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電子書籍を紙に製本して販売、「フエルアルバム」のナカバヤシが矛盾に挑戦

 「フエルアルバム」でおなじみのナカバヤシ株式会社は21日、電子書籍の“製本版”の販売を開始したと発表した。合同会社電子本が発行する作家発の電子書籍「AiR(エア)」を、A5判・309ページの箔押し上製本(ハードカバー)に仕立てた。価格は2940円。「今あえて、電子書籍を製本するという試み。現代だからこそ矛盾に挑戦します」としている。

 AiRは、紙の書籍を電子化するのではなく純粋な電子書籍として、出版社を介さずに作家から読者に向けて直接発信するというプロジェクト。瀬名秀明氏ら各分野の第一線の作家が集まり、2010年にスタートした。現在、第3号までリリースされており、iOSとKindleに対応している。

 一方、ナカバヤシでは、紙の上製本を1部から製作・販売できる書籍の受注・製本・出版サービスサイト「中林製本所」を運営。作品のPDFデータを提供することで、同サイト上で書籍を販売できる自費出版サポートサービスも提供している。

 今回、ナカバヤシが販売を開始したのは、AiRを再編集した「中林製本版」。瀬名氏の小説「魔法」、前野隆司氏の「平安デジャブ」など8作品を収録している。

 ナカバヤシでは、「あえて電子書籍を製本し、紙の書籍にすることで、『本』とはそもそもなにか、作品の面白さとはどこにあるのか。“製本版電子書籍”というパラドキシカルな共同企画で、模索してみたい」とコメント。

 また、AiR編集人の堀田純司氏は、「デジタルが身上の『AiR』の製本版をつくることはある意味で矛盾しているのですが、“個人でも出版社に負けない品質で本をつくることができる。そうした電子書籍の可能性を実践する”というのが、電子書籍『AiR』の企画意図のひとつでした。紙でも公開することで、『AiRに収録されている作品は、デジタルやアナログであること以前に“まずそもそも面白いんだ”』と、伝わりやすくなるといいなと思っています。出来上がった製本版電子書籍『AiR』は、ただ紙にしただけではない、丁寧で書物への思いやりのある仕上がりでした」とのコメントを寄せている。

 AiR中林製本版の収録作品は、以下の通り。

  • 巻頭グラフ「横山裕一、豊潤の世界」
  • 「平安デジャブ 抱擁国家、日本の未来」前野隆司(慶應義塾大学大学院SDM研究科教授)
  • 「魔法」瀬名秀明=文/むらかわみちお=画
  • 「背徳の食卓〜やっちゃいましたと言ってみたくて〜」岡田有花=文・絵
  • 「歴史、政治体制、ロボットアニメ」本郷和人(東京大学史料編纂所教授)
  • 「『電子書籍が儲からない』は嘘である」中村祐介(エヌプラス代表)
  • 「IT革命と相撲」カレー沢薫=文・漫画
  • 「1969 バブル世代に生まれて」堀田純司

(永沢 茂)