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freebit mobile、独自スマホ「PandA」本体を仮想化技術でサーバー化、PCと連携

高速チケットは100MB/250円から1GB/300円へ改定

 フリービット株式会社は17日、同社が運営するモバイルキャリア事業「freebit mobile」がサービス開始から1周年を迎えたことを受け、同社スマートフォン「PandA」向けアップデートを発表した。あわせて、freebit mobileのフランチャイズプログラムの募集を開始した。

 同社は2013年11月13日にスマートフォンキャリア事業に参入。大手キャリアやMVNOを展開する通信事業者と異なり、端末の開発、通信インフラから販売、サポートまですべて自社で実施する垂直統合型モデルを採用。1つの料金プランと1機種のスマートフォンのみというシンプルな構成で展開している。

スマートフォン「PadnA」と小型デバイス「BLOCK」。手に持つのは「ATELIER freebit 渋谷スペイン坂」のスタッフ

通信速度が向上、料金プランを使い方に合わせて自由に変更可能

 アップデートにより、これまで200~300kbpsだった通常使用時の通信速度を500~600kbpsに高速化。数値上の高速化ではなく低遅延化に重点を置いており、クラウド技術を利用した通信の最適化を行うことで、1.2~1.3Mbps程度の体感スピードを得ることができるという。

 また、100MBあたり250円(以下、税別)で提供していた「高速チケットオプション」を改定。1GBあたり300円で提供するほか、60分相当の携帯電話向け通話と高速チケットをパックにした、月額500円の「フラットパック」のデータ容量も1GBに増量する。

 チケットのデータ容量増量に合わせ、PandAに搭載されているアプリ「マイプラン設定」をバージョンアップ。高速チケットへの切り替え設定について、手動切り替え、アプリごとの自動切り替えに加え、1日あたり/1カ月あたりの高速通信利用料の設定を追加。特定のアプリ利用時のみ高速チケットを利用できるほか、1GBを1日33MBずつ使い、残りは通常速度に戻る設定なども可能。フリービットでは、ユーザーの使い方に合わせて自由に料金プランを作ることができるとしている。高速チケットオプションの改定とマイプラン設定は12月1日にリリースされる。

通信速度を200~300kbpsから500~600kbpsに高速化
高速チケットオプションを100MBあたり250円だったのを1GBあたり300円に改定
1日に高速通信を何MB使用するのか、アプリで切り替えるのかなどを設定することで、好みのプランに変更できる

 そのほか、スマートフォンでよく利用する写真・動画の閲覧・管理や、音楽の再生、ファイル管理、ノート機能を1つに統合したアプリ「ONE」をリリース。PCとのスムーズな連携を実現しており、ブラウザーから専用サイトにアクセスしてIDとパスワードを入力すると、PandA内の写真の閲覧・編集や音楽の再生・追加が可能なほか、PandAで利用できる「@freebit.jp」メールをPCから閲覧・作成したり、アドレス帳の整理を行えるようになった。

 この連携機能は、PCとPandAの間にクラウドサーバーなどを用意しているのではなく、仮想化技術を用いている。PandA自体をグローバルIPv6アドレスを持つサーバーとすることで外部からアクセス可能となっており、通常のクラウドサービスでは難しい低遅延での連携が可能となっている。

写真、動画、音楽、ファイル、ノート機能を兼ね備えた統合アプリ「ONE」
ブラウザーからIDとパスワードを入力することでスマートフォンと連携
「PandA」内に保存されている写真に直接アクセスでき、整理・編集が可能
「PandA」で途中まで再生していた曲をPCから再生できるほか、曲の追加も可能

 また、試作段階ではあるものの、PadnAと連携する小型デバイス「BLOCK」をお披露目した。BLOCKは、USB充電器サイズのボディに高出力のスピーカーを搭載するほか、置き忘れ防止機能を搭載。PandAから一定以上離れるとアラームで知らせてくれるほか、ボタンを2回押すことで、PandAのスピーカーからアラームを鳴らして本体の場所を特定することができる。ユーザーから寄せられた声をもとに試作したとのことで、販売する際は安価にしたいとした。

「BLOCK」を手に持つフリービット代表取締役社長の石田宏樹氏
「PandA」のかゆいところに手が届くツールとなる

「freebit mobile」のフランチャイズプログラムをスタート

 フリービットでは、スマートフォンキャリア事業初という直営店のフランチャイズプログラムをスタート。同社では、旗艦店の「ATELIER」、移動式店舗モジュール「STAND」、テレビ/ラジオショッピングでの販売、不動産賃貸のエイブルと連携した「パートナープログラム」などさまざまな販売網を展開。フランチャイズプログラムを第6の販売方法と位置付けている。

