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将棋「電王戦FINAL」は2015年春開催、プロ棋士とソフトのタッグ戦も続々
(2014/8/29 20:11)
株式会社ドワンゴおよび公益社団法人日本将棋連盟は28日、プロ棋士とコンピューター将棋ソフトが対戦する「将棋電王戦」についての記者発表を行った。2015年春に5対5の団体戦「将棋電王戦 FINAL」を開催。さらに2016年よりプロ棋士と将棋ソフトがペアを組んで対戦する高額賞金戦「電王戦タッグマッチ」を本格的に開催する。
電王戦FINAL参加プロ棋士は10月発表、「20代~30代前半、勝率6割5分前後」で人選
電王戦は、プロ棋士とコンピューターが対戦する棋戦として、2012年1月に初開催された。当時は米長邦雄永世棋聖(故人)と将棋ソフト「ボンクラーズ」が1戦だけ対戦。その後の第2回・第3回はプロ棋士5名と将棋ソフト5種が団体戦を実施し、いずれもソフト側が勝ち越している。
2015年春開催の電王戦FINALでも5対5の団体戦を踏襲する。なお、出場するプロ棋士5名は10月12日に発表予定。将棋ソフトは11月開催予定の「将棋電王戦トーナメント」の勝ち抜き上位5種が選抜される。
28日に東京・六本木の「ニコファーレ」で開催された記者発表会には、プロ棋士で日本将棋連盟会長の谷川浩司氏が出席した。谷川氏はプロ棋士5名の選出について「(人選は)まだ完全には確定していない。ただ、第2回・第3回は棋士側の年代が幅広く、かなりバラエティ豊かだったが、(負け越しという)結果を踏まえて、20代から30代前半までの若手で、通算勝率が6割4分~5分くらいの実力があり、加えて、コンピューターとの対決に意欲を持っている棋士を選びたい」と明言した。ただし、タイトルホルダーは参加しないという。
また、ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏から「5対5の団体戦はこれで最後」と発表された。背景には、人間とコンピューターの“対決”ではなく“共存”を模索したいとの考えがあるという。「電王戦を続けていく中で、さまざまなことが分かってきた。例えば、持ち時間1分の将棋では人間が負けやすい。ミスをしない将棋という意味ではやはりコンピューターは強い。人間とコンピューターの関わり方がどうあるべきか。これを探っていく、見せていくのが電王戦の意義ではないか」(川上氏)
一方、谷川氏は「電王戦は大きな盛り上がりを見せたが、一方で将棋ファンから『もっと見たい』『いや、これ以上プロが負けるところを見たくない』など、さまざまな声が寄せられた。そんな中で川上氏から『5対5は最後にする』というご提案をいただいた」と明かした。
電王戦FINALは2015年3月~4月開催で、会場などは後日発表予定。持ち時間は各5時間・秒読み1分。昼食・夕食休憩(合計1時間30分)がある。また、出場棋士は、本番と同じソフトおよびハードで練習対局が行える。
棋士とコンピューターのタッグ戦は2016年開催分から本格化、賞金増額
一方、プロ棋士とコンピューターによるタッグ戦については2016年から開催規模を大きくする。具体的には賞金規模を引き上げるとしており、将棋界最高峰のタイトル戦である「名人戦」「竜王戦」に次ぐレベルにするという。
タッグ戦は2013年夏に初開催。川上氏は「大変な好評をいただいき、大きな可能性を感じている」と説明。また、谷川氏は「2014年9月開催分でも出場者数が増えている。また、2016年からは“棋戦”として対局できることになった」と述べた。
タッグ戦は、将棋ソフトが示した差し手をプロ棋士側で参照できるという対局方式。このため、棋士同士が対戦する公式戦とは区別され、生涯通算成績などには影響しない見込み。日本将棋連盟理事の片上大輔氏は「大変ワクワクしている。(運営側として)これから詰めていくことは多いが、将棋ファンにもそうでない方にも楽しめるものにしたい」と、期待感を示した。参加棋士数、対局組み合わせ、その他ルールなどは今後発表する。
9月にもタッグ戦トーナメントが開催、出場者が意気込み語る
タッグ戦本格化前のエキシビションとして、9月20日・23日、10月12日の3日間、「電王戦タッグマッチ 2014」が開催される。シード2名を含む全12名がトーナメント方式で争う。出場者はAブロックが屋敷伸之九段、森下卓九段、加藤一二三九段、高橋道雄九段、中村太地六段。Bブロックが佐藤紳哉六段、菅井竜也五段、西尾明六段、船江恒平五段、阿部光瑠四段。シードは佐藤慎一四段、久保利明九段。使用ソフトはponanza、ツツカナ、YSS、やねうら王、習甦のいずれか。
当日は、ニコファーレにて公開対局および大盤解説が行われる。観覧は無料で、現在は公式サイトで観覧者を募集中。
記者発表会には、トーナメント参加者を代表して高橋氏、西尾氏、中村氏が登壇した。高橋氏は登場直前に会場で流れたプロモーションビデオを引き合いに「(自分を描いたロボットアニメ風登場人物の)イラストが格好いい。あのバトルスーツを本当に着たいが……その話は置いておくとして、(予選ラウンドで採用される)切れ負けルールの将棋は多分30年ぶりくらい。50代の意地で頑張り、活躍できれば、たぶん谷川さんも喜んでくれるでしょう」と、会場の関係者や一般客を笑わせた。
西尾氏は「毎日のように将棋ソフトに触っており、棋士の中では(将棋ソフトを)かなり研究している方だと思う。(その強みを生かして)優勝できるよう、頑張りたい」と語った。また、中村氏は「自分の力とソフトの力の両方を出し切り、最高の棋譜を残せたら」と述べた。
なお、質疑応答の際には、プロ棋士対将棋ソフトの直接対決を電王戦FINAL以後も続ける可能性について、川上氏は否定しなかった。仮に、タイトルホルダー級の超大物棋士が対将棋ソフト戦に臨むとして、課題となっているのが「相手の研究に膨大な時間がかかる」という点という。逆に、段位の高低に関わらず、相手方の将棋ソフトを十分に研究できれば、良い成績を残せる傾向が出ているため、人選方針を一新する電王戦FINALにおいて、その後の展望を見極めたいとの考えもあるとしている。