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Yahoo! JAPANがアドビと提携、広告の制作・管理プラットフォームを今春提供

 ヤフー株式会社とアドビ システムズ 株式会社は2月14日、広告におけるクリエイティブ制作分野での業務提携を発表した。

アドビ システムズ 株式会社 代表取締役社長 クレイグ・ティーゲル氏(左)と、ヤフー株式会社 執行役員 マーケティングソリューションカンパニー長 荒波 修氏

 ヤフーは、Adobe Creative CloudとAdobe Experience Managerのデジタル資産管理システムをもとに、Yahoo!JAPAN側の広告審査情報や広告配信の結果測定システムを加え、1つの広告制作・配信・効果測定プラットフォームを構築。新広告プラットフォームは「Yahoo!クリエイティブスタジオ」という名称でサービスをパッケージ化し、今春から提供を行う見込み。価格は従量課金とし「利用しやすい料金に」する考えだが、具体的な価格については今後提案を通して詰めるとしている。

 「Yahoo!クリエイティブスタジオ」でパッケージとして提供されるサービスには、Adobe Creative CloudとAdobe Experience Managerのデジタル資産管理システムの利用料金も含まれる。ただし、クリエイター分野ではすでにAdobe Creative Cloudを利用中である場合が多いと考えられるため、重複して料金を支払うことのないよう、Creative Cloudを含まない単品メニューも用意するという。

 提供時期は、今春をめどに法人向けに提供開始し、年内には個人事業主のクリエイターにも提供したいという。

パートナーシップの対象となる製品は、Adobe Creative Cloudと、Adobe Marketing Cloudソリューションに含まれるAdobe Experience Manager
パートナーシップの概要

 また、「Yahoo!クリエイティブスタジオ」は、ヤフーへ出稿するクライアントや広告会社、クリエイターを支援するプラットフォームとして提供されるが、将来的には他のアドネットワークなどでも利用できるプラットフォームにしたいとしており、「APIを公開している場合には、基本的につなぎ込みは可能」(ヤフー株式会社 執行役員 マーケティングソリューションカンパニー長 荒波修氏)だという。

 広告コンテンツの種類としては、バナーのみならずビデオなどのリッチ広告にも対応する予定。ビデオコンテンツでは、制作物を共有するために大容量のストレージが必要となるが、「Yahoo!クリエイティブスタジオ」では動画の共有なども念頭において、利用しやすい価格を提供までに詰めていくという。

 ヤフーでは、広告コンテンツの制作においては、制作工程におけるさまざまな関係者との膨大な情報のやりとりやデザインデータの共有に手間や時間がかかり、クリエイティブの付加価値を高めにくいという課題があると説明。

 こうした課題を解決するため、アドビのソリューションを活用し、クリエイティブ制作を関係者間でステータスを共有しながら効率的に作業、管理することができるクラウド型のワークフロー管理およびストレージシステム「Yahoo!クリエイティブスタジオ」をアドビの支援のもと開発したという。

 Adobe Experience Managerは、Webサイトをはじめモバイル、メール、コミュニティといったさまざまなデジタルチャネルのコンテンツを制作、管理、配信するデジタル資産管理ソリューションで、デジタルマーケティングソリューションAdobe Marketing Cloudに含まれるソリューションの1つ。

 Adobe Creative Cloudは、月額払いでアドビの最新クリエイティブツールやサービスをすべて利用できる会員制サービス。会員にはクラウドストレージが合わせて提供され、端末を問わず制作が行えるのも特徴となっている。

「Yahoo!クリエイティブスタジオ」の特徴と目的
特徴(1)最先端のワークフロー管理
特徴(2)クリエイターへ情報のフィードバック
特徴(3)低価格でノウハウを蓄積・共有可能に
クリエイターにとって使いやすい価格体系に
導入のメリット

 ヤフー株式会社 執行役員 マーケティングソリューションカンパニー長 荒波 修氏は「ヤフーでは昨年来、いろいろな新しいデータマネージメントプラットフォーム事業、DSP事業に参入するなどの発表を行ったが、どちらかというと技術寄りの話が多かった。今年、ヤフーとしてぜひ取り組みたいと思っているのが、テクノロジーに加え、アートの領域。広告で最後の決め手となるのは、いかにユーザーの方の記憶に残るような素晴らしいクリエイティブを作れるか。素晴らしいアートを作っていただけるクリエイターを支援させていただきたいとずっと思っていた」と今年はアート方面のクリエイター支援に注力する方針を述べた。

 「具体的には、いままでクリエイターが制作や入稿をするときにはメールが中心というのが実態で、デジタルと言いながらかなりアナログな作業が多かった。この部分を効率化することで、クリエイターが本来のクリエイティブ作業に集中できるようにしたい」(荒波氏)。

 アドビ システムズ 株式会社 代表取締役社長 クレイグ・ティーゲル氏は、「クリエイティブクラウドを世界、日本の市場に投入してから2年余り、現在はユーザーが150万人を超えた。デジタルマーケティングはアートとサイエンスを融合させるものだと考えている。制作からサイトでの表示までを非常に合理的に行えるようになっている。今回の提携により、ヤフーに出稿する広告主は、シームレスな形で広告を出稿していただけるようになります」と述べた。

 アドビはCreative CloudとMarketing Cloudのツールも加えてヤフーに提供することになるが、ソリューションとサービスを組み合わせて日本で提供するのは初めてのことで、「アドビで日本以外の地域を統括するマネージャーも今回の取り組みを興味津々で見ている」(ティーゲル氏)という。

 ヤフーの荒波氏は、「ヤフーとアドビで広告のクリエイティブ制作のプラットフォームを構築してクリエイターを支援したい。リーズナブルな価格で提供することで、クリエイターを雑事から解放したいと考えている」と述べ、発表会を締めくくった。

(工藤 ひろえ)