第6の販売方法としてフランチャイズプログラムを開始
freebit mobileの店舗モジュール「STAND」

 「ATELIER」や「STAND」で培った開店/運営/営業/システム/教育のほか、freebit mobile本部のバックアップ体制を完備。モバイル業界の知識・経験がなくても参入でき、契約後、最短約2カ月でのオープンが可能としている。提供されるのは、店舗管理システム、保守運用サービスをはじめ、ATELIERでの販売実績をもとにしたセールス・サポートマニュアル類、販売・業務システムを有する店舗ユニットや什器類、コスチュームなど。開業資金はすべて合わせて600万円程度を見込んでいるという。

 フリービット代表取締役社長の石田宏樹氏は、このタイミングでの発表となった背景として、期間収益においてfreebit mobileの黒字化が確実に見えてきたこともあり、仲間に入っていただく方を増やしても無責任ではないと判断したという。通常のフランチャイズの支援体制とは異なり、人だけでなくITを使った仕組みも取り入れ、手厚い支援体制を敷く。

 フランチャイズパートナーは17日より募集開始。2015年度末までに300店舗の全国展開を目指す。同プログラムにより店舗数を急ピッチで拡大することで、ブランドの認知向上を促す狙いがあるとしている。

現在のMVNOの状況はかつてのISP激戦時代に似ている

 フリービットは17日、都内で記者発表会を開催。フリービット代表取締役社長の石田宏樹氏が登壇した。大手キャリアなど電話業界から見たスマートフォンは、電話の進化形であり、携帯電話時代の複雑な販売方法、料金プラン、技術を引きずっていると指摘。インターネット屋から見たスマートフォンは、安価で常時通電、常時接続を実現したコンピューターであり、大手キャリアのスマートフォンとは考え方が異なると強調した。

 また、MVNOについて、メーカーと端末を共同開発し、自社のネットワークインフラと、コントローラブルな販売店で運用してきた大手キャリアと異なり、端末メーカー、通信事業者、販売店がバラバラで、それぞれがブラックボックスになっているという。

 サービス事業者は通常、「正常系」と「異常系」に分けて事前検証を行い、異常系では正常系の25倍ものテスト項目を設けて不具合を洗い出すが、iPhoneのOSアップデート時にとあるMVNOキャリアのSIMが使えなくなった事例を挙げ、相手がブラックボックスでは十分な事前検証ができないと警鈴を鳴らした。MVNOは売り切りではなく継続サービスであり、継続的に課金してもらう代わりにサービスにコストを掛けるDNAが企業にあるかが重要だとした。

MVNOサービスでは、それぞれの中身がブラックボックス化しているという
一部のMVNO事業者では、iOSのバージョンアップに合わせてSIMが使えなくなるという事例を紹介
サービス事業者は正常系と異常系に分けて事前検証を行い、通常の企業であれば異常系の検査項目は正常系の25倍に達するという
MVNOは売り切りではなく継続サービスと強調

 フリービットでは、1995年からインターネット接続業者への接続サービスを提供しており、現在ではISP事業者350社へのインフラ提供を行っている。ISP市場は、1998年には2651社のISP事業者が出現し、MVNOの現状との類似性を指摘。ここから実力を持ったサービスを提供する事業者が生き残ると述べた。同社では、格安SIMや格安スマホとは異なり、ハードウェアやネットワークそれだけの価値ではなく、24の特許技術や垂直統合型のハードウェア、ソフトウェア、サポートにより実現される「モバイルライフサービス」を提供しているとした。

 また、顧客満足度として、PandAを購入して1週間後に実施しているアンケート結果を紹介。スタッフへの印象や説明の分かりやすさで90%以上が満足と回答したほか、大手キャリアのショップで待たされがちな接客待ち時間は、80%が5分以内で案内できたという。これは1プラン1機種での展開に加え、UIを独自開発することによりサポートの負担を減らすことができるからとしている。また、「PandAを人に薦めたいか」という項目については、83%が「そう思う」と回答したという。

1998年のISP事業者は2651社あり、現在は400社に減った
freebit mobileは、格安SIMや格安スマホではなく「モバイルライフサービス」だという
ユーザーの顧客満足度は非常に高いという
「PandAを人に薦めたいか」については83%が「そう思う」と回答

(山川 晶之)