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「複製機能」を私的録音録画補償金の対象に、権利者団体が提言

 音楽や映像の権利者団体など85団体が構成する「Culture First」は14日、著作物の複製に対する新たな補償金制度の創設についての提言を発表した。

新たな補償金制度創設に係る提言

 提言の内容は、「補償の対象は私的複製に供される複製機能とする」「新たな補償の支払い義務者は複製機能を提供する事業者とする」という2点。

 現行制度では、政令で指定された録音・録画用の機器や媒体のみが補償金制度の対象となっているが、提言では機器や媒体、サービスの別を問わず、私的複製に供される「複製機能」を補償の対象とすることを求めている。

 また、現行制度では補償金の支払い義務は私的複製を行うユーザーにあり、事業者はユーザーから補償金を集める「協力義務者」という扱いになっているが、これを機器や媒体、サービスなどの手段をユーザーに提供する事業者を支払義務者にすることを提言している。

 Culture Firstのメンバーは今後、補償金問題を議論するために設置された文化審議会著作権分科会小委員会のワーキングチームなどで、今回の提言を提案していくという。

「私的複製に供される複製機能のあるものはすべて対象」がスタート点と説明

 14日に行われた会見では、日本芸能実演家団体協議会常務理事の椎名和夫氏、日本音楽著作権協会(JASRAC)理事長の菅原端夫氏、日本レコード協会理事の畑陽一郎氏が提言の趣旨を説明した。

(左から)JASRAC理事長の菅原端夫氏、日本芸能実演家団体協議会常務理事の椎名和夫氏、日本レコード協会理事の畑陽一郎氏

 現行の「私的録音録画補償金制度」は、デジタル録音・録画による複製によって、権利者が被る経済的不利益を補償する目的で、録音・録画機器やCD-Rのような媒体などに補償金を課し、権利者に還元する制度。対象となる機器や媒体を販売するメーカーが、補償金分を価格に上乗せする形で消費者に支払ってもらい、補償金の管理団体を通じて権利者に分配される仕組みとなっている。

 この補償金制度に対し、2009年に東芝が「アナログチューナー非搭載のDVDレコーダーは制度の対象外だ」として補償金の支払いを拒否。管理団体の私的録画補償金管理協会(SARVH)は東芝に対して支払いを求める訴訟を提起したが、最高裁判所は2012年11月、アナログチューナー非搭載のDVDレコーダーは補償金の対象機器には該当しないとする知的財産高等裁判所の判決を支持し、判決が確定した。

 この判決に加え、現行販売されている機器もデジタル放送専用機に移行したことから、以前には最大で年間25億円程度あった私的録画補償金の徴収額は、2013年上半期には0円になったという。また、私的録音補償金についても、音楽用CD-Rなどからの補償金があるものの、2013年上半期では9400万円と、ピーク時の4〜5%程度に激減しているという。

録画補償金は2013年上半期には0円に

 日本芸能実演家団体協議会常務理事の椎名和夫氏は、最高裁判決により現行制度はほぼ機能を停止しており、新しい補償金制度についても議論がなかなか進まなかったが、文化審議会著作権分科会の「法制・基本問題小委員会」の下にワーキングチームが設置されるなど、この問題の解決に向けて取り組む環境が整いつつあると説明。「この機会をとらえて、ユーザーの利便性向上に配慮しつつ、クリエイターへの適切な対価の還元を実現するための新たな考え方について、キックオフとして提言を行う」とした。

 日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原端夫理事長は、私的複製に対する補償については「ユーザー」「複製手段を提供する者」「権利者」の3者の利益のバランスを考えることが必要だと説明。現行の補償金制度が事実上機能しない現状はあまりにもアンバランスだとして、3者の利益の帰属の実態に着目し、経済合理性を備えた新たな補償金制度の創設が必要だと訴えた。

「ユーザー」「複製手段を提供する者」「権利者」3者のバランスの取れた新たな制度が必要だと主張
音楽使用料の減少と複製機器の普及をグラフで例示

 現行制度については、1)補償金の対象範囲が政令によって定められているため、新たな機器や媒体が大量に流通していても、関係省庁間の合意がなければ制度の対象とはならない、2)機器や媒体のメーカーは補償金の支払義務者ではなく、補償金の請求・受領に関する協力義務者とされているため、メーカーが協力義務を遂行しなければ補償金制度は機能しない――という2点が問題点だと指摘し、その解決策として示したのが今回の提案だとした。

現行制度の問題点

 提言のうち「補償の対象は私的複製に供される複製機能とする」という点は、機器や媒体、サービスなどを区別せず、私的複製に供される「複製機能」を補償の対象としようというもので、これによりPCのような汎用機器や、オンラインストレージなどのサービスも対象となることが想定される。

 具体的にどのような機器やサービスが対象となるのかについてはこれから議論していくことだとしたが、今回の提言は「複製機能のあるものはすべて、ということがスタート点」だと説明。基本的な考え方としては、音楽や映像の配信サービスのように、権利者との契約によって提供されているサービスなどは対象として考えておらず、それ以外のものを補償金制度によってカバーしようとするものだとした。

(三柳 英樹)