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NTTが「ICTカー」開発、大規模災害時に通信の即時回復を可能に

 日本電信電話株式会社(NTT)は28日、大規模災害時に通信の即時回復を可能とする「ICTカー」を開発したと発表した。東北大学、富士通、NTTコミュニケーションズと共同で推進している研究開発プロジェクトの一環として、総務省の支援を受けて開発した。

開発した「ICTカー」

 ICTカーは、通常のバンタイプの車にサーバーや小型交換機(IP-PBX)、無線LANアクセスポイントなどを備え、被災地に搬送・設置することで半径500m内をWi-Fiエリア化し、IP電話サービスや被災者データ収集システムを短時間で構築する。発電機も備えているため、ICTカーに搭載した燃料だけでも最大5日間程度の運用ができる。

被災地の通信環境回復と被災者データ収集システムを備える
ICTカーの内部
電力消費を抑えるため、保冷剤(蓄熱材)による冷却システムも備える

 通信機能については、太陽光パネルやバッテリーを備えた複数の自立型Wi-Fiアクセスポイントを搭載し、これをICTカー周辺に展開することで、半径500m内をWi-Fiエリア化する。

 利用者は、自身のスマートフォンでICTカー内のサーバーにアクセスして、専用アプリをインストールすることで、IP-PBXを介したIP電話の利用が可能となる。通常利用している電話番号のままで、Wi-Fiエリア内にいる相手との通話が可能となる。ICTカーが光回線や衛星回線を使ってインターネットに接続できれば、外部との通話も可能になる。

自立式アクセスポイントを併用して半径500m内をWi-Fiエリア化する
スマホの専用アプリを使ってIP電話の利用を可能にする

 東日本大震災の場合には、電柱は壊滅状態でも地中に埋設した光ファイバーは無事だったケースもあり、こうした光ファイバーが使える場合を想定して、ICTカーに搭載する機器は様々な種類の光ファイバーを接続できるようにしているという。

 被災直後は、安否確認など被災地外との通話需要が大きいが、その後は避難所などで連絡を取り合うようなエリア内での通話の需要が大きいことから、インターネット接続ができない場合でも内線機能を提供することが重要になるという。

インターネット接続すれば被災地外との発着信も可能に

 また、ICTカーには、避難所などで被災者の情報を収集管理するための「被災者データ収集システム」も搭載。タブレット端末のカメラで被災者の顔を撮影し、免許証や学生証などの身分証などの撮影画像や、交通系ICカードやNFC対応携帯電話の固有ID、体調などに関するアンケート情報と結び付け、簡単に被災者情報のデータベースを構築できるようにする。

 被災者の顔写真と個人情報をIDに紐付けることで、システム上で様々な被災者の管理や支援活動のサポートが可能になり、被災者の避難所間の移動や、被災者の健康状態、支援物資の受け渡し実績の管理などが実現できる。また、登録した安否情報は安否情報確認サイト「J-anpi」との連携も可能にしている。

 従来、こうした情報の入力・管理は、手書きベースやローカルPC上で行われていたが、システム化することで外部との連携を容易にするとともに、情報の入力についてもカメラやICカードリーダーなどを用いることでできるだけ簡素化。撮影した画像のテキスト化などについては、被災地外でOCRやボランティアなどで行うことを想定しているという。

タブレットで被災者の顔や身分証明書などを撮影
データベース化して安否確認や支援に活用

 さらに、ICTカーが提供する機能を絞り込み、可搬性を高めた「アタッシュケース型ICT BOX」も開発。IP-PBX機能を搭載した小型PCに、バッテリー、無線LANアクセスポイントなどから構成され、ICTカーの到着が困難な状況でも、このボックスを被災地に持ち込むことで即座にIP電話サービスが提供できる。

小型PCやバッテリーなど、機能提供に必要な最小限のハードウェアをつめた「アタッシュケース型ICT BOX」も開発

 NTTでは、今回開発したICTカーの実証実験を、2014年2月に高知県の2つの自治体(南国市、黒潮町)で実施。1〜2年以内に、NTTグループ各社や地方公共団体などへの導入を目指す。また、2013年11月に発生した台風により大きな被害を受けたフィリピン政府からも、ICTカーが活用できないかという要請が寄せられており、総務省など関係機関と対応に向けた検討を進めているという。

(三柳 英樹)