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元Win8開発責任者のシノフスキー氏、マーク・アンドリーセン氏のVCに参画

 米Microsoftの元Windows部門責任者スティーブン・シノフスキー(Steven Sinofsky)氏が、シリコンバレーで最も影響力のあるベンチャーキャピタルの1つと言われるAndreessen Horowitz社のボードパートナーに就任すると発表した。

 シノフスキー氏はWindows部門の責任者としてWindows 7で大成功を収め、その後Windows 8の開発を統括していたが、Windows 8発売直後の2012年11月に突如退社し、様々な憶測と共に大きな話題となった。

 Andreessen Horowitz社での仕事はフルタイムではないという。Andreessen Horowitz社独特の役職であるボードパートナーであり、シノフスキー氏によれば「この役職で、私は機会が現れる時にはポートフォリオ企業の役員としてファームを代表するが、ファームのフルタイムメンバーではない」と説明している。シノフスキー氏はMicrosoft退社後に就任したハーバードビジネススクールでの役職も継続する。

 Andreessen Horowitz社は2009年にカリフォルニアで設立されたベンチャーキャピタルで、Netscape共同創業者のマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)氏とNetscape創業時代からの同僚であるベン・ホロヴィッツ(Ben Horowitz)氏によって設立された。近年ではテクノロジー業界に最も影響力のあるベンチャーキャピタルの1つとして知られている。これまでにSkype、Instagramへの投資の成功で知られているほか、Twitter、Facebook、Zyanga、Grouponなどへの投資でも話題となっている。一般的なパートナー制度をとらず、ポートフォリオ企業と密接に関与し、協同する手法でも知られている。

 シノフスキー氏のMicrosoft退社は、双方の発表によれば「円満」とされた。しかし多くの人は、CEOのスティーブ・バルマー(Steve Balmer)氏を含む複数の幹部との間で、Windowsの将来について意見の相違や確執があったと考えている。

 こうした世評を意識してか、シノフスキー氏は、今回個人ブログで発表したコメントの中で「製品開発における私自身の経験は、チームの一部として組織の内部から学び、変化することに集中することだったと言える」とコメント。チームとして働くことと長期的な取り組みが成功に不可欠であることを強調している。

 退社に当たって、Microsoft社とシノフスキー氏はMicrosoftの株式約1000万ドル分と引き換えに、Microsoftの競合他社であるAmazon、Apple、EMC、Facebook、Google、Oracle、VMWareへの移籍を2014年まで禁止することで合意している。それ以外にも、Microsoftの顧客であるAsus、Acer、Dell、HP、HTC、IBM、Intel、Lenovo、LG、Nokia、Qualcomm、Samsung、Sony、Toshibaに対して、Microsoftとの取引を止めさせるような言動を行わないことも約束。これらの内容は2012年12月に米国証券取引委員会に提出された書類によって明らかになっている。

 シノフスキー氏は、最近公の場でコメントすることが増えていることから、その動向に注目が集まっていた。

 シノフスキー氏は1989年にMicrosoft入社後、歴代のOffice、Windows、Visual C++など、Microsoftの主力製品の開発に長年携わった。また、在社時は濃密で長大なブログを書くことでも知られていた。

(青木 大我 taiga@scientist.com)