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Google、日本の小中高校生に「Raspberry Pi」でプログラミング実習を開始

コンピューターサイエンス教育支援でCANVASと協力

 Googleは29日、日本のコンピューターサイエンス教育を支援する「コンピューターに親しもう」プログラムを開始した。

 「コンピューターに親しもう」プログラムは、6~15歳の児童・生徒を対象に、コンピューターやプログラミングの基礎を学んでもらう取り組み。プログラムでは、Linuxも動作する名刺サイズのコンピューター「Raspberry Pi」と、子供向けプログラミング言語「Scratch」を使用。児童・生徒向けにプログラミングが学べる実習を実施する。

 Googleでは、子供向けに創造・表現活動の全国普及や国際交流の推進を目指す非営利団体のCANVASと協力。GoogleとCANVASでは5000台のRaspberry Piを提供するとともに、実習などで必要となる人材を提供し、2万5000人以上の児童・生徒の参加を目指す。

 また、教員・NPO法人向けには、Raspberry PiやScratchを使用した授業の指導方法などが学べる研修イベントを実施。保護者と児童・生徒がいっしょに学べるワークショップも、地方自治体などと協力して実施する。「コンピューターに親しもう」プログラムへの申し込みは、CANVASのサイトから行える。

Raspberry Pi
Scratchの画面

シュミット会長「日本がソフトウェアでもリーダーとなるきっかけに」

 29日には、東京・広尾の広尾学園中学校・高等学校で、最初の「コンピューターに親しもう」プログラムが実施され、米Google会長のエリック・シュミット氏が会見を行った。

 シュミット氏は、日本のような先進国が抱える課題の解決には、サイエンス教育やアントレプレナーシップ(起業家精神)の推進が重要だとして、「日本はサイエンスやイノベーションにおいてリーダーであり、素晴らしい産業を持っている。サイエンス教育においても世界第4位とされており、米国はもっと下の順位だ」と説明。一方で、「ソフトウェアの分野においては、なかなか素晴らしいリーダーにはなれていないと思う」と語り、このギャップを埋めるための方法として、今回のプログラムを提供すると説明した。

 今回のプログラムは「日本における素晴らしい変化の第一歩になると考えている」として、今後の発展が期待できるロボティクス産業や高機能家電などの分野においてもソフトウェアが重要な位置を占めていると説明。Googleもこうした産業の発展に貢献していきたいと語った。

Google会長のエリック・シュミット氏
CANVAS理事長の石戸奈々子氏

 CANVAS理事長の石戸奈々子氏は、「CANVASではデジタル時代の子供たちの新しい学びの場を作るということを目標として、これまでの10年で約30万人の子供たちにプログラミングをはじめとする各種のワークショップを提供してきた」と説明。「これからの情報化社会を生きる子供たちにとって、必要な力は創造力とコミュニケーション力だと考えている」として、そのためにプログラミング教育が役に立つと考えているとした。

 石戸氏は、「新学習指導要領により、2012年からは中学校でもプログラミングが必修になった。こういう活動をしているとよく『プログラマーを育てたいのですか』と聞かれる。私達は、プログラミングを通じて論理的に考えて問題を解決する力や、他者と協力して新しい価値を作り出す力などを養ってほしいと考えている」と説明。指導者側の育成も含めて、単に知識を教える「教育」の場ではなく、自分たちで学んでいく「学習」の場を提供していきたいと語った。

 広尾学園で行われたプログラムでは、特別講義としてシュミット氏が教室に登場。高校1・2年生を対象として、コンピューターサイエンスの重要性を生徒たちに語った。

特別講義の模様

 Raspberry PiとScratchを用いた演習は、高校1年生のクラスを対象に行われた。Scratchは、マサチューセッツ工科大学メディアラボが研究開発している子供向けプログラミング言語で、マウス操作でブロックをつなげることでプログラムを作成できる。

プログラミング演習の模様

 演習では、キャラクターを自動的に移動させ、画面の端まで来たら反転、2枚の絵によるアニメーション表現を行うといったプログラムを作成。さらに、自分でマウス操作できる別のキャラクターを用意し、自動移動するキャラクターを敵として、当たらないようにするゲームを作成。敵を複数にしたり、当たらない間はスコアが増えていく仕組みなどを実装した。

 演習の冒頭、プログラミングの経験があるかという質問には数人しか手が挙がらなかったが、演習により多くの生徒が初めてのプログラミングを体験。自分たちが作ったプログラムが画面上で動作する様子に、教室のあちこちから歓声が挙がった。

(三柳 英樹)