイル」のアップデートによる「トレンドマイクロ セーフバックアップ」との連携

 同じくアップデート版が公開されるバッテリーエイドは、3領域のうちダウンロードアプリの分野に対応する製品。インストールしてある各種アプリのバッテリー消費量を格付け表示する機能、Wi-Fiのオン/オフや画面の明るさの設定によりバッテリー消費を最適化する機能、電話およびSMS以外の通信機能をまとめてオフにする「電話専用モード」などの機能を備えている。それに今回、設定された間隔で自動的にWi-Fi/3G/4G/ Bluetoothなどをオン/オフしてバッテリー消費を節約する「おまかせeco設定」機能が追加された。Android 2.2/2.3/4.0/4.1/4.2に対応しており、Google Playおよびトレンドマイクロ・オンラインショップでの販売価格は1デバイスあたり1年版が630円、2年版が1050円。

「トレンドマイクロ バッテリーエイド」のアップデートで追加された「おまかせeco設定」

年内にiOSセキュリティ製品も投入予定、iOSアプリもリスク評価

 15日に行われた記者発表会では、同社の大三川彰彦取締役副社長が3D戦略について説明。コンシューマーを取り巻く環境が従来のPC中心のものから多種多様なデバイスへと移行するに連れ、スマートフォンやタブレットなどモバイルデバイスの紛失・盗難・不正アクセスのリスクが増大するほか、クラウドやSNSの利用拡大によるプライバシー情報漏えいのリスク、豊富なアプリが提供されると同時に不正アプリやウイルスのリスクも増大していると指摘。デバイスプロテクション、データアクセス、ダウンロードアプリという3D戦略は、こうしたコンシューマーが直面しているそれぞれの課題に対応する製品を、「セキュリティ」と「使い勝手」を両立させながら提供するものだという。

「デバイスプロテクション」領域の製品
「データアクセス」領域の製品
「ダウンロードアプリ」領域の製品

 データプロテクションの領域では今後、盗難・紛失対策サポートサービスを2013年第3四半期に開始するほか、第4四半期にはウイルスバスター モバイルのアップデートも予定している。また、iOS向け製品も企画中だとしており、デバイスプロテクションの領域で第4四半期からiOSセキュリティアプリの提供開始。あわせてダウンロードアプリの領域でiOSアプリのレピュテーション(評価)の提供開始を目指している。このほか、データアクセスの領域では、第4四半期に提供開始予定でプライバシー対策サービスを企画中だという。

「3D戦略」製品・サービスのロードマップ

 トレンドマイクロによると、同社が解析した約240万個のAndoridアプリのうち、不正アプリが累計50万個以上あり、しかもその約2割は公式アプリマーケットであるGoogle Play上で配布されたものだった。また、約240万個のうち約3割がバッテリー消費の大きいアプリ、約2割がプライバシー漏えいリスクのあるアプリだったという。

 トレンドマイクロでは、クラウド型アプリ評価サービス「Trend Micro Mobile App Reputation(MAR)」を運用しており、アプリマーケットをクロールして各アプリの脅威を検証。プログラムのコードや挙動について、静的解析や実際に動作させてのチェックにより、プライバシー侵害リスクのあるアプリや、システムリソース消費量の大きいアプリも特定しているという。このMARの評価結果をユーザーが活用できるようにしたのが、ウイルスバスター モバイルなどのフロントエンドのツールだ。

 MARは現在、AndroidおよびSymbian向けアプリに対応。第3四半期をめどに、アプリマーケット上で配布されるアプリのカテゴリーと実際の内容の整合性を照らし合わせる「カテゴリー分析機能」を追加する強化を予定している。これにより、パズルゲームを装ったアダルト系アプリなどを検知し、ユーザーが意図しないアプリの利用を防止できるという。

 また、前述のiOS向けセキュリティ製品の投入に向け、MARにおいてiOSアプリへの対応を行う。電話、位置情報、端末IDなど、アプリがアクセスするプライバシー情報を分析・評価し、より安全なiOSアプリの利用を支援するとしている。

 トレンドマイクロでは、MARのトレンドマイクロ製品での活用のほか、バックエンドソリューションとしてもアプリマーケット運営事業者などへ提供していく方針。

トレンドマイクロ株式会社の大三川彰彦取締役副社長
トレンドマイクロ株式会社上席執行役員・コンシューマビジネス統括本部長の大場章弘氏

(永沢 茂)