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UQに2.5GHz帯追加の認定書――下り110Mbps「WiMAX2+」提供へ

 29日、総務省において、2.5GHz帯の新たな帯域を割り当てる認定書がUQコミュニケーションズへ交付された。外遊中の新藤義孝総務大臣の代理である、稲田朋美総務大臣臨時代理国務大臣の名義で、柴山昌彦総務副大臣から、UQ代表取締役社長の野坂章雄氏へ、認定書が手渡された。認定式には、KDDI代表取締役社長で、UQ会長でもある田中孝司氏も同席した。

認定書を手渡す柴山副大臣(左)と受け取るUQ野坂社長(右)、野坂氏の後方に田中氏

 2.5GHz帯は、BWA(Broadband Wireless Access、無線高速データ通信)用の帯域として利用されており、今回、2625~2645MHzという新たな帯域がUQへ割り当てられることになった。

 認定書を手渡す際には、MVNOを促進すること、停電対策や通信障害の防止など信頼性向上に努めるなど4つの条件が柴山副大臣からUQ野坂氏へ伝えられた。この追加条件は、26日の電波監理審議会で示された答申と同じ内容となっている。

割り当てられた帯域

下り最大110Mbpsのサービス提供へ

認定書を見せる野坂氏(右)と田中氏(左)

 認定書交付の後、囲み取材に応じた野坂氏は、電波を有効利用して、国民に役立つサービスを提供すると柴山副大臣に述べてきたといい、認定書を得たことに「ほっとした」と笑顔を見せる。

 UQでは、今回、これまで30MHz幅を使って提供してきたWiMAXサービスに加えて、10月末から20MHz幅にWiMAX Release 2.1のサービスを導入、「WiMAX2+」として提供する。WiMAX 2.1は、既存のWiMAXに加えて、TD-LTEとの互換性を持つ新しい規格となる。

新技術を順次導入

 これにより、当初は下り最大110Mbpsのサービスを提供し、その後、複数の周波数帯を束ねる「キャリアアグリゲーション」、高度な変調方式である256QAM、複数のアンテナを使う8×8MIMOなどを順次導入していく。来年3つには4×4MIMOによって下り最大220Mbpsに対応して、国内最速サービスとして名乗りを挙げる考え。そして2017年には下り1Gbpsを超えるサービスの実現を目指す。

下り110Mbps、220Mbpsと段階的に速度を上げる

 既存のWiMAXの基地局と併存する形で、WiMAX 2.1の設備が整えられるとのことだが、開始当初は「相当狭い」(田中氏)ものの、首都圏でトラフィック(通信量)が多いエリアを中心に整備していく方針。既存サービスのユーザーが400万人存在し、徐々にWiMAX 2.1へ移行させていく形となるが、そのスケジュールはまだ未定となっている。

WiMAX 2.1対応端末は?

 端末は、既存のWiMAXエリアと、新しいWiMAX 2.1両方のネットワークに繋がるものになるとのことで、野坂氏は「常識的にはルーターが最初にくるかな」と語る。

 WiMAX 2.1対応のスマートフォンの投入について問われた田中氏は「遅かれ早かれということ、です」と述べるに留まり、投入時期の明言は避けた。またTD-LTE対応機種が中心になるのか? という問いに、KDDIとしての意見を求められた田中氏は「いずれ(投入する)。テクニカルな話だが、クアルコムのチップは対応していますから。(TD-LTEとFDD-LTEと? という問いに)ぜんぜん(TDとFDに)差分はないですよ。(UQには)エリアを頑張って作ってねと」と述べた。

 また「TD-LTE対応のスマートフォンはいつくらいに登場する?」という質問に、田中氏は「そんなの言うわけないじゃないですか」と笑いながら回答していた。

MVNOへの取り組み

 追加割当の条件として総務大臣から示された4項目の1つには、MVNOの促進がある。野坂氏は「WiMAX対応スマートフォンの登場で、数としてはMNO(既存の携帯電話事業者)が占めているように見えるかもしれないが、実際はこれまでUQはISPや量販店などと、かなり一生懸命やってMVNOサービスを立ち上げてきた。ルーターを100万台、200万台を積み上げるのは、すごい努力の結果と思っている」とした。

 トラフィックで見ても、ルーターのほうがスマートフォンよりも5倍以上の通信量が多いという。

通信量制限は?

 現在は通信量による速度制限がないWiMAXだが、WiMAX2+ではどうなるか。野坂氏は、通信量による速度制限を取り入れるかどうか、現在検討中として、サービス開始前にも「WIMAX2+」に関して、詳細を明らかにするとした。

 LINEなど、VoIPアプリは利用できる形ながら、VoLTEのような音声通話サービスは現状想定していないとのこと。

ソフトバンクの主張への反論

 UQにはTDD(時分割)関連の技術がないのではないか、とソフトバンク宮川氏の主張に対して、田中氏は「まったくLTEと同じ。TDはWiMAXでやってきた。真面目な話。TDDよりOFDMAの経験のほうが重要」と回答。また野坂氏は「むしろWiMAXがTDD系で、5年前からやってきた」と述べる。

 (auの3Gサービスで使う方式であった)CDMAはネットワークを作る側にとって寛容なシステム。一方、OFDMAは過敏で、寛容ではない、と田中氏は説明。OFDMAタイプのLTEのネットワーク構築には、UQからauへ教えてもらったほど、という。

 天下りによる癒着を疑うソフトバンク孫氏の声には、田中氏は「今回は本当に透明性のある評価基準で、恐ろしいくらい、いろんな情報がオープンになっていた。誰が見てもUQへの割り当てになるのではないかと思っていた。(孫氏の指摘のような)ああいうことを言われると非常に心外」とコメント。KDDIに転職した、総務省の元電波部長が総務省との交渉にあたったのでは? という問いに野坂氏は「UQでは別の人物が渉外部長ですから」と一蹴した。また孫氏が確たる証拠を示さないまま強い疑いを向けていることを受け、「他社が免許に割り当てられる場合でも、普通は「応援する」というのが一般的な言い方では?」と田中氏は語っていた。

 またネットワーク構築の手法についてのソフトバンクからの手法について、野坂氏は「今回、その議論には乗らない。いくらでも反論できるが、言い合っても仕方ない。(免許が割り当てられた今)あまり生産的ではないと思っている」

米国の無料サービス終了は予定していたこと

 野坂氏は「グローバルで見てもインテルの縮退もあって状況が変わってきた。グローバルでのエコシステムのメリットを享受するには、TD-LTE互換がいいと判断したということ。これまでWiMAXをやっていた韓国、マレーシアもそうなるのではないか」と語る。

 米国のWiMAX事業者であるクリアワイヤが、スプリント買収によってソフトバンク傘下となった影響について、野坂氏は「ソフトバンクグループとしてどうされるかわからないが、僕らもいろいろ考えている。ただ、単一グループで全体を仕切ることは世の中そうはない」と今後の課題とする。

 なお、UQの米国でのローミングサービスが7月26日より有料になったことについては、野坂氏は「本来予定していたもの。実は外国のクレジットカードが米国では使えない、という課題があった。本来、有料サービスにするところ、できなかったのでこれまで無料だった、ということ。ソフトバンクのスプリント買収とちょうど重なって、あらぬ誤解を招いた」と釈明した。

10MHz幅への誘導は……?

 総務省が示した当初のルールでは、20MHz幅をまるごと割り当てる形のほか、10MHz幅ずつ2社へ、という形も考慮されていた。しかし野坂氏は「最初から20MHz帯で求めていた。(通信量増加で)逼迫していますから、20MHz幅で迷いはなかった」と述べ、途中から意見を変えたのではなく、当初から20MHz幅を求めていたとする。なお、UQでは2012年10月の「WiMAX 2.1」導入方針の際に、「将来的に20MHz幅を求める」方針を示している。

 ソフトバンクが「総務省によって10MHz幅の申請へ誘導された」としていたことについては、田中氏は「誘導するわけがない。あり得ない」と苦笑まじりに一刀両断する。

詳細はサービス開始前に

 今回は、数名の記者に囲まれる形で、新たな免許を受けたサービス像について語った野坂氏は、「今、報道関係者向けの説明会を実施すると、(ソフトバンクの訴えがあって)面白おかしく捉えられているところもあり、かえって話が混乱してしまいかねない。基本的にソフトバンクと総務省さんの話で、そこに巻き込まれずに進めていく。ただし、技術で社会を豊かにしていく、という話はきちんとお伝えしたい」とサービス開始前にきちんと説明したいと語っていた。

(関口 聖